浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

もう一人のF.シュミット チェロとピアノの為の3つの幻想的小品

2006年09月22日 | 忘れられた作品作曲家
F.シュミットと言へば普通はフローラン・シュミットを指す。しかし、ブルックナーの弟子にフランツ・シュミットといふ維納の作曲家が居る。シュミットはエルメスベルガーにチェロを、レシェテツキに洋琴を学び、維納音楽院で洋琴とチェロを教えていたいわばオールマイティな作曲家であった。

4曲の交響曲、洋琴協奏曲、オラトリオ、室内楽曲、オルガン曲など多くの作品を残している。多くを聴いたわけではないが、クラリネット五重奏曲を2つ書いているのはなにか特徴的に思える。独逸・墺太利系の伝統的な手法を重んじた保守的な作風だが、殆ど忘れられた作曲家である。その原因は2つ考えられる。一つは、シュミットの作品が、時代のニーズに合っていなかったこと。もう一つは、シュミットの生まれるのが遅すぎたこと。

解決する方法はある。それは、シュミットを20世紀の作曲家と思わず、ブルックナーの同時代人として聴くことだ。その意味では、同時代の維納人で聡明な偉人が居る。前古典派の作曲家の名を借り、新たに発見された曲として自作の小品を弾いて聴かせ大成功を納めた。大ブレイクの後に、実は自分の作品だったことを告げる。これは、ご存知フリッツ・クライスラーの手口である。

フランツ・シュミットの洪牙利の旋律による3つの幻想的小品といふチェロの作品があるが、この2曲目などはブラームスの洪牙利舞曲の第3番に雰囲気が似ている。ナンシー・グリーンといふチェリストがBiddulphに録音したCDには、この小品がブラームスの余白に納められていて対比して聴くことができる。あらためてBiddulphのスタッフの識見の高さには敬服する。


盤は、英国Biddulph社のCD LAW010。


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