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本のこと、音楽のこと、楽器のこと・・・

2024年6月に読んだ本

2024-07-01 | Books
6月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1931
ナイス数:46

短歌を楽しむ基礎知識 (角川選書 670)短歌を楽しむ基礎知識 (角川選書 670)感想
★★★★☆図書館で偶然見つけて借りてみた。基礎知識とあるが読み進むうちに近世、中世、古代と歴史を遡っていく。基礎知識というにはてんこ盛りの内容だ。
読了日:06月30日 著者:
他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ感想
★★★★☆2020年4月号から2021年4月号まで連載されたコロナ禍の真っ只中に書かれたものだ。「エンパシー」という日本ではしっくりくる意味を取りにくかった言葉を「他者の靴を履く」というイメージで示したが、コロナ禍での現状とエンパシーの歴史的位置付けを探ることで、さらに掘り下げていく。
読了日:06月25日 著者:ブレイディ みかこ
自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫 M シ 17-1)自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫 M シ 17-1)感想
★ ★★★☆図書館で2ヶ月待ちで読む。女子高校生が5年前の殺人事件の結末に納得できず、自由研究に名を借りて調べ始める。関係のある人物に片端からインタビューをするうちに革新に迫っていく。ボリュームがありながらテンポよく読ませる。
読了日:06月21日 著者:ホリー・ジャクソン
善き女の愛 (Shinchosha CREST BOOKS)善き女の愛 (Shinchosha CREST BOOKS)感想
★★★☆☆5月に亡くなったアリス・マンローの短編集。短編なのだが読み終えると長編を読んだような、ずっしりとした読後感だ。
読了日:06月16日 著者:アリス マンロー
ストーリーが世界を滅ぼす――物語があなたの脳を操作するストーリーが世界を滅ぼす――物語があなたの脳を操作する感想
★★★★☆人は物語により団結し文明を築いてきた、ということはよく言われることだが、現在は物語が分断を招いている、と警告している。物語の主軸が共同体から個人へと移動してしまった結果であることは容易に想像できるが、この分断による危機をどのように回復できるか、というのは難しい。
読了日:06月07日 著者:ジョナサン・ゴットシャル

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2024年5月に読んだ本

2024-06-03 | Books
5月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1854
ナイス数:51

九十八歳になった私 (講談社文庫)九十八歳になった私 (講談社文庫)感想
★★★☆☆当時68歳の著者が30年後の近未来小説という想定のディストピア小説。2018年に単行本で出版されたが、その翌年に逝去されている。小説ではいやでも長生きしていた氏だが、現実は早すぎる死だった。氏の評論は読んでいたが小説は「桃尻娘」以来かもしれない。長すぎる生を生きる老人とはさもありなんと思わせるハチャメチャぶりだ。
読了日:05月29日 著者:橋本 治
木暮荘物語 (祥伝社文庫 み 17-1)木暮荘物語 (祥伝社文庫 み 17-1)感想
★★★★☆これ読んだっけ?と思い、読書メーターの記録を見ると登録されていないので読み始めると、読んだ気がする、やっぱり読んだよな、と思いつつ楽しんで読み終える。昭和のおんぼろアパートに住む住人たちの短編集。今回は「柱の実り」と「ピース」が気に入った。
読了日:05月22日 著者:三浦 しをん
倚りかからず (ちくま文庫)倚りかからず (ちくま文庫)感想
★★★★☆以前、買ったはずと探した時には見つからず、ここ何冊か彼女の本を読んだからか、きょう読む本を探していたらひょっこり見つけた。この本を読まなきゃダメじゃない、と顔を出してくれたようだ。「水の星」のスケールの大きさが気持ちよい。
読了日:05月18日 著者:茨木 のり子
ハングルへの旅【新装版】 (朝日文庫)ハングルへの旅【新装版】 (朝日文庫)感想
★★★★☆評伝で韓国語を習い始めたことを知り、引き続き読んでみる。歴史的に深い関わりがありながら日本の占領時代や在日朝鮮人への差別などの問題も含め、隣の国の言葉だから学んでみて、そのファンを作る手助けをしたいという。
読了日:05月18日 著者:茨木 のり子
清冽 - 詩人茨木のり子の肖像 (中公文庫 こ 58-1)清冽 - 詩人茨木のり子の肖像 (中公文庫 こ 58-1)感想
★★★★☆茨木のり子を知ったのは「倚りかからず」「わたしが一番きれいだったとき」の詩。以来気になる詩人ではあったが、それ以上の詩を読むことはなかった。先日エッセイ集を読んだきっかけでこの評伝も読んでみた。著者の誠実さが伝わる文章に引き込まれるように読み終えた。
読了日:05月13日 著者:後藤 正治
イタリアからイタリアへイタリアからイタリアへ感想
★★★★☆イタリアの各地を主題に筆者の出会った人たちを描いていく。大学時代のアルバイトや仕事の駆け出しの頃の思い出、船で生活をするきっかけや、果てはブエノスアイレスまで飛んでいく。
読了日:05月08日 著者:内田洋子
人口減少社会の未来学 (文春文庫 う 19-26)人口減少社会の未来学 (文春文庫 う 19-26)感想
★★★★☆この本で2018年に問われた人口減少という問題は、残念ながら当時の自分には意識にのぼらなかった。自身も高齢者になったいま、日本の置かれている状況を確認することができた。現政権が最重要課題としている少子化問題の解決策がこの本で指摘されている点を根本的に見据えているかを確かめることができそうだ。しかし小田嶋隆氏の「経営者目線」という指摘は鋭い。
読了日:05月01日 著者:

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2024年4月に読んだ本

2024-05-03 | Books
4月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1950
ナイス数:58

世にもあいまいなことばの秘密 (ちくまプリマー新書 442)世にもあいまいなことばの秘密 (ちくまプリマー新書 442)感想
★★★★☆プリマー新書ということで、中高生を念頭に書かれているだろうから、噛み砕いたような説明になっている。初めて言語学の世界に入るとっかかりとなりそう。読んでいると授業を受けている気になってくる。
読了日:04月27日 著者:川添 愛
電車のなかで本を読む電車のなかで本を読む感想
★★★★☆書名のとおり通勤の電車で読み終えました。ひとりで出版社を立ち上げた著者の故郷と言っていい高知の新聞社のフリーペーパーに掲載された本にまつわるエッセイ。本への愛情が熱く伝わってくる。
読了日:04月24日 著者:島田 潤一郎
その時あの時の今: 私記テレビドラマ50年 (河出文庫 や 32-2)その時あの時の今: 私記テレビドラマ50年 (河出文庫 や 32-2)感想
★★★★☆自身のテレビドラマについて語る第二部は、見ていたドラマの成り立ちがよく分かる。願わくばテレビで再放送をしてくれないか。
読了日:04月20日 著者:山田 太一
雪男は向こうからやって来た雪男は向こうからやって来た感想
★★★★☆2008年に行われたネパール雪男捜索に参加した記録。著者はもともと雪男が存在することに懐疑的であったのだが、隊員として捜索隊のメンバーとの関わりにより雪男に対する認識に変化が起こってくる。
読了日:04月18日 著者:角幡 唯介
可燃物可燃物感想
★★★★★新しいキャラクターだ。事件の犯人の動機をとことん探る刑事。捜査は意外な解決を迎える。シリーズ化をしてほしい。
読了日:04月09日 著者:米澤 穂信
夕暮れの時間に (河出文庫 や 32-4)夕暮れの時間に (河出文庫 や 32-4)感想
★★★★☆今度の山田太一のエッセイ集はあとがきにあるように、氏のほぼ70代に書かれたもので、いまから10〜20年前だ。書評は読んでみたくなる。
読了日:04月06日 著者:山田 太一
珈琲店タレーランの事件簿 8 願いを叶えるマキアート (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 8 願いを叶えるマキアート (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
★★★☆☆今回もイベント中に起きた事件の謎解き。ん〜 ネタ切れ感が。
読了日:04月01日 著者:岡崎 琢磨

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2024年3月に読んだ本

2024-04-01 | Books
3月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1627
ナイス数:48

デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界感想
★★★★☆デヴィット・ストーン・マーティンという画家の描いた1950年代からのジャズレコードのジャケットのコレクションの紹介だ。ジャズには全くと言っていいほど詳しくないのでデヴィット・ストーン・マーティンという人物は知らなかったが、いくつもの絵を見ているとなかなか味わい深イラストだと感じるようになってきた。
読了日:03月28日 著者:村上 春樹
旅する練習旅する練習感想
★★★★☆新型コロナウイルスによる臨時休校となった小学校を卒業した姪と鹿島アントラーズの本拠地まで合宿で借りっぱなしにしていた文庫本を返す旅。それも歩いてだ。ロードムービーさながらの旅にもうひとり合流して、かけがいのない思い出を作っていくのだが。なんとも言えない終わり方だ。
読了日:03月24日 著者:乗代 雄介
珈琲店タレーランの事件簿 7 悲しみの底に角砂糖を沈めて (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 7 悲しみの底に角砂糖を沈めて (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
★★★★☆第7集は短編集。同じ短編集の第4集とは少し趣きが違う。だいぶこなれた感じがするが、やはりこのシリーズは長編のほうが良いかな。
読了日:03月19日 著者:岡崎 琢磨
言の葉さやげ (河出文庫 い 36-2)言の葉さやげ (河出文庫 い 36-2)感想
詩人の茨木のり子のエッセイ集だが、書かれたのは1968年から1980年だ。時代を感じさせるものもあるが、詩や言葉について言えばいま読んでも説得力のある内容だった。
読了日:03月14日 著者:茨木 のり子
珈琲店タレーランの事件簿 6 コーヒーカップいっぱいの愛 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 6 コーヒーカップいっぱいの愛 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
★★★★☆珈琲店タレーランのオーナーの亡くなった妻の不可解な行動を探る美星とアオヤマ。妻の千恵の過去にまで遡り突き止めたその行動の真意とは?
読了日:03月11日 著者:岡崎 琢磨
空想の補助線――幾何学、折り紙、ときどき宇宙空想の補助線――幾何学、折り紙、ときどき宇宙感想
★★★★☆折り紙作家であり研究者と天文台のエンジニアのエッセイは理系的な発想、考え方と折り紙が馴染むことが分かる。数学者から詩・俳句、歴史へと折り紙で繋ぐ連想が面白い。
読了日:03月08日 著者:前川淳
1973年に生まれて: 団塊ジュニア世代の半世紀1973年に生まれて: 団塊ジュニア世代の半世紀感想
★★ ★☆☆1973年生まれは2023年に50歳となる。その1973年から現在までのトピックをあんなこともあったと思いながら、懐かしんで読んだが、さてそこにあるものはなんだろう?
読了日:03月01日 著者:速水 健朗

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2024年2月に読んだ本

2024-03-01 | Books
2月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1790
ナイス数:50

珈琲店タレーランの事件簿 5 この鴛鴦茶がおいしくなりますように (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 5 この鴛鴦茶がおいしくなりますように (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
★★★★☆語り手のアオヤマの中学時代に会った年上の女性と11年振りに会ったことから始まる今回の話は、源氏物語にまつわる舞台でクライマックスを迎える。
読了日:02月26日 著者:岡崎 琢磨
不完全な司書不完全な司書感想
★★★★☆私設図書館を運営する著者のエッセイ集は2冊目。前作に比べ、より図書館の運営や著者自身の内面に踏み込んでいる。本という「窓」を通して見たさまざまな世界を真摯に伝えてくれる。
読了日:02月24日 著者:青木海青子
珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
★★★★☆シリーズ3作目。関西バリスタに出場するバリスタの切野美星が巻き込まれる事件。過去にもあったらしい事件との関わりは?
読了日:02月14日 著者:岡崎 琢磨
流 (講談社文庫)流 (講談社文庫)感想
★★★★☆1975年に祖父が殺された。まだ高校生だった主人公が祖父を殺した犯人を追うのだが、話は台湾の歴史が強く映し出されている。そして主人公の家族の歴史は日本と中国、台湾の戦争が重くのしかかっている。祖父の生きた時代とわたしの成長がたくさんのエピソードが絡み合いながら語られていく。
読了日:02月11日 著者:東山 彰良
一線の湖一線の湖感想
★★★★ ☆『線は、僕を描く』の続編。で絵を描けなくなった大学生で水墨画家の青山の復活と再生の物語だ。亡くなった母親の勤めていた小学校で墨絵を教えることにより、復活の兆しが見えてくる。師匠や兄弟子、大学の親友、そして小学生たちの助けにより絵を描くことの本質を掴むことができた。最終第五章の揮毫会の描写は圧巻。
読了日:02月03日 著者:砥上 裕將

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2024年1月に読んだ本

2024-02-01 | Books
1月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2370
ナイス数:78

八月の御所グラウンド八月の御所グラウンド感想
★★★★☆久しぶりの万城目学。「十二月の都大路上下る」と「八月の御所グラウンド」の2篇とも京都を舞台に少しだけ異変が起こるのだが、今度の万城目ワールドは優しいなぁ。
読了日:01月29日 著者:万城目 学
昭和を生きて来た: 山田太一エッセイ・コレクション (河出文庫)昭和を生きて来た: 山田太一エッセイ・コレクション (河出文庫)感想
★★★★☆2023年11月に亡くなった山田太一さんのエッセイ集。新潮文庫で出た『路上のボールペン』と『いつもの雑踏いつもの場所で』は読んだかな。芯のある文はテレビで見る氏の優しい語りとは別の面を見たような気がするが、このような思いを持ちながらテレビの脚本に結晶させていたのだろう。
読了日:01月27日 著者:山田 太一
珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る (宝島社文庫)珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る (宝島社文庫)感想
★★★★☆この巻はバリスタの妹が大学の夏休みに京都にやってきた。後半はこの姉妹が大変な事件に巻き込まれていく。
読了日:01月26日 著者:岡崎 琢磨
遠い唇 北村薫自選 日常の謎作品集 (角川文庫)遠い唇 北村薫自選 日常の謎作品集 (角川文庫)感想
★★★★☆円紫さんのシリーズと中野のお父さんは読んでいたが、短編は初めて。登場人物たちが中年とか初老のひとが多かったので、社会的には落ち着いたそれなりの立場にいるにもかかわらず(だからこそか)抱えている謎に焦点を当てている。
読了日:01月23日 著者:北村 薫
珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
★★★★☆シリーズ4が短編集となっていたので、てっきり長編かと思っていたら連作でした。シリーズ4より読みやすく楽しめました。
読了日:01月17日 著者:岡崎 琢磨
鍵盤ハーモニカの本鍵盤ハーモニカの本感想
★★★★☆子供たちが小学校で使っていたあの鍵盤ハーモニカについて、なぜハーモニカに代わって学校教材となったのか、考えてみると不思議でした。鍵盤ハーモニカ奏者である著者が、この疑問を歴史的に解き明かしてくれると同時に、
この楽器の成り立ちを調べてくれています。
読了日:01月13日 著者:南川 朱生(ピアノニマス)
珈琲店タレーランの事件簿 4 ブレイクは五種類のフレーバーで (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 4 ブレイクは五種類のフレーバーで (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
★★★☆☆このシリーズは初めて。短編集なので各編のテイストがさまざまに趣向を凝らせているが、謎解きがあっさりしている印象を受けた。長編を読んでみるとまた違う印象を持つかもしれない。
読了日:01月09日 著者:岡崎 琢磨
見知らぬイタリアを探して見知らぬイタリアを探して感想
★★★★☆今度のエッセイはイタリアがコロナウイルスに襲われ始めた時期に書かれたもの。15の色を主題にミラノ、ヴェネツィア、それにリグリア州の港町で出会うさまざまな人たちとの交流にもコロナの影が見られることもあるが、どの人たちからも相手を思う心が伝わってくる。
読了日:01月07日 著者:内田 洋子

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2023年12月に読んだ本

2024-01-09 | Books
12月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1430
ナイス数:28

なにごともなく、晴天。 (金曜日の本)なにごともなく、晴天。 (金曜日の本)感想
★★★★☆高架下の商店街のひとつ「むっつ」という古道具屋の雇われ店員、美子を取り囲む人々の話。あまりありそうもない舞台でありながら、どこにもいそうな人たちの温かい小話の積み重ね。
読了日:12月29日 著者:吉田 篤弘
負けない力 (朝日文庫)負けない力 (朝日文庫)感想
★★★★☆引き続き橋本治。知性について語るが、「知識」や「教養」といった「知っている」ことから「考える」ことだよ、と言っている。
読了日:12月25日 著者:橋本 治
明日は昨日の風が吹く明日は昨日の風が吹く感想
★★★★☆『ああでもなくこうでもなく』は3冊までは読んだはずですが、当時はこんな内容の時評を読んだことがなかったので、新鮮であり目から鱗の気持ちで読んでいました。いま読み返すとこの独特の文章は、内田樹の言う自分への説明のために書かれている、という意見に納得しました。
読了日:12月19日 著者:橋本 治
軽いつづら (新潮文庫)軽いつづら (新潮文庫)感想
★★★★☆文藝春秋のエッセイに比べて新聞の掲載なのか一話が短めで、人物をネタに蘊蓄を傾ける。最後の落ちの一文がジョークとも皮肉とも。
読了日:12月08日 著者:丸谷 才一
街場の成熟論街場の成熟論感想
★★★★☆ドナルド・トランプ大統領就任式にホワイトハウス報道官が「代替的事実」と言明したことから、「客観的事実」が懐疑される時代となった。そんな時代だからこそ「まっとうな大人」になろうよと呼びかけてくれている。
読了日:12月03日 著者:内田 樹

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2023年11月に読んだ本

2023-12-01 | Books
11月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2106
ナイス数:49

宙わたる教室宙わたる教室感想
★★★★☆定時制高校を舞台に研究者でもある教員とさまざまな経歴の生徒たちが立ち上げた科学部で実験に熱中していく。誰もがこの定時制高校に至る事情を受け止めることができずにいたが、その壁を壊したのは皆の科学をすることで生まれてきたわくわくする気持ちだろう。
読了日:11月26日 著者:伊与原 新
世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)感想
★★★★☆フルマラソン未経験の探検家がサハラ砂漠のマラソンに挑む。何が奇妙かというと「西サハラ人を支援するためのマラソン大会は、西サハラ人のボランティアに支援されて開催されている――。」という逆転現象があるからだ。しかしこの無謀さ、突進力は早稲田大学探検部の伝統なのだろうか?併載された話もどれも普通ではできない経験を話してくれている。
読了日:11月20日 著者:高野 秀行
天然日和 (幻冬舎文庫)天然日和 (幻冬舎文庫)感想
★★★★☆このエッセイは2001年の春から2002年の冬までの日記の体裁をとっている。20年以上前の出来事だが、石田さんは30代? のびのびと書かれていて好感が持てる。
読了日:11月16日 著者:石田 ゆり子
乳と卵 (文春文庫)乳と卵 (文春文庫)感想
★★★★☆主人公とその姉とその娘。女性3人だけで男性は出てこない。豊胸手術を考える姉に対して、娘は初潮に怯える。娘は母親と会話ができずノートに言葉をつぐむ。交われなかった2人が大阪から妹の住む東京で3人で過ごす3日で何かが変わった。しかし何が? 女性の身体性の変化を受け入れるというか直視することができたのだろうか?
読了日:11月13日 著者:川上 未映子
訂正する力 (朝日新書)訂正する力 (朝日新書)感想
★★★★☆SNSでの一方的な攻撃、ディベートのような論破の論理、マウンティングによる優位性の強調、主義主張を曲げない対立のまま実効性を持てない政治、うんざりするような状況を数えあげるとキリがない。ちゃぶ台返しのリセットとぶれないまま硬直し身動きが取れないまま停滞している日本を立て直すために必要なものは、まちがいを認めて改めることができる力、つまり「訂正する力」だという。
読了日:11月10日 著者:東 浩紀
口訳 古事記口訳 古事記感想
★★★★☆町田康訳の関西弁を読んでいると、神話の荒唐無稽さが増幅される。しかし神々の名前が覚えられない。
読了日:11月08日 著者:町田 康
オラクル・ナイト (新潮文庫)オラクル・ナイト (新潮文庫)感想
★★★★☆重層的に話が進んでいくのだが、それぞれのエピソードは暴力的な結末を迎える。しかしその結末は何故か静謐さが感じられる。
読了日:11月03日 著者:ポール オースター

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2023年10月に読んだ本

2023-11-01 | Books
10月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2111
ナイス数:52

ガラスの街 (新潮文庫)ガラスの街 (新潮文庫)感想
★★★★☆以前「シティ・オブ・グラス」を読んだが柴田元幸訳で再読。出だしだけしか覚えていなかった。他者と間違えられて探偵として行動を始めるが、探偵小説と思って読んでいると事件はいつまでたっても解決しない。作家としての自分と自身の作品の探偵と、間違えられた相手は探偵ではなく作家だった、というもうひとりの自分ともいえる人物が登場するが、自分自身が消失してしまう。なんとも不可解な話だ。
読了日:10月30日 著者:ポール オースター
老後とピアノ老後とピアノ感想
★★★★☆新聞社を退職後に40年ぶりにピアノを習う同時進行のエッセイ。自分も60歳を過ぎて楽器を(ピアノではないが)やり始めたので、その気持ち分かると思いながら読む。最後に「今、この場所を、この瞬間を楽しめば良いではないか!」の言葉に励まされる。
読了日:10月25日 著者:稲垣 えみ子
宗教なんかこわくない! (ちくま文庫)宗教なんかこわくない! (ちくま文庫)感想
★★★★☆再読。次に何を読もうかと書棚をみていてたまたま目に入って読むことに。オウム真理教事件について書かれているが、それを飛び越えて宗教とはどういうものかを語っている。覚えていないのだが「はっきりしているのは、『日本人に一番必要なものは“宗教”ではなく、“自分の頭でものを考える”という習性である』ということだ。」という一文に赤線が引いてある。これっていまでもそうだよな、と思わざるを得ない。
読了日:10月22日 著者:橋本治
ぼくたちがコロナを知らなかったころ (集英社文庫)ぼくたちがコロナを知らなかったころ (集英社文庫)感想
★★★★☆吉田修一のエッセイは初めて。タイトルのとおりコロナが蔓延する前までに書かれたもの。そういえば何も気にすることなく出かけて、人と会っていたことを懐かしく思う。
読了日:10月17日 著者:吉田 修一
客観性の落とし穴 (ちくまプリマー新書 427)客観性の落とし穴 (ちくまプリマー新書 427)感想
★★★★☆議論や討論、発表へのツッコミに客観性、エビデンスという言葉が使われるが、その違和感を著者の専門と実践から考えていく。
読了日:10月13日 著者:村上 靖彦
円: 劉慈欣短篇集 (ハヤカワ文庫SF SFリ 6-1)円: 劉慈欣短篇集 (ハヤカワ文庫SF SFリ 6-1)感想
★★★★☆「三体」の印象が強烈だったので、短編も宇宙SFものかと思っていたが、バラエティに富んでいた。「円」は評判通り面白い。他には「カオスの蝶」「詩雲」「栄光と夢」が気に入った。「円円のシャボン玉」のちょっと明るいテイストもなかなかだ。
読了日:10月10日 著者:劉 慈欣
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)新装版 (新潮文庫)世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)新装版 (新潮文庫)感想
★★★★☆壁に囲まれた街で心を持たない住人に投げ込まれた僕と、理由もわからず巻き込まれていく私の、静と動のふたつの物語が絡み合う。「世界の終り」は最新作の『街とその不確かな壁』にも通ずるものがあった。「ハードボイルド・ワンダーランド」の活劇は地下深く潜っていくモチーフで、初期の頃から変わっていないことがわかる。
読了日:10月02日 著者:村上 春樹

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2023年9月に読んだ本

2023-10-02 | Books
9月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2197
ナイス数:64

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)新装版 (新潮文庫)世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)新装版 (新潮文庫)感想
★★★★☆『街とその不確かな壁』を読んで、読み返したくなった。1985年に出た時に読んでいるのだが、まったく覚えていない。はじめて読んでいるのと同じだ。後半はどうなるのだろう。
読了日:09月28日 著者:村上 春樹
ごまかさないクラシック音楽 (新潮選書)ごまかさないクラシック音楽 (新潮選書)感想
★★★★☆クラシック音楽の歴史に沿いながら、作曲家の位置付けとその後に及ぼした影響を言いたい放題語り合う、という内容。クラシックの発展と衰亡を宗教、社会、政治、民族といった歴史との関わりから評価していく。クラシック評論の第一人者のふたりの掛け合いがおもしろい。
読了日:09月23日 著者:岡田 暁生,片山 杜秀
思いがけず利他思いがけず利他感想
★★★★☆昨年『利他』とは何か』を読んだときには、掴みづらい概念だと思ったのだが、本書を読むことで著者の伝えたいことが理解できた。書名の「思いがけず」という言葉が読む前には意味深な言葉と思ったが、「利己」との対比で考えてみることから始まり、「他力」「やってくること」「与格」の考え方、「利他」を受け取るとは、と読んでいくことで、偶然性に依拠するという「利他」は狙って行う、受けるものではなく「思いがけず」発生するものであり、その行為をこの言葉に込めたのだろう。

読了日:09月18日 著者:中島岳志
愛の見切り発車 (新潮文庫)愛の見切り発車 (新潮文庫)感想
★★★★☆文庫になった2000年に購入し、そのまま積読していたが2014年に読み始め、なぜか途中でやめていたのを、再びチャレンジ。内容は1988年から1996年にかけて書かれたもの。30年以上も前になるがいま読んでも面白い。氏を知ったのはポール・オースターの翻訳からだった。
読了日:09月16日 著者:柴田 元幸
言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書 2756)言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書 2756)感想
★★★★☆オノマトペから言葉を学んでいくという推論は、オノマトペをたくさん持つ日本語で考えるとうなづける話だったが、そこから言語の獲得まで展開されるところはスリリングだ。
読了日:09月11日 著者:今井 むつみ,秋田 喜美
それは誠それは誠感想
★★★★☆高校の修学旅行での自由行動で学校に届け出た行動とは別の勝手な行動をしてしまう班。主人公の個人的な気持ちから発せられた行動案が実現してしまう。高校生の鬱屈を融解するように共感が湧き出てくる班のメンバーたちが優しい。
読了日:09月04日 著者:乗代 雄介
男ごころ (新潮文庫)男ごころ (新潮文庫)感想
★★★★☆どの話も安心して氏の語りに耳を傾けていられる。ということは書いている方はさらさら書いているように見せて、この短い話をどうやって読ませようかと、苦労しているのだろうか? いや、氏なら次から次へと話が湧き出てくるのかもしれない。
読了日:09月02日 著者:丸谷 才一

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