梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

演舞場の『助六』

2010年05月03日 | 芝居
用事があって、新橋演舞場に出演中の仲間を訪ねましたら、当月は出演者多数のため、劇場とつながっているビル棟の、地上9階の一室に臨時で設けられた楽屋にいるとのこと。
入り組んだ通路を抜けてエレベーターに乗って、初めて足を踏み入れたそのフロアは、かなり広々としていて十分明るく、なにぶん臨時ですから、フロアの絨毯の上に畳敷をひいてはいましたが鏡台も広いし、間仕切りもできてまして、“隔離病棟”みたいになっていなくてホッとしました。舞台との距離があるぶん、出トチリには気をつけて欲しいですが…。

ちょうど、もう少ししたら『助六』の<初日通り舞台稽古>が開くという時分でしたので、客席にまわって拝見させて頂きました。
《歌舞伎座さよなら公演》「御名残四月大歌舞伎」と、当月演舞場の「五月花形大歌舞伎」では、いくつかの演目が共通しておりまして、この『助六由縁江戸桜』もそのひとつです(他に『寺子屋』『熊谷陣屋』)。先月は成田屋(團十郎)さんがお勤めになった助六を、ご子息の海老蔵さんがお勤めになり、昭和63年以来の“水入り”の場まで上演するという話題の演目です。

…私、正面からじっくり『助六』を拝見するのは何年ぶりでしょうか? 考えてみたら、松嶋屋(仁左衛門)さんが平成10年の2月に歌舞伎座で襲名披露でお勤めになった『曲輪初花桜』を、一幕見で拝見して以来でした(当時研修生)。
改めて、この作品の、他に類のない華やかさ、贅沢さ、鷹揚な時の流れを感じました。

水入りは、「こういうものである」と記された書物でしか知らなかった場面。大変興味深く拝見させて頂きました。いや~、すごい場面だァ!
演者はもとより、衣裳さん床山さん大道具さん小道具さん、スタッフの皆様はさぞかし大変だと思います!
皆様お楽しみに…。