梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

徳若に御萬歳と…

2008年03月05日 | 芝居
師匠が出演しております『春の寿』三段返しの内の「萬歳」は、実は歌舞伎で上演するのがこれで2回目という“新顔”演目なのですが、舞踊会等ではときおりお目にかかる曲でもあります。
もともとが、文楽のために作られた四段返しの景事『花競四季寿』の中の<春>の段の曲。『花競~』は文化6(1809)年に開曲されたそうですから、作品そのものは古いわけです。

現行の文楽の演出では、奈良から京へ上ってきた<大和萬歳>の太夫と才造の2人組による振り付けだそうですが、歌舞伎初演となった平成18年1月歌舞伎座では若衆と女による2人立ち。今回は若衆のみの1人立ちでございます。若衆が萬歳を踊るものには一中節の『都若衆萬歳』がございます。
若衆らしい華やかな扮装ですが、鬘や衣裳の柄は<元禄>風のものになっております。足袋も藤色の<色足袋>。

地が竹本浄瑠璃ご連中ですので、曲はたいへん華やかでリズム感がございます。歌詞の内容は<大和萬歳>が歌い継いできた<萬歳唄>からとられているそうですが、京都の御所を讃え、恵比寿の徳で商売繁盛の町々の賑わいを描き、それもこれも天子様が治める平和な御代の賜物と結ぶ内容は、いかにも上方の作品だと思います。

私が中学生の頃、近所のお稽古場で地唄を習っておりましたときに、『萬歳』という曲を教えて頂きましたが、この地唄の『萬歳』と、このたびの義太夫『萬歳』の後半部分が、歌詞・曲ともに大変似ておりましたので、懐かしいやら驚くやらでしたが、なんでも、この地唄をもとに義太夫は作曲されたそうで、なるほどそうかと膝を打った次第です。


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