梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

国芳の浮世絵

2005年11月12日 | 芝居
東京国立博物館で「北斎展」が開催されておりますね。十二月四日までだそうですが、私も、来週には足を運ぼうと思っております。
浮世絵の世界も、美人画、狂画、風景画、役者絵とジャンルも多彩なら、浮世絵師も綺羅星のごとく。なかで私は<歌川国芳>にぞっこん惚れ込んでおります。幕末に活躍した絵師ですが、豪快な筆致、大胆な構図の武者絵もよいですが、やはり彼の作品の中では、いわゆる<狂画>の面白さが抜群です。タコやらネコやらを擬人化したもの、芝居の名場面のパロディー。達磨は足が生えて歩き出し、将棋の駒が鎧を着てひと合戦。どの作品も、洒落、地口、皮肉、もどきを駆使した知的で面白いものばかりで、ある種の反骨精神を感じます。
一方で、風景画には西洋画の陰影法や遠近法もとりいれ、独自の世界観を醸し出しているのも見逃せませんが、諸作品に共通して感じられるのは<動の魅力>でしょうか。一瞬を切り取った構図の中に、躍動感溢れる人物、動物、浪や風が描かれ、生き生きとしたドラマが迫ってきます。
破天荒、奇抜、異色、そんなフレーズが浮んでくるのですけれど、その実大変に計算された構成がなされておりますのを見ますと、その的確さ、緻密さに驚いてしまいます。

個人的な好みで申し上げますと、金魚を擬人化して遊ばせる『金魚づくし』三作品や、忠臣蔵の討ち入りが、滑稽なドタバタになる『義士の誠忠芳戯(よしがたわむれ)』ニ作品が好きです。
この他ひと味もふた味も違う役者絵、奇々怪々の妖怪画も魅力的です。東京書籍の『国芳の狂画』(稲垣進一/悳俊彦編著)をおすすめして、今日のお話を終わりたいと思います。

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