梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

初春興行、無事に…。

2009年01月27日 | 芝居
本日、歌舞伎座《寿 初春大歌舞伎》の千穐楽でございました。
ふたつの後見、無事に勤め上げることができました。心より御礼申し上げます。

師匠の後見は、未熟ながらもこれまで度々してきたことでございます。が、『鏡獅子』での、千之助さんの胡蝶の後見。違うお家のお子様の後見は、初めてのことでもあり、責任の大きさに打ち負かされそうで、大変緊張いたしました。
お陰様で、大きな事故もなく(鈴太鼓が途中で壊れてしまった日が、ひと月で一番衝撃的でしたが…)済みまして、有難く思っております。堂々と、元気に踊り抜いた千之助さんのエネルギーに、むしろ私の方が引っぱってもらったような気もいたしております。

中村屋(勘三郎)さんの『鏡獅子』に、初めて携わらせて頂けたことは、色々な面で勉強になりました。この曲の持つ、おかしがたい崇高さをひしと身に感じ、そんなひと幕のなかで、自分がどういう後見であらねばならないのか。今回は満足できる結果を残せませんでしたが、これからの舞台で、この度の経験を必ず活かしたいと切に思います。

千穐楽の本日は、終盤の獅子の毛振りを、合方2杯分たっぷりとお見せになりました。
昨日までと同様に、三味線とお囃子による1杯目が終わりますと、ふっとお囃子ご連中が演奏の手をとめます。
2杯目は三味線だけではじまるのです。今までのボリュームと賑やかな趣きが一変し、糸の音だけが粛々と鳴り響くことになりまして、舞台の雰囲気が一段と“締まる”ように思えるのです。
…どのくらいこの三味線だけの時間がつづくのでしょう。やがて、2杯目が後半に入るところで再びお囃子が加わります。鼓や太鼓、お笛からの<気>が舞台に満ちてゆくのが肌で感じられます。間合いも早まり、グングンとボルテージが高まってゆく。お客様も興奮しているのが、ハッキリとわかるジワの波紋。
獅子が毛を振り続ける長い長い時間、ひたすら跳び続ける胡蝶のお二人…。

本当に、凄い世界でした。

新年早々、『三番叟』といい『鏡獅子』といい、勤める上での<気持ち>がいつも以上に大事な後見を勉強できましたこと、感謝いたします。
そして、そのどちらもが、つつがなく終わることができたことを、心の底から喜びたいです。
ああ、疲れた。
本当に疲れましたけれど、この疲れを経験できたことが、今はとっても嬉しいのです。

有り難うございました。