梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

何かの暗号とかいうわけではないようですが

2009年01月12日 | 芝居
当月の『祝初春式三番叟』は、いくつかの“三番叟もの”の曲を今回の上演用に構成しなおした作品ですが、天王寺屋(富十郎)さん演じる<翁>が登場する前半は、ほぼ長唄の『式三番叟』(正式には『翁千歳三番叟』)に基づいております。

翁といえば、三挺の鼓とともに唱えられるコトバが印象的です。
歌舞伎では、長唄との掛け合いになります(三味線は入らない)が、今月の上演に拠って以下に書いてみます。

翁 『とうとうたらりたらりら たらりあがりららりとう』
長唄『ちりやたらりたらりら たらりあがりららりとう』
翁 『鶴と亀との齢にて』
長唄『幸い心にまかせたり』
翁 『とうとうたらりたらりら たらりあがりららりとう』
長唄『ちりやたらりたらりら たらりあがりららりとう』

…はてさて、どういう意味なのでしょう?

どうも、正確には判明していない、というのが正直なところのようです。
「笛や鼓の楽譜を音にしたものである」
とか、
「猿楽の唱歌である」
「チベット仏教の呪文である」
とかがよく解説書に見られる解釈ですが、
「古代ポリネシア語で太陽を讃える意味である」
という説まであるとかや。

なににもせよ、新たな世、命のはじまりを<清め><寿ぎ><祝う>意味であろうというのが、最大公約数的な理解の仕方でございましょう…。

舞台上での、天王寺屋さんの朗々たるこの<神歌(かみうた)>を、私は下手の<お幕>の蔭で控えながら拝聴しておりますが、なんとも気持ちの引き締まる思いです。
やはり、言霊というものはあるのだと思います。