梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

まさに命がけ

2007年05月07日 | 芝居
夜の部『め組の喧嘩』上演中は、名題下部屋のテンションが尻上がりに高くなります。
なんといっても大詰の喧嘩場は、他の演目と比べましても<勢い><リアルさ><激しさ>、そして<出演者数>が桁違いでしょう。歌舞伎座の舞台いっぱいに繰り広げられる鳶と相撲の大喧嘩は、お客様の興奮を喚ばないわけはございません。
わけても鳶の面々は、体を張った演技が続きます。<三徳><後返り>などのトンボも駆使しながら、相撲取りにあしらわれる様を表現しなくてはなりませんし、6尺以上はある屋体の屋根に一気に飛びあがる<飛びつき>という見せ場もこなさなくてはなりません。
<飛びつき>は、あらかじめ屋根に上がっている鳶の助けを借りるわけですが、花道から走り込んだ勢いとタイミング、そしてなにより度胸がなくてはならないようで、序幕の女郎で出番を終えている<運動オンチ>の私などは、見るているだけでおそろしく、足手まといにならなくてよかった…と心底思っているくらいなのです。
舞台稽古でこの<飛びつき>部分の稽古を事前にしており、それを拝見していてなるほどと思いましたのは、飛びつく人が屋根上の介錯係につかまる時、あれは“手首”を握っているのですね。握手するように手と手同士を握ってしまうと、介錯係はかえって引き上げにくいのだそうです。

リアルな部分もあれば可笑しみの部分もあり、はたまたアクロバティックな部分もある20分余の大立ち回り。下座のお囃子も度々変わり、最後まで飽きさせない見せ場の連続。
<團菊祭>ならではの顔ぞろいの乱闘シーンを是非ご覧下さいませ。