梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

魚屋の店先のように

2007年03月09日 | 芝居
『渡海屋』開幕早々登場する、相模五郎と入江丹蔵。2人は北条の家来で、義経一行を探索のためやってきたわけですが、義侠心ある亭主銀平に、散々になぶられてしまいます。
その腹いせにまくしたてる長台詞が、大物浦にちなんでの<魚尽くし>になっておりまして、2時間余の長丁場の中の、数少ないおかしみの場面となっております。
駄洒落で魚介類の名前を織り込むのですが、ひとつここは洒落を抜き取って書き出してみましょう。

相模五郎「やい銀平…いやさ銀平様め。 言わせておけばいいかと思い 様々の悪口雑言 田舎武士だとあなどって よくも痛い目に遭わせたな」
入江丹蔵「さはさりながらこのままに 帰るというは口惜しい せめてもの腹いせに このひと太刀をかましてやろうか」
相模五郎「エエ、赤うなって気張るな気張るな」
入江丹蔵「エエ、じゃと申して」
相模五郎「かれこれ言わずにハテマア来い来い。 …おのれ この返報は必ずきっと…はい さようなら」

このやり取りの中で、数えてみれば34種類の魚介の名が出てくるのです。どんな魚が登場するかはご覧頂いてのお楽しみですね。
今月の昼の部では、もうひとつ、普段はあまり聞かれることのない<◯◯尽くし>が、俳優さんのご趣向で行われています。合わせてご注目下さいませ。