梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

暮古月稽古場便り1・立廻りの巻

2006年11月28日 | 芝居
本日より、歌舞伎座<十二月大歌舞伎>のお稽古の始まりです。
稽古場として使われる劇場ロビーに掲示された<貼り出し>を見て、自分のお役を確認。昼の部『嫗山姥』の<花四天>、『忍夜恋曲者 将門』の<力者>の二役でした。これに師匠がお出になる『勢獅子』の<後見>(ただし黒衣ですが)もいれれば、昼の部は三つの舞台に登場いたします。
さて、<花四天><力者>それぞれ、立廻りをするわけですが、本日は午前10時半より、『嫗山姥』の立廻り部分のみの<抜き稽古>から始まりました(その後<附立>)。銘々のパートの割り振りをしてゆきましたが、このお芝居には立廻りが2カ所ございまして、ひとつは橘屋(萬次郎)さん演ずる腰元白菊と、もうひとつは音羽屋(菊之助)さん演ずる八重桐とのカラミとなります。総勢14人の花四天のうち、8人は両方に登場いたしますが、私もこの度、ふたつとも出させて頂くこととなりました。本日立廻りの手を立師の方からうつして頂く作業では、続けざまにふたつの手順を覚えなくてはなりませんでしたので、最初はついてゆくのがやっとでしたが、何回も返して稽古するうちには、きちんと覚えることができました。ただし覚えただけではなんにもならないわけで、形、間、皆とのイキなど、これからどんどん手直しされてゆくと思いますので、必死の覚悟でついてゆこうと思います。

『将門』は、今日は稽古が無かったので、明日からとなりますが、本日はもうひとつ、立廻りを覚えることになりました。師匠がお出になる夜の部『出刃打ちお玉』での、師匠と三河屋(團蔵)さんとの敵討ちシーンの立廻りです。
以前にもお話しいたしましたが、幹部俳優の皆様が立廻りをなさる場合には、まず弟子の立場の者がかわりに立って演じてみせるという作業をよくいたします。出来上がった立廻りを、言葉ではなく、見た目で覚えて頂くわけですね。今回も同様で、師匠のかわりに私、三河屋さんのかわりにはあちらのお弟子さんが、立師の方から教わった動きを演じてみせたり、あるいは口頭で説明しながら立廻り部分を進行いたしました。このお役目は、間違ったことをしてはいけないし、うっかりその場でど忘れしてもなおいけません。とても緊張いたすものです。果たして今日は任務を果たせましたでしょうか…。

今日で計3種の立廻りがインプットされました。明日はこれにもうひとつ! 回線が混乱しないよう、集中力を高めて頑張ります。また、7月以来のトンボも返ることになりましたので、体調管理も万全に…。
本日は立廻りのことを中心にお話しいたしました。今月の稽古場便りは、日替わりで違うテーマでリポートしてみたいと思いますので、よろしくお願いいたします。