梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

スズナリ初体験

2006年11月22日 | 芝居
今月二度目の下北沢。今日はザ・スズナリでの<燐光群>公演。坂手洋二さん書き下ろしの『チェックポイント黒点島』を拝見いたしました。
旧西ドイツにあった検問所<チェックポイント・チャーリー>をキーワードに、漫画家ヒロコの家庭・ヒロコが描いた漫画の中に登場する<チェックポイント黒点(こくてん)島>、ヒロコのファンの同名の主婦ヒロコの家庭、この三つを中心にして、時も所もバラバラな世界の物語がパラレルに展開されます。

坂手さんのお芝居は初めてだったのですが…。う~ん、ズシンと腹にこたえました。けして重苦しいストーリーではないですし、思想劇でもございませんが、今、この日本が抱えている<本当は誰もが考えなければいけないこと>を、ぐっと突きつけてくるような、真っ向勝負の緊迫感に、正直驚きながらの二時間余となりました。
国と国、民族と民族、私と他人、私と私の中の私…。これらの間に、たとえ目に見えずとも必ず存在する<チェックポイント>。それを越えることはできるのだろうか。そこから自由になることはいけないのか。どちらを選ぶ? どれも選ばない? そのとき<私>という存在は…?

この文章を書いている時点では、私、まだ体験したストーリーを消化中という感じ。ジワジワと、しかし確実に私の中に沁み込んでくるような、ちょっと忘れられない演目になりそうです。
俳優さんでは、いくつもの世界に登場する、それぞれ違った立場の主人公ヒロコをなさった竹下景子さんの純粋さ、軽やかさ、声のきれいさ。これまた各世界ごとに違ったお役で活躍なさる渡辺美佐子さんの台詞まわしの妙味と相変わらずのお元気さ!
求心力に満ちた燐光群のメンバーの方々と一体となって、本当に<濃い>舞台でした。

スズナリは初めてだったんですが、ベニサンよりもこじんまりしているとは思いませんでした。劇場というより芝居小屋といったほうがしっくりするようにも思える、なんだかホッとする<ひと肌>の空間。一階が飲み屋横町なんていうのも、ワタクシ的にはツボでございまして、いっぺんで好きになってしまいました。