梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

暮古月稽古場便り2・12年ぶりの…の巻

2006年11月29日 | 芝居
今月師匠が出演いたします夜の部の『出刃打ちお玉』は、池波正太郎さんの作になる世話物で、初演は昭和50年と伺っております。これが久々に上演されたのが平成6年の2月歌舞伎座(同じ月に上演された、先の大和屋<三津五郎>さんの『越後獅子』が懐かしく思い出されます)、そして今回が12年と10ヶ月ぶりの上演となるのです。
今日はこの演目の2回目の<附立>でございました。新歌舞伎ということもあり、寺崎裕則さんを演出にお迎えしておりまして、前回を踏まえながらも、また新たな芝居作りが進んでおります。
師匠演じます<増田正蔵>は、第一幕では23歳、第二幕では51歳。はじめは、まだ女の肌も知らぬ純情ぶりで、ただ父の仇を討つ一心の、ひたむきでまっすぐな青年が、28年の歳月でどうなるか…。それはご覧になってのお楽しみでございますが、このお芝居では、計5場の登場のたびごとに、師匠の扮装が変わるので、その段取りを決めるのも大変です。
久しぶりの上演、しかも<型>のない新歌舞伎となりますと、稽古場で役者の動きが決められてゆくわけで、それを拝見しながら、(さっきの場では上手に引っ込んで、今度は下手から出てくるのか。では<拵え場>はあそこに作ろう…)なんて考えてゆくわけです。また稽古でわかる限りの、各場で必要な小道具、手拭や懐紙などの持ち物もチェックし、その上で小道具さん、衣裳さん、ときには大道具さんと相談しながら、舞台稽古に備えるのでございます。
もちろん前回の上演で何が使われ、何を着たかは、映像資料も残されておりますし、各分野の<附帳>にも記されているわけですが、なにぶんにも、先ほど申し上げましたように、いくらでも演者の好みと工夫でかわるのがもっぱらの新歌舞伎ですから、私ども弟子の立場の者も、常の古典演目の場合とはまた違った、裏方としての仕事の仕方となっております。
<早拵え>になるところもあるので、少しでも段取りよくできますよう、まずは明後日の<舞台稽古>を頑張ろうと思います。

『嫗山姥』も2回目の<附立>、手順はまとまってまいりましたが、あとは義太夫の節に合わせることを考えねばなりません。私がトンボを返るところも、三味線の節のココ! と決まっているので、そこにきちんと嵌るよう、シンへのかかり方、動き方を考えねばなりませんので、気をつけて演じたいと思っております。
『将門』は今日がはじめてのお稽古。ここでもトンボを返りますが、衣裳が重たい<馬簾付き四天>というものですので、サアますます頑張らねば。この衣裳でトンボを返るのは5年ぶり(そうそう、そのときも『将門』で、加賀屋<魁春>さん初役の滝夜叉でした)なので、ちょっと不安も混じりますが、ともかくも全力でゆきましょう!

稽古も大詰めです。明日は舞台稽古のトップとなる『勢獅子』からお話を…。