梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

ひとつの変更点

2006年11月06日 | 芝居
先月の『元禄忠臣蔵 第一部』でもそうだったんですが、今回この通し狂言では、鬘(かつら)の形式が、以前ご紹介した<アミ>の鬘になっております。
古典演目で見られる、銅の台金に、毛を植え付けた羽二重絹を貼付けて仕上げるものよりも、生え際がよりリアルになるので、青果作品をはじめ<新歌舞伎>ではよく見られるもので、一連の『元禄忠臣蔵』の個々の作品、今月も上演の『南部坂雪の別れ』や来月舞台にかかる『大石最後の一日』などを単独で上演するときも、<アミ>になるのがもっぱらですが、実は『御浜御殿綱豊卿』につきましては、<羽二重>の鬘で上演するのが通例になっております。その理由、事情は色々先輩に伺ってみましても判明せず、皆さん「自分が入ったころから<羽二重>だった」とのことで、だいぶ昔からのことのようですね。
もちろん師匠もずっと<羽二重>の鬘で綱豊卿を演じてこられたわけですが、今回、史上初の全編通し狂言を敢行するにあたり、これまで<アミ>の鬘を使用してきた他の幕との調和ということもあり、今月の『御浜御殿~』も、<アミ>の鬘になりました。全ての登場人物も同様です。微細なことかもしれませんが、やはりそれだけで雰囲気も変わるような気もいたします。すでに半分古典のようになった演目ながら、あらためて、昭和に誕生した<新歌舞伎>であることが、感ぜられるように思われました。皆様の印象は、いかがでしたか?
<アミ>の鬘は台金もアルミになり、とっても軽いのも特徴です。先月から引き続き、ふた月も<アミ>に慣れてしまいますと、12月の歌舞伎座公演で、<羽二重>の鬘を重く感じてしまうかも…。

今日から藤間の御宗家でのお稽古開始。渋谷はいつも賑やかですね。