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TOUKAI-0耐震診断報告書について(1)


今日から数回に分けて、TOUKAI-0耐震診断報告書について、私なりの見解を書こうと思います。
TOUKAI-0耐震診断補強相談士として、現地調査や報告書の作成を行っている立場で書く訳ですが、私とは別の考えというか見解示す方はもちろん存在するでしょう。その場合、どちらの考え方が正しいのかという点を重視するのではなく、人によって様々な考え方があり、今回私が書く内容も数ある考え方の一つに過ぎないという受け止め方をして頂ければと思っています。

今回の内容が、これから診断を依頼しようと考えている方、すでに依頼した方にとって有益な情報であれば幸いです。
ご質問については、メール(お問い合わせ)で対応致します。

なお、プロジェクトTOUKAI-0については、静岡県「耐震ナビ」をご覧下さい。
耐震診断や補強に対する情報や助成金制度について詳しく書かれています。

「耐震ナビ」
http://www.taishinnavi.pref.shizuoka.jp/index.html

(1)耐震診断報告書の見方(基本)

TOUKAI-0耐震診断報告書(以下報告書と略)は、日本建築防災協会が発行している「増補版 木造住宅の耐震精密診断と補強方法(茶本)」をベースに著名な建築専門家によって静岡県版として改良したものです。

報告書は、A4サイズ6枚程度となっていて、表紙が耐震性を示すもっとも重要な部分となります。残りのページは、それを裏付けるための資料です。

診断した住宅の耐震性は、「総合評点」という数値によって示されます。
1.0が基準で、それ未満となると「危険」という言葉が使われはじめます。
逆に1.0以上になると「安全」という言葉が使われるわけです。

簡単にまとめてみます。

1.5以上「安全です」
1.0以上1.5未満「一応安全です」
0.7以上1.0未満「やや危険です」
0.7未満「倒壊または大破壊の危険があります」

次にこの数値を算出する基本的な計算式を紹介します。

「総合評点」=
「地盤・基礎(A)」×「偏心(B×C)」×「水平抵抗力(D×E)」×「老朽度(F)」

「地盤・基礎(A)」地盤と基礎の評価(1.0が最大)
「偏心(B×C)」壁の配置のバランス(1.0が最大)
「水平抵抗力(D×E)」壁の量の評価(1.0未満は壁不足、上限値なし)
「老朽度(F)」建物のいたみ具合(1.0が最大で0.8が下限値)

ようするに総合評点は、上記4項目の評価によって算出されるわけです。
仮に4つの項目全ての評価が1.0だとすると「1.0×1.0×1.0×1.0=1.0」となるので、「一応安全」となります。

仮に壁の量の評価である「水平抵抗力」が「2.0」だとしても壁の配置バランスの評価である「偏心(B×C)」が「0.5」であれば、「1.0×0.5×2.0×1.0=1.0」となります。つまり、壁の量が多くても壁の配置のバランスが悪いため、総合評点が変わらないというわけです。

どうやって「偏心(B×C)」や「水平抵抗力(D×E)」を評価するかについては、あまりに専門過ぎる内容なので省きます。ようするに壁の量が多くても壁の配置のバランスが悪ければ総合評点が単純に増えないという関係を理解して頂ければ十分です。ただ、壁の量である水平抵抗力の評価については、建築確認図書(図面等)や筋かいの有無によって変動するので、その点だけ少し説明させて頂きます。

現地調査の際に担当する耐震診断補強相談士(以下「相談士」と略)による聞き取り調査があります。
その際に住宅金融公庫を使って建てた記憶があれば、証明するものがなくても担当する相談士に伝えて下さい。建築確認図書が何か分からない場合は、図面らしきものをすべてみせれば良いでしょう。どうしてもない場合でも診断は可能ですが、ある場合に比べて評価が低くなりますし、診断にかける時間も長くなります。

不思議なことに住宅金融公庫の使用有無については、依頼者が使用したと聞き取り調査の際に答えれば証明するものがなくても「公庫あり」となります。対して、建築確認図書については、どこかにあるはずだが見つけられないと答えても無しと判定されます。
ちなみに公庫がありと判定されれば、建築確認図書や筋かいが無くても」「水平抵抗力」はまったく調整(低減)されません。
公庫を使った住宅は、それだけ耐震性が高いと判断をされているわけです。

筋かいの有無については、目視調査によって1つでも確認されれば「あり」と判定されます。相談士によっては、建築確認図書に記載されていれば「あり」と判定するケースもあるようです。

最後に一般の方が読むと難しくてよく分からないといわれそうな文章なのでまとめてみます。

ポイント1
耐震性を示す総合評点は、4つの項目から算出されている。
例えば基礎部分だけで耐震性を評価することはない。

ポイント2
壁の量と壁の配置バランスは、密接な関係を持っている。
(壁の量が多いから安全というわけではない)

ポイント3
建築確認図書や住宅金融公庫使用、筋かいの有無は、総合評点に影響を与える。
診断をより正確にすばやく行うためにも建築確認図書(図面等)があった方が良い。

次回は、残りの「地盤・基礎(A)」と「老朽度(F)」について、説明します。
こちらの方が、分かりやすいと思いますし、実はこの報告書でもっとも重要な部分でもあります。
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TOUKAI-0から判断する耐震補強工事の目安


現在のTOUKAI-0耐震診断(無料診断)報告書には、「工事費の目安」というページがあります。これは、県内で実施した補強工事実績を元に県が作成したものです。

ただ、この「工事費の目安」が添付されるようになったのは、昨年度あたりからなので、平成13年度や14年度に診断を依頼した方は、もっていないと思われます。

しかし、工事費用を算出するための計算式は簡単なので、耐震診断の総合評点(X方向とY方向の2つ)さえ分かっていれば、自分でも計算可能です。
X方向とY方向の総合評点のうち、悪い方が表紙の総合評点となりますが、様式2(報告書2枚目)の下あたりにXとY方向の総合評点が記載されています。

例えば、耐震診断の結果が、「総合評点X方向 0.8」「総合評点Y方向 0.7」と書かれていたとします。

「一応安全」とするにはX方向Y方向ともに1.0以上とする必要がありますが、その費用は、62.5万円と算出されます。
「安全」とするにはX方向Y方向ともに1.5以上とする必要がありますが、その費用は、187.5万円と算出されます。
※詳しくは、下記参考資料をご覧下さい。

ただ、この計算式による工事費というものは、大変アバウトなものです。参考にはならないという指摘も当然あると思いますし、私もそれは否定しません。耐震補強工事費用については、ばらつきがあるため、平均値を出しにくいと思われますし、同じ総合評点でも建物の計上や規模によっても費用は変わります。
加えて、TOUKAI-0耐震診断の総合評点は、地盤と基礎の判定に影響を受け過ぎるといった問題があるため、TOUKAI-0型の総合評点を利用した工事費用の算出は危険という見方もあります。あくまでも工事費の「目安」とお考え下さい。

ちなみに私は、この計算式と自分がこれまで実施してきた補強工事を参考にして、自分なりの工事費用目安を伝えています。

しかし、自分で計算をするのが面倒だという方もいると思います。
そこで、静岡県が発行している「木造住宅の耐震リフォーム実例集(H18年度最新版)」に記載されている工事費用を紹介します。はっきりいって、こちらの方が分かりやすいです。

建物状態等によっても違いますが、平成16年度に補助金を受けて補強工事を行った方の平均は約170万円でした。その内、約半数の方が140万円未満、また、30%の方が100万円未満で耐震補強工事ができたと書いてあります。
(耐震精密診断及び補強計画(設計)費用は、15万円くらいと記載)

私個人の意見としては、耐震補強工事にかかる費用は、精密診断など設計費用も含めて、100万円(85万円+15万円)は考えた方がよいと思います。そういえば、耐震補強工事の費用は、建物を解体する費用と同じくらいという意見を述べた方もいましたが、私も同感です。
地震後に建物が倒壊もしくは倒壊寸前の場合、解体工事を行う必要がありますが、その費用については自己負担になると思われます。最近の解体工事は、処分する材料の分別が厳しいので、以前より高いですし、倒壊しているものを処分するから少しは安いだろうと考えるのは少々危険です。

前にも書きましたが、補強内容も建築士や建築業者によって様々なので、補強内容をよく把握することをお勧めします。費用が、平均値ぐらいだから妥当だろうと判断するのではなく、補強内容と工事費用にプラスアルファとして今回、紹介させていただいた工事費用の目安を利用していただければ幸いです。

(注)上記金額は、すべて耐震補強工事に対する助成金や税金の特例を差し引かないものです。

<概算工事費の求め方(参考資料)>
(一応安全)とするにはX方向Y方向ともに1.0以上とする必要があります。

概算工事費※=[(1.0-X方向の評点)+(1.0-Y方向の評点)]÷2×250万円

(安全)とするには、計算式中の「1.0」の部分を「1.5」に置き換えて計算します。

概算工事費※=[(1.5-X方向の評点)+(1.5-Y方向の評点)]÷2×250万円
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明日の中日新聞に

この「耐震ファイルBlog」が、明日の中日新聞朝刊で紹介されるそうです。

これまで、現場の声という形でいろいろ書いてきました。
正直、耐震課外授業活動と自分が手がけた補強工事の話をこのブログでまとめて書くことには少し抵抗がありますが、カテゴリーで分けて自分では区別させています。(耐震「ファイル」なのでそれで良いかなと)

最近は、上手に補助金を利用してもらいたいという気持ちから助成金や税金の特例についてあれこれ書きました。少しでも役立てば幸いです。

もちろん、耐震課外授業活動がこのブログでは主役ですから忘れずに書くつもりです。9月と10月は、おそらく授業を実施するので、できるだけ工夫して紹介したいと思っています。
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増築工事で利用したい助成金制度


以前にも書いたことがありますが、図をつくったので再度紹介しようと思います。

耐震補強工事の助成金や特例は、あくまで補強工事のときだけ利用可能と考える方もいるかもしれませんが、増築工事でも利用は可能です。ただし、増築部分に関する費用は対象外となります。

正確には、増築に伴い既存部分にも手を加える必要がある場合に利用可能というわけです。私も実際に利用したことがあります。

地元大井川町での工事でしたが、西側部分を一部解体して増築を行うといった工事で、既存部分に対して多少工事を行う必要があったため、その費用に対して、補助金を支給してもらいました。
大切なのは、申請書の作成です。いいかげんな書類では、役場も補助金を支給するとはいいません。

ちなみに平屋を2階建てに増築する場合、平屋部分に対しての耐震補強工事に利用可能です。この手の工事の場合は、まったく既存部分に手を加えないということはないと思われますので、一度検討されることをお勧めします。

<図の説明>
既存部分Aに対する補強工事に対して耐震補強助成金の申請を行う。
増築部分Bに対する工事に対しては申請対象外としなければならない。
ただし、補強後の総合評点(耐震性を示す数値)は、既存部分Aに増築部分Bを含めた状態のものとしなければならない。
(補強前は、既存部分のみの状態での総合評点)
既存部分Aと増築部分Bの間仕切壁については、既存部分として申請しても問題ないと思われます。(ただ、市町村によって考え方が多少違うかもしれません。)

<注意点>
補助金が利用可能かどうかは、依頼する建築士に相談の上、各市町村窓口で確かめた後に申請を行い工事を行うことをお勧めします。
前提として、補助金は工事着工前に申請するものなので、着工後や完成後に申請を行っても補助金は支給されません。
なお、申請費用についても事前に確認することも大切です。
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保有耐力診断法によるSDUの諸数値


今回は、どちらかといえば同業者向けの情報です。

私が補強でよく使うイーメタル株式会社のSDU(複合鋼板耐震壁)の基準耐力と基準剛性の数値を紹介します。

イーメタル http://www.e-mt.co.jp/

ただ、この数値は改訂された診断法(保有耐力診断法)で使用されるものなので、改訂前の診断法を採用されている方には関係ありません。

実は、この数値をイーメタルに書類で教えてもらうには時間がかかりました。実は、書類というのが重要で、耐震補強工事助成金申請の際にも添付しています。

別にSDUを宣伝するわけではありませんが、新しい耐震製品を使用する場合は、メーカー側にきちんと性能を保証する書類を求めることは大切だと思っています。カタログって意外と知りたいことは何も書かれていないことが多いです。どちらかといえばメーカー側が答えたくないと思うところまでどんどん指摘してはっきりさせていくことが大切ではないでしょうか。

SDU-W(複合鋼板耐震壁)
基準耐力:8.6(kN/m)
基準剛性:1130(kN/rad/m)
壁倍率:4.2(国土交通大臣認定取得)

SDU-F(仕口補強ダンパー)
基準耐力:1.8(kN/m)
基準剛性:208(kN/rad/m)
壁倍率(相当値※1):0.96

※1 壁ではない耐震要素ですので壁倍率相当値という表現

なお、使用の際は、再度メーカー側に数値を確認することをお勧めします。
写真は、SDU-W取付後を撮影したものです。
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