6月23日の「沖縄慰霊の日」を目前にして、ヤクザの言い掛かりともとれる沖縄靖国訴訟で原告側の敗訴が確定した。
法律論はともかく、常識のある国民なら誰でも納得のできる真っ当な最高裁判断である。
沖縄タイムス 社会 2012年6月15日 09時41分
肉親が靖国神社に無断で祭られているのは精神的苦痛だとして、遺族5人が同神社と国を相手に、神社所有の祭神簿から肉親の氏名抹消などを求めた合祀(ごうし)取り消し訴訟で、最高裁第2小法廷(竹内行夫裁判長)は14日までに、上告審として受理せず上告を棄却した。13日付。遺族側の敗訴が確定した。
同訴訟団と弁護団は14日、「人権侵害の現実から目を背けて形式的な判断を行い、司法の果たすべき役割を放棄し続ける最高裁に強く抗議する」との声明を発表した。
原告団長の川端光善さん(76)は「靖国への合祀は不名誉そのもの。残念の一言だ」と声を落とした。
川端さんは沖縄戦で当時47歳の母と18歳の兄を亡くした。「母は農家の主婦で軍とは一切関係ないのに軍属として合祀されている。名簿から名前を削り、その間違いを正そうとしただけだ」と語気を強める。その上で「靖国合祀は国に利用されることを意味する。合祀取り消しは、私にとっての戦後処理であり、その思いはずっと変わらない」と強調した。
同訴訟では、原告が訴えた沖縄戦の歴史が捏造(ねつぞう)され、援護法という国の政策で肉親が無断で合祀されたという事実について、一審、二審とも「原告の権利が侵害されたとは認められない」として、判断に踏み込まなかった。
池宮城紀夫弁護団長は「沖縄の歴史を踏まえた上で憲法違反を主張してきたが、最高裁が受理しないということは、沖縄戦の実相がまったく無視されたことになる。県民にとっても極めて遺憾な決定だ」と怒りをあらわにした。
同訴訟は2008年3月に提起。一審那覇地裁は10年10月「原告らの信教の自由の妨害を生じさせる具体的行為はなかった」として請求を棄却した。二審福岡高裁那覇支部は11年9月、合祀が沖縄戦の戦没者を冒涜(ぼうとく)するとの遺族側主張に対し、同神社の「教義や宗教的行為そのものを否定することにもつながりかねない」と判断して棄却。弁護団は、同判断が全国の同様な訴訟でも初めてで「合祀について踏み入ること自体が憲法上許されないとも読み取れる極めて不当な判決だ」と批判して同月、最高裁に上告していた。
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筆者の知人でこんなことを言う人がいた。
「遺族が嫌がるのに、何故靖国に遺骨を合祀するのか」
靖国訴訟や合祀の意味をよく知らない人の陥りがちな誤解である。
靖国神社への合祀といっても、お寺のように敷地内にお墓があったり 、納骨堂があるわけではない。
神社の霊璽簿に戦没者の氏名を記帳してあるだけだ。
原告側は霊璽簿から氏名を削除し合祀を取り消すよう求めていた。
これに対し、最高裁は「原告の権利が侵害されたとは認められない」と言う一審、二審の判決を認め、原告らの信教の自由の妨害を生じさせたという主張を却下した。
沖縄靖国訴訟と全国各地で行われている靖国訴訟の大きな違いは、「援護法」が絡むか否かである。
「援護法」と言われてもよく理解できない人が多いだろうが、一言でいえば沖縄靖国訴訟には金が絡んでいると言うことである。
>川端さんは・・・「母は農家の主婦で軍とは一切関係ないのに軍属として合祀されている。名簿から名前を削り、その間違いを正そうとしただけだ」
援護法の存在を抜きにしては、「軍とは一切関係ない農家の主婦」が軍属として靖国に合祀された意味は理解できない。
>「靖国合祀は国に利用されることを意味する。・・・・」と強調した
>原告が訴えた沖縄戦の歴史が捏造(ねつぞう)され、援護法という国の政策で肉親が無断で合祀されたという事実について、一審、二審とも「原告の権利が侵害されたとは認められない」として、判断に踏み込まなかった。
なかにはこんな疑問を投げかける知人もいた。
「なんで国は嘘をついてまで主婦や子どもまで軍属として靖国に祀るのか」
そう、これこそが「国による歴史の捏造と援護法」の関係、そして集団自決の軍命論争に関わる核心になる。
時は沖縄戦終結間際の1945年6月に遡る。
大田実海軍中将が自決の数日前に海軍次官へ送った「沖縄県民斯ク戦ヘリ」で有名な電文の結びの「県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」を実行するため、戦後厚生省がなりふり構わず行ったのが「援護法の拡大解釈」による主婦や子どもなど非軍属への援護金適用である。
国は大田中将の「沖縄県民に対して後世になっても特別の配慮をお願いする」という遺言を忠実に執行するため、あえて「歴史の捏造」をしたと言うことができる。
そして沖縄靖国訴訟では、原告側の重要証人が巨大ブーメランを放って「集団自決の軍命は捏造だった」と証言し、これまで沖縄タイムス、岩波書店などで綿密に構築した「集団自決軍命説」の虚妄を一瞬にして粉砕してしまった。
つまり「国の歴史捏造」とは、軍命は非軍属に対する援護金適用のための方便であるということを法廷の場で証言したのである。
法廷の場で自爆して果てた人物とは、「援護法」の研究では専門家と自認する石原昌家沖国大名誉教授のことである。
大江健三郎・岩波書店を被告とした「集団自決訴訟」では、石原教授は被告側の応援団として「軍命はあった」と論陣を張り、「集団自決」というより「強制集団死」と言うべきと主張していた。
「集団自決訴訟」で勝訴した勢いを駆って沖縄靖国訴訟の証人として法廷に立っては見たものの、「事実」と「イデオロギー」の狭間で判断を誤ったのか、つい「事実」を証言してしまった。
それが、「沖縄戦の歴史が捏造(ねつぞう)され、援護法という国の政策で肉親が無断で合祀された」と言うことになる。
翻訳すればこうなる。
「国は大田中将の遺言を守るため、援護法を拡大解釈し本来なら軍人だけに支給される援護法を、主婦や6歳以下の子どもにまで適用し、援護金を支給した。 適用の条件として軍に対する壕提供や食料提供の他に『軍命令による集団自決』も含まれたいた」
これが「国による歴史の捏造」の意味である。
従がって原告側が戦没者の冒涜云々を主張するなら、少なくとも長年にわたって受給してきた「援護金」の総額を叩き返してから、訴訟を起こすべきではないか。
「援護金」の非軍属以外への例外的支給は沖縄だけである。
国が行った善意の「拡大解釈」を享受し、カネだけは貰うが合祀は許せない・・・これではヤクザの言い掛かりと言われても仕方が無いではないか。
ヤクザ言い掛かりを訴訟にしているのが少数の反日左翼であることはその顔ぶれを見れば一目瞭然である。
最後に、筆者の知人、援護法の適用を受け靖国に合祀されていることを誇りに思っている人が、少なからずいることを申しそえておく。