さあ、期待の第3回で最終回。今回は第1回第2回よりも材料が多い。
 
 が、その材料は・・・
 
① 今年4月モロッコでの墜落事故で、海兵隊オスプレイの事故率は1.93に跳ね上がった
② 43機のオスプレイが「行方不明」の可能性が有り、事故隠しの恐れがある。
③ 通常のヘリにはあるオートローテーション機能が「ない」
④ 海兵隊ヘリの実績では双発ヘリが3~4年に1回「双発同時停止」の事象がある
⑤ オスプレイは操縦が難しい

これだけ。

 上記①は、事故が発生したんだから、実績としての事故率が「跳ね上がる」のは当たり前。その事故発生後の事故率でも、琉球新報社説( http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-194768-storytopic-11.html )も認めるとおり、空軍型CV-22の約1/7と言う低い事故率であり、海兵隊の平均的航空機の事故率よりも低い。そのことに触れずに「事故率が跳ね上がった」とだけ報じても「安全神話」は崩れまい。
 
 上記②は「実は43機のオスプレイが事故で失われ、闇に葬られていた!」となれば事故率急騰含めて大問題だろうが、43機の機体喪失事故は、相当数の死者負傷者を伴おう。それも含めて隠蔽となれば、それこそ特大問題だが、逆に言えば非現実的だ。
...
 いずれにせよ「事故隠しの可能性アリ」と言える程度で、「オスプレイ安全に対する疑義」と言うのさえ、はばかられよう。
 
 上記③は⑤共々古くて新しい問題。「オスプレイはチルトローター機。チルトローター機は固定翼機とヘリコプターの両方の特性を併せ持つ」。固定翼機には、逆立ちしたってオートローテーション機能なんてない。だからチルトローター機には、民間機としても(ボーイングにオスプレイ民間型を売り出す計画アリ)オートローテーション機能は要求されない。なおかつオスプレイでは双ローターがリンクしているので、片方のエンジンが動けば無事に飛行も、固定翼モード/ヘリモードの変換も、不時着も、出来る
 
 上記④は「国防総省の国防分析研究所(IDA)のレックス・リボロ元主任分析官」なる大層な肩書きの方の御卓見であり、当該記事のサブタイトルにもなっているが・・・「二つのエンジンが同時に止まる可能性」はそりゃ、あろうさ。普通に考えれば「一つのエンジンが止まる可能性の二乗」の低い確率ながら「ある」のだから、「二つのエンジン 停止例も」ってのは当たり前だ。
 で、その「双発エンジン同時停止」が「海兵隊の双発ヘリで3~4年に1回発生している」と、リボロ氏は言うわけだが、同じ事象がオスプレイに起きたとしても、それは「オスプレイの危険性が海兵隊双発ヘリ並みである」ことしか意味しない。
 で、「海兵隊双発ヘリの事故率」に、その「双発エンジン同時停止」の事例がどれほど寄与しているか、或いは「双発エンジン同時停止」の可能性で、オスプレイの事故率実績「1.93」が上がるのか、上がるとしたらどれぐらいか。そこが問題だろう。
 配備開始以来既に5年をオスプレイは経ているのだから「3~4年に1回」の事象は既に発生しているのかもしれない。そうならばオスプレイの事故率「1.93」は上がらないだろう。
 
 オスプレイが回転翼機モードにあってなおかつ双発エンジン同時停止が起きた場合は、オートローテーション機能があった方が良いこと。双発エンジン同時停止が起こりうる事象であること、には同意するが、リボロ氏の主張「オスプレイのオートローテーション機能の欠如は致命的」と断じるには、「双発エンジン停止の可能性を含めてのオスプレイ事故率の大幅増加」が必要だろう。逆にその「事故率大幅増加」が示されない限り、「オスプレイ安全神話」は崩れない。
 
 ⑤はやはり古くて新しい問題。オスプレイはチルトローター機で、固定翼機とヘリコプターの両方の機能を併せ持つ。「操縦が難しい」のは当たり前で、それを克服したからこそ量産配備から5年の実績を持つ。
 
 以上からすると・・・少なくとも当該特集記事では、オスプレイの「安全神話」は崩れていない。
 
 
>  実戦配備の際には、何度もテストを繰り返して改良が重ねられてきた。
> しかし、それでも墜落事故は起きている。

と、当該社説は締めるが、オスプレイは新幹線ではないし、新幹線並みに安全な航空機はない。

 オスプレイは軍用輸送機であり、軍用輸送機としての安全を確保していれば事足りる。それは、新幹線のような「事故率ゼロ」ではない。