TABI天使日記

天使になったカナダのアジリティ犬と、ママ・パパの日常

白黒写真

2007-03-15 16:02:03 | インポート
夏のような一日。

夫が休みなので、ちょっと遠出して眺めのいいイタリアン・レストランで
昼食。それから散髪したいという彼につきあい、床屋へ。

こっちに来てから、なかなか気に入った床屋が見つからないらしく、毎月
あちこちを転々としている。どこもスピーディーで、パッパッと刈り上げて
一人五分くらいで済ませてしまう。シャンプーも髭剃りもないし(エイズの
問題が出てから、この州の床屋では一切剃刀の使用が禁止になったのだそう)
もうバリカン一つでインスタントな仕上げだ。

夫は昔ながらの丁寧な床屋が好きなのだ。
あちこち聞いて回って、今日行ったのはうちから車で30分くらいの下町の
床屋。数十年前は繁華街だったかもしれないが、今はさびれてしまった風の
商店街の小さな店。椅子は三つあるが、お爺さんが一人でやっている。
お客さんもみな、年配で杖をついたお爺さんばかり。

壁にはマリリンモンローとかジョンウェインとかの往年の映画スターの白黒
写真がたくさん。日本でいったら、原節子とか佐分利信とかそんな時代か。
建物は古く、ラジオや道具もかなり年季がいったものばかりだが、しかし、
すみずみまで綺麗に掃除が行き届き、不潔感が全くない。床屋のお爺さんも、
年はとっているが手元はしっかりして仕事はテキパキしている。

なんだかノーマンロックウェルの絵のような床屋。
こんな場所が、今のアメリカにいくつ残っているだろう。お爺さんは、人懐こく
話しかけながら、とても丁寧に夫の頭を散髪している。仕上がりは、やはり
今風ではなくビリーワイルダーの映画を思い出させる古風なかんじだが、
それはそれでよく似合っている。

夫もここが気に入ったようだ。私もなんだか、昔の映画を観たような懐かしさ
で一杯になった。古い白黒写真の中の、古き良き時代の床屋。またおつきあいで
行ってみたい。