TABI天使日記

天使になったカナダのアジリティ犬と、ママ・パパの日常

Sanctity of life

2007-03-25 15:11:23 | インポート
TABIの検査結果を聴きに行く。

病院は2時半に閉まるので、夫が帰宅してすぐ車で出かけた。
抗体価、CBC、CP、検便、そして組織検査も全て正常。脂肪のコロコロは
放っておいても平気とのこと。全体的にとても健康で、なんの問題もなしとの
合格点をいただき、ほっと安心。良かったね、TABI。

閉まる直前に滑り込みだったので私たちが最後だったが、待合室には同年代くらい
の夫婦がいた。TABIがご挨拶にいくと、妻の方が「まあフレンドリーでかわいい
子ね、うちの犬もこんな風なのよ」となでなで。彼らは、今日はその犬を
安楽死する予約で来たのだという。

その子は数日前から食べなくなった。検査をしたところ、助かる見込みのない
ガンだとわかった。11歳だという。だから彼女の目は真っ赤だったのか。
夫の方はサングラスをかけていてわからないが、きっとやはり泣いたあとが
あるに違いない。犬はすでに、獣医と助手と共に診察室の一つに入っている。
ドアが開いたときに、かわいい肉球模様のベッドに寝かされた赤毛のゴールデン
レトリバーの体が見えた。飼い主はとても見ていられないので、待合室で
待つことにしたらしい。

夫の方がドアのガラス窓から中を覗き、「今薬が入ったよ」とつぶやくように
言う。それから助手がドアを開け、夫婦は最後のお別れをしに入っていった。

私はこれまで人間や動物の死体は見たことがあるが、生き物が最後の息を
引き取る現場に居合わせたのは初めてである。その犬を見たわけでないが、
壁やドアで仕切られていたとはいえ、10歩も離れていないところに、生と
死の境を越えようとする命があったのだ。

病院へ一歩足を踏み入れた時に、私はいつもと違う空気を感じた。消毒薬の
臭いとか動物臭とかではなく、なんとも形容し難い、経験したことのないニオイ
であった。あれが、死のにおいというものなのか。おどろおどろした怖いもの
では決してなく、むしろ厳かな、神聖とも言うべき不思議な空気であった。

11年の楽しい思い出を残し、今その子の魂は苦痛のない世界にある。
どうぞ安らかに。