TABI天使日記

天使になったカナダのアジリティ犬と、ママ・パパの日常

豊かさの影で

2001-06-22 13:48:13 | インポート
午後5時。
市内のショッピングセンター地下にある噴水広場で、私は人を待ちながら
プレゼンテーションの原稿に目を通していた。

中学生の少年3人組がエスカレーターで降りてくる。
一人はスラッシュ(かき氷とジュースを混ぜたようなもの)を飲んでいた。
そして私のそばを通りざま、2メートルほどの距離から1/3ほど中身が残った
コップを私に向かって投げつけた。
あたかも私がゴミ箱であるかのように。

3人組みはその後、1ドルショップ(日本の100円ショップに相当)に入り、
数分して出てきた。その様子を見て、
「あ、あいつら万引きしてきたな」
と、ピンときた。

さらに彼らは、噴水の前にかがみこんで水の中に両腕をつっこんだ。
「トレビの泉」式に、人々は噴水にコインを投げる。少年たちは、
底に沈んだコインをかき集めると、ゲームセンターの中に消えた。

とまあ、こんな悪ガキはどこにでもいる。
だが、この少年たちはいわゆるストリート・キッズ、つまり穴のあいたジーパンに
ヨレヨレのTシャツ、貧民街で育って小遣いがないから盗みを働く輩ではない。

ナイキの新モデル、ブランド物の服、きれいにトリミングした金髪、
ミルク色の肌。どこから見ても裕福なおぼっちゃんたちだ。
親はミドルクラス以上(日本の「中流」とは異なる)、高級住宅街に住み、
週末は湖畔の別荘で過ごし、バカンスは地中海クルーズ。
少年たちは有名私立校に通い、16歳の誕生日には新車をプレゼントされるのだろう。

金に困っていない彼らが、くだらない軽犯罪を犯し続ける。
しかも、この3人組みは終始無言、能面のような無表情なのだ。

狂っている。
一見理想的な家庭に育ち、学校でも家でも「良い子」を演じる彼らの心の中で
密かに悪性腫瘍が増殖している。親も教師も気づかぬまま。

そして彼らは、将来親と同じように弁護士や実業家になり、高級住宅街に家を
構え、幸福そうだが実はハリボテのように空虚な家庭を築くのだろう。
その子供たちもまた、空しさを紛らわすために影の世界でチンピラごっこを
続けるのだ。

つかまっても平気。パパが優秀な弁護士をつけて、何事もなかったことに
してくれる。

豊かさの影で育つ悪… カナダの闇の部分は、ここにある。