<伊和神社 いわじんじゃ>
播磨国に残る古い郷土史『播磨国風土記』の中に、
新羅系の渡来神とされる天日槍(アメノヒボコ)が、
伊和大神(大国主神)と土地を奪い合って敗北し、
但馬国の出石に撤退したという話が載っています。
一般的には、アメノヒボコが象徴する新鋭の製鉄集団と、
大国主神が象徴する古豪の製鉄集団との戦い、
などと解釈されることが多いようですが、
これを「生贄」を持ち込んだ部族と、
「生贄」を嫌う部族との争いと想定すると、
神話に潜む別の暗示が見えてきそうです。
ちなみにですが、先日の「みかん」の件と同様、
出雲および山陰一帯には、なぜかアメノヒボコに
縁する地名がほとんど見られないと聞きます。
もしかすると、スサノオがオロチを退治した一件は、
奥出雲の砂鉄を巡る攻防を表しただけでなく、
「播磨から来た神」が持ち込んだ生贄習俗を
淘汰するための戦いだったのでしょうか……。
仮に、奥出雲の人々が「新羅」に敵意を抱き、
「新羅」の習俗を遠ざけようとしていたなら、
クシナダヒメを救おうとするスサノオの行動が、
より深みを増すようにも感じられますね。