<栗枝渡八幡神社 くりしどはちまんじんじゃ>
栗枝渡八幡神社に鳥居がない理由、
それは熊野の自然信仰の場と同様、
もともと空神という名の「土着神」が、
祀られていたからではないでしょうか。
栗枝渡八幡神社の境内へと続く石段の
一番下に立って上方を見上げると、
わずかに社殿の屋根がのぞくだけで、
視界を占めるのは「森の木々」です。
社殿の裏手には、石垣の跡こそないものの、
山自体をご神体として拝む形式は、
素朴な民間信仰の名残を思い出させます。
また、境内の数ヶ所に置かれた
小さな祠や石積みの祭壇の前には、
「竹の鳥居」が設えられており、
よくよく周囲を見渡してみると、
木と木の間を結ぶようにして、
境内の入り口にも細いしめ縄がかけられていました。
恐らくこれが、鳥居の代わりであり、
結界の機能を果たしているのでしょう。
「聖と俗」の境界が見える人たちにとっては、
このような簡素な鳥居で十分だったのかもしれません。