天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

梅花香5

2019-02-24 12:47:07 | 小説
この神社の境内にはたった一本だけ

梅の木がある。古い梅の木で、幹には

いくつものこぶがあった。この季節に

なると白梅が咲き、えも言われぬ香り

が漂う。ごつごつとした幹と可憐な白

い花の取り合わせが清吉の目には好ま

しく映った。毎年、彼はここの梅の花

を見るのを楽しみにしていた。梅の木

の下には床几が置いてあった。清吉は

木の箱を下ろした。床几にゆっくりと

座る。梅が優しく香る。清吉が梅の花

を見上げた瞬間、激しい風が巻きお

こった。境内の砂が舞い上がる。清吉

は慌ててふところから手ぬぐいを出し

て顔を覆う。すぐに強風は止んだ。彼

は手ぬぐいを顔から外す。目の前に、

女が一人立っていた。


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