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寡黙堂ひとりごと

詩吟と漢詩・漢文が趣味です。火曜日と木曜日が詩吟の日です花も酒も好きな無口な男です。

唐宋八家文 柳宗元 三戒 序

2014-12-06 08:50:55 | 唐宋八家文
吾恆惡世之人、不知推己之本、而乘物以逞。或依勢以干非其類、出技以怒強、竊時以肆暴。然卒迨于禍。有客談麋驢鼠三物。似其事、作三戒。

臨江之麋
 臨江之人、畋得麋麑。畜之入門、羣犬垂涎、揚尾皆來。其人怒怛之。自是日抱就犬習、示之使勿動、稍使與之戲。績久、犬皆如人意。麋麑稍大、忘己之麋也、以爲犬良我友、抵觸偃仆狎。犬畏主人、與之俯仰甚善。然時啖其舌。三年麋出門、見外犬在道甚衆、走欲與爲戲。外犬見而喜且怒、共殺食之、狼藉道上。麋至死不悟。

三戒 序
 吾恒に世の人の、己の本(もと)を推すを知らずして、物に乗じて以って逞しゅうするを悪(にく)む。或いは勢いに依りて以ってその類に非ざるを干(おか)し、技を出して以って強を怒り、時を竊(ぬす)みて以って暴を肆(ほしいまま)にす。然れども卒(つい)に禍いに迨(およ)ぶ。客有りて麋(び)驢(ろ)鼠(そ)の三物を談ず。その事に似たれば、三戒を作る。

臨江の麋(び)
 臨江の人、畋(こう)して麋麑(びげい)を得たり。これを畜(やしな)いて門に入れば、群犬涎(よだれ)を垂らし、尾を挙げて皆来る。その人怒りてこれを怛(おどろ)かす。是より日々抱きて犬に就きて習(な)れしめ、これに示して動くこと勿(な)からしめ、稍(ようや)くこれと戯(たわむ)れしむ。
 久しきを積み、犬皆人の意の如し。麋麑稍く大にして、己の麋なるを忘れ、犬は良(まこと)に我が友なりと以為(おも)いて、抵触し偃仆(えんぶ)して益々狎(な)る。犬主人を畏れ、これと俯仰すること甚だ善し。然れども時にその舌を啖(くら)う。
 三年にして麋、門より出で、外犬の道に在るもの甚だ衆(おお)きを見、走りて与に戯れを為さんと欲す。外犬見て喜び且つ怒り、共に殺してこれを食らい、道上に狼藉(ろうぜき)たり。麋は死に至るまで悟らず。


畋 狩り。 麋麑 馴れ鹿(トナカイの類)の子。 偃仆 ころげる。 俯仰 俯くことと仰ぐこと、ここでは起居動作を一緒にする。 舌を啖う 舌なめずりする。 狼藉 とり散らかす。

三戒 序文
私はいつも世の中の人が、自身の本分をわきまえないで、他を頼り気ままに振舞っているのを憎んでいた。或る人は勢いに乗じて親しくもない人のところにおしかけたり、稚拙な能力を過信して、優れた人に腹を立てたり、あるいは隙を窺って乱暴の限りをつくす。しかし結局は禍いに遭ってしまうのだ。
 客が来て馴れ鹿と驢馬と鼠の話をしていった。その三者が世の人の様に似ているので戒めとした。

臨江の馴れ鹿
 臨江の人、狩りをして馴れ鹿の子を連れ帰った。これを飼おうとして門を入ると犬たちが涎を垂らし尾を振って寄ってきた。その人は犬たちを叱りつけて手出しをしないよう厳しく言い聞かせた。それからはこの小鹿を抱いて、犬たちと慣れさせた。やがて犬たちも主人の命令を守るようになり、鹿も大きくなって鹿であることを忘れて犬たちと同じと思い、戯れ転げまわるようになってじゃれて転げまわっていた。犬たちは主人をおそれて鹿と一緒に遊んだ。しかしときおり舌なめずりをするのであった。
 三年経って馴れ鹿が門の外に出たとき、よその犬が道にたくさんいるのを見て遊びたいと思って走り寄った。その犬たちはこれを見て喜びかつ猛りたってこの馴れ鹿を殺して道の上に喰い散らかした。馴れ鹿は死ぬまでどうしてこうなったか理解することができなかった。

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