將相多得人。魏元忠・婁師・狄仁傑・姚元崇・皆名相。宗亦顯於朝。師寛厚愼、犯而不挍。弟除代州刺史。師謂、兄弟榮寵過盛、人所疾也。何以自免。弟曰、自今人雖唾其面、拭之而已。師愀然曰、此所以爲吾憂也。人唾汝面怒汝也。而拭之、則逆其意而重其怒矣、唾不拭自乾、當笑而受之耳。師毎薦仁傑。而仁傑毎毀師。曌語仁傑曰、朕用卿、師所薦也。仁傑退而歎曰、婁公盛。我爲所容久矣。
将相多く人を得たり。魏元忠・婁師(ろうしとく)・狄仁傑(てきじんけつ)・姚元崇(ようげんしゅう)、皆名相なり。宗(そうえい)も亦朝(ちょう)に顕わる。師徳は寛厚清慎にして、犯せども挍(こう)せず。弟、代州の刺史に除せらる。師徳謂う、「兄弟(けいてい)、栄寵過盛(えいちょうかせい)なるは、人の疾(にく)む所なり。何を以ってか自ら免(まぬか)れん」と。弟曰く、「今より、人、某(それがし)の面に唾すと雖も、之を拭わんのみ」と。師徳、愀然(しゅうぜん)として曰く、「此れ吾が憂いをなす所以なり。人、汝が面に唾するは、汝を怒ればなり。而るに之を拭わば、則(すなわ)ち、其の意に逆らって、其の怒りを重ねん。唾は拭わざるも、自ら乾かん、当に笑って之を受くべきのみ」と。
師徳、毎(つね)に仁傑を薦(すす)む。而るに仁傑は毎に師徳を毀(そし)る。曌(しょう)仁傑に語(つ)げて曰く、「朕、卿を用うるは、師徳の薦むる所なり」と。仁傑、退いて歎じて曰く、「婁公は盛徳なり。我れ容(い)るる所となること久し」と。
犯して挍せず 仕掛けられても相手にならないこと。 愀然 心配そうな様子。容 ゆるされること。
将軍や大臣も逸材が集まった。魏元忠・婁師徳・狄仁傑・姚元崇等である。宗もまた朝廷で抜きんでていた。とりわけ婁師徳は寛大にして温厚、他人からのいわれない干渉にも、一向に取り合わないようにしていた。弟が代州の刺史に任命されたとき、師徳が言うには、「兄弟がそろって栄達して寵を受けるのは、人の嫉みを買うもとである。どのようにこれを避けるつもりか」と。弟が答えて、「たとえば人が私の顔に唾を吐きかけても、ただこれを拭い去るだけにいたします」と言った。師徳は、「だから私が心配なのだ、人が唾を吐きかけてくるのは、そなたに対して怒っているからだ。それなのにこれを拭ってしまったら、人の怒りは消えず、かえって増すことになるだろう。唾は拭わなくとも自然に乾く、だから笑ってこれを甘受すべきである」と諭した。
師徳はつねに仁桀を武后に推薦していた。ところが仁桀はいつも師徳を誹謗していた。あるとき武后が仁桀に言った。「そなたを登用したのは師徳が強く薦めたからだ、知っていたか」と。仁桀は退出すると歎息して言うには「婁公の徳は測り知れないほどだ。私は長いあいだ非礼を赦されていたのだなあ」と。
将相多く人を得たり。魏元忠・婁師(ろうしとく)・狄仁傑(てきじんけつ)・姚元崇(ようげんしゅう)、皆名相なり。宗(そうえい)も亦朝(ちょう)に顕わる。師徳は寛厚清慎にして、犯せども挍(こう)せず。弟、代州の刺史に除せらる。師徳謂う、「兄弟(けいてい)、栄寵過盛(えいちょうかせい)なるは、人の疾(にく)む所なり。何を以ってか自ら免(まぬか)れん」と。弟曰く、「今より、人、某(それがし)の面に唾すと雖も、之を拭わんのみ」と。師徳、愀然(しゅうぜん)として曰く、「此れ吾が憂いをなす所以なり。人、汝が面に唾するは、汝を怒ればなり。而るに之を拭わば、則(すなわ)ち、其の意に逆らって、其の怒りを重ねん。唾は拭わざるも、自ら乾かん、当に笑って之を受くべきのみ」と。
師徳、毎(つね)に仁傑を薦(すす)む。而るに仁傑は毎に師徳を毀(そし)る。曌(しょう)仁傑に語(つ)げて曰く、「朕、卿を用うるは、師徳の薦むる所なり」と。仁傑、退いて歎じて曰く、「婁公は盛徳なり。我れ容(い)るる所となること久し」と。
犯して挍せず 仕掛けられても相手にならないこと。 愀然 心配そうな様子。容 ゆるされること。
将軍や大臣も逸材が集まった。魏元忠・婁師徳・狄仁傑・姚元崇等である。宗もまた朝廷で抜きんでていた。とりわけ婁師徳は寛大にして温厚、他人からのいわれない干渉にも、一向に取り合わないようにしていた。弟が代州の刺史に任命されたとき、師徳が言うには、「兄弟がそろって栄達して寵を受けるのは、人の嫉みを買うもとである。どのようにこれを避けるつもりか」と。弟が答えて、「たとえば人が私の顔に唾を吐きかけても、ただこれを拭い去るだけにいたします」と言った。師徳は、「だから私が心配なのだ、人が唾を吐きかけてくるのは、そなたに対して怒っているからだ。それなのにこれを拭ってしまったら、人の怒りは消えず、かえって増すことになるだろう。唾は拭わなくとも自然に乾く、だから笑ってこれを甘受すべきである」と諭した。
師徳はつねに仁桀を武后に推薦していた。ところが仁桀はいつも師徳を誹謗していた。あるとき武后が仁桀に言った。「そなたを登用したのは師徳が強く薦めたからだ、知っていたか」と。仁桀は退出すると歎息して言うには「婁公の徳は測り知れないほどだ。私は長いあいだ非礼を赦されていたのだなあ」と。
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