―中略―「政の汚辱を蒙り、自から市販の間に棄てし所以のものは、老母、幸いに恙(つつが)無く、妾、未だ嫁せざりし為なり。親、既に天年を以て世を下り、妾、已(すで)に夫に嫁す。嚴仲子、乃ち察して、吾が弟を困汚(こんお)の中より挙げて、これに交わり、沢(たく)厚し。奈何にすべき。士は固(もと)より己を知る者の為に死す。今、乃ち妾尚お在るの故を以て、重く自ら刑し、以て従うを絶つ。妾、其れ奈何んぞ身を没するの誅を畏(おそ)れて、終に賢弟の名を滅ぼさんや」と。大いに韓の市の人を驚かし、乃ち大いに天に呼(さけ)ぶこと三たび、卒に於邑(おゆう)悲哀して、政の旁に死す。
晉・楚・齊・衛、これを聞き、皆曰く、「独り政の能あるのみに非ざるなり。乃ち其の姉も亦た烈女なり」と。
さきに政をして誠に其の姉に濡忍の志なく、骸を暴すの難を重しとせず、必ず険を絶(わた)ること千里、以て其の名を列ね、姉弟倶に韓の市に僇(りく)せらるるを知らしめば、亦た未だ必ずしも敢えて身を以て嚴仲子に許さざりしなり。嚴仲子も亦人を知りて能く士を得たりと謂うべし。
市販 市井に商う 沢 恩沢 従う 累が及ぶこと 濡忍 ぐっとこらえる
姉にこらえる気持ちが無く、死体がさらされる災難をかえりみず、遠路の労もおかして姉弟して韓の市で死ぬことになったのだが、もし聶政がこうなることを予見していたら嚴仲子に身を許さなかったろう。嚴仲子もよく人を識って、よく勇士を得たというべきである。 終わりに司馬遷の思いが挿入される。
-史記刺客列伝終りー
晉・楚・齊・衛、これを聞き、皆曰く、「独り政の能あるのみに非ざるなり。乃ち其の姉も亦た烈女なり」と。
さきに政をして誠に其の姉に濡忍の志なく、骸を暴すの難を重しとせず、必ず険を絶(わた)ること千里、以て其の名を列ね、姉弟倶に韓の市に僇(りく)せらるるを知らしめば、亦た未だ必ずしも敢えて身を以て嚴仲子に許さざりしなり。嚴仲子も亦人を知りて能く士を得たりと謂うべし。
市販 市井に商う 沢 恩沢 従う 累が及ぶこと 濡忍 ぐっとこらえる
姉にこらえる気持ちが無く、死体がさらされる災難をかえりみず、遠路の労もおかして姉弟して韓の市で死ぬことになったのだが、もし聶政がこうなることを予見していたら嚴仲子に身を許さなかったろう。嚴仲子もよく人を識って、よく勇士を得たというべきである。 終わりに司馬遷の思いが挿入される。
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