夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

藤袴

2008年10月03日 13時13分04秒 |  気になる詩、言葉


なに人かきてぬぎかけし藤袴
      くる秋ごとに野べをにほわす
           古今集
           としゆきの朝臣

美しい美女が野辺に来て、泣きながら死んでいった。その後にこの藤袴が生えてきたということが広く知られていまして、古今や新古今の藤袴の詩はこのことを念頭においているのですね。

   
藤袴、秋の七草のひとつ。
最近、藤袴をあまり見ません。それでベランダ用に一鉢求めてまいりました。
まだ、花が開く寸前です。
このころが初々しくってよいですね~
なんてことを言うから、夜道が歩けなくなる。
怖い日本になったもんですね~


もともとは中国や朝鮮の原産だと聞きました。
万葉集には憶良の七草の詩以外には見当たらないのだそうで、当時はまだ一般的ではなかったのだろうというようなことを言う人もあります。

万葉集の少し前の刊行である日本書紀には藤袴について記載があるのだそうですけど、確かめてはいません。私の持っている日本書紀のテキストは、あの漢字の羅列で始まっていて、ちょこちょこと訳がついているのですけど、その訳もオリジナルに忠実にとばかり、読みづらいことおびただしいもの、見ていると頭が痛くなる。
岬のどこかにおいてあって、もうずいぶんと手にしていない。漢字には弱いのです。だから万葉集も万葉仮名のものはできるだけ見ないようにしていますけど、そうも行かないときもあったりして、、、泣きますね~
いずれにしても、薬用として日本に輸入され、栽培されたという記述も見ましたけど、日本薬局方を見ても藤袴は見当たりませんでした。

藤袴には香りがついて回りますが、そのままでは匂いません。
葉をとって少し乾かしてみてください。
藤袴の匂いがすると思います。


ところでこの藤袴。今まで2回、日記に取り上げました。
一つは、同じ古今集の紀貫之の「宿りせしひとの形見か藤袴」を紹介したもので2006年の11月7日にアップしています。

もう一つは、漢詩ですが、やはりこの年の11月1日に「十三夜  片見月」という日記の中に、漢の武帝(劉徹)の秋風辭を紹介していますけど、この中に藤袴(蘭、、日本ではラニと呼ばれています)が出てきます。
ジャンプするのは面倒といわれる方に、秋風辞を再度載せておきますね。

秋風起兮白雲飛
草木黄落兮雁南歸
蘭有秀兮菊有芳
。。。。。。
歡樂極兮哀情多
少壯幾時兮奈老何

そして、例の長崎弁の訳;

見んしゃい、白か雲が空ば流れて
草葉は黄色にあせていき
雁も南へ飛んで行きよるやろが

庭には藤袴が頂花をつけ
菊の香りが満ちてくる
。。。。。
楽しかことばやりつくせば、後は悲しかことばかりたい
溌剌と楽しかった若い日は夢んごと短こうて
長~い、長~い、年寄りの日が続く
なんばせぃちゅうんかな~


ちなみに、この日記では自作の詩もご披露していたんですよ。

月に一人対面し曲を献ず
霓裳羽衣闇に広がる
秋風は酒を震わし
菊香目覚める
     風車

ボクちゃん、昔は天才だったんだな~


よく似た花が野山にありますが、藤袴の葉っぱは対生し、下葉は三つに分かれています。下の写真ではあまりはっきりしませんね。