本澤二郎の「日本の風景」(4827)

<アジア・東京にNATO事務所はいらない=戦争誘引・仏政府の正論>より、転載させて頂きました。

 パリからいいニュースが届いた。対中接近を図るフランスのマクロン大統領は「東京の(欧米軍事同盟の)NATO事務所開設に反対」との意向を示した。

EU諸国を代表した格好である。ワシントンと東京の野望を打ち砕いたものだ。

 もしも、岸田とバイデンの野望が実現すれば、世界の軍事危機が東京・アジアにも押し寄せてくる。東京がテロの震源地になりうる。マクロン外交は岸田やバイデンと違う。高く評価したい。

 

<ワシントンの暴政に屈しないフランス均衡外交は独メルケル流か>

 正に地球を俯瞰するパリ外交を見せつけた格好でもあろう。第二次世界大戦後のドゴール外交を彷彿させる!それはアメリカ第一主義に屈しないフランス外交でもある。

 マクロンはトランプに屈せず、バイデンにも屈しない。孤立化する中国に接近することの政治経済的な利益は大きい。日本の右翼主義と異なる。アメリカ依存のEUから、自立するEUの安全保障論を展開しているのだ。ワシントンのポチに徹し、非戦の政治外交を求める憲法を保持しながら、いまだ日米安保にぶら下がり、アメリカのポケットに甘んじる日本を、世界各国は信頼も尊敬もしないだろう。王制を革命で打倒したフランス国民の誇りを体現している。思い出すと、政界随一の英語使いの宮澤喜一は、英語を口にしないフランス首脳を想定して、フランス語の家庭教師を呼んでフランス語を学んでいた。ちなみに戦後の日米外交の生き証人でもあった宮澤は、日本国憲法を体現する外交に徹し、ワシントンにおもねるような外交はしなかった。護憲リベラルの人だったし、岸田に薫陶した政治家だったのだが。

 

<財閥・右翼日本会議の野望に釘を刺したフランス>

 日本国民はまるで羊の群れのようで悲しい限りだが、政治家は羊であってはならない。ワシントンの首輪をはめてアジアの覇権国になろうとしている。利権アサリの財閥と極右の日本会議・神道カルト教団は、過去に盲目である。現在も未来も盲目であることを演じている。

 「台湾有事」なる言動を発して、ワシントンを巻き込んで緊張をまき散らす反共主義者の罠にはまって恥じない。そこにマクロンがパリから釘を刺したことになる。先のマクロン・習近平の会談を踏まえたものだろう。

 

<中国から日米企業撤退がEU諸国に光明か>

 気が付くと、日米の中国からの企業撤退は呆れてモノも言えない。14億人の消費者の存在を忘却している。先には韓国の中道政権に対して、安倍晋三内閣は、経済面でとことん締め上げて、韓国経済を混乱させた。

 韓国に右翼政権が誕生すると、日本財閥に屈した韓国財閥の意向が政権に反映されるや否や、日韓関係が正常化しつつある。日本軍国主義の象徴である旭日旗の海上自衛艦を受け入れてくれたとはしゃぐ日本人右翼の気が知れない。36年間の植民地支配と従軍慰安婦と強制労働にしっかりと向き合わない財閥と日本会議・清和会に屈する韓国民が多数派になることはないだろう。

 

 ついでながら、慰安婦を象徴する少女像建立計画が東京でも持ち上がったことを紹介したい。侵略のシンボルの福沢諭吉研究の第一人者の安川寿之輔、在日歌人の朴貞花両名らが決起した。憲政記念館もしくは日比谷公園内に設置すればいいだろう。歴史の教訓を忘れないシンボルとなる。日本会議の出方次第で実現する。

 

 目下の中国は大混乱のさ中で、人民の苦悩がひしひしと伝わってくるが、その一方で西安などの観光地は元気を取り戻している。強権主義と人権弾圧を改めれば、北京は再生可能であろう。プーチンとゼレンスキーの争いをやめさせる鍵が習近平にかかっている。マクロンもそう判断している。EU諸国の対応はしたたかで、ワシントンの首輪など相手にしない。

 

<マクロンは内政で苦戦しているが外交で得点>

 年金問題で悪戦苦闘しているマクロン政権。フランス国民はそれに立ち上がっている。ほどそれが悪化してしまっている裏返しだ。

 財政健全化はどこの国も苦労している。アメリカもそうだ。どこの国もそうだが、日本はそれでも国債をじゃぶじゃぶ発行して、更なる財政破綻に突っ込んでいる。すでに借金は1945年当時のものだ。円が急落して財閥と株屋がぼろ儲け、民衆は物価の急騰で塗炭の苦しみを押し付けられている。

 それでも羊の群れは耐えている。財閥と極右の傀儡政権をヨイショする言論界と死に体の野党が支えている株価暴騰の日本である。バブル崩壊目前ではないか。

 

 それでも憲法を除外する極右片肺政権に日本人は殺されていくしかないのか。「外交はバランス」をマクロンは教えているのだが。霞が関の官僚どもは腐りきっている!

2023年6月7日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)