「立憲民主党が野党第一党ではムリ!だとしたら…」明石市で革命を起こした泉房穂がリアルに見つめる「政権交代へのロードマップ」
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「暴言王」だけど市民には大人気で、その発言が中央政界にまで影響力を持っていた泉房穂前明石市長が、市長を辞めてこれからどんな動きをするのかに注目が集まっている。その実績とリーダーシップから、「総理大臣になってほしい!」と切望する国民もいる。国政の複雑なシステムを考えるとそれは不可能だと思いがちだが、実はそうではない。小選挙区制の特徴は、「変わるときは一気に変わる」こと。強烈な風が吹けば、泉房穂総理の誕生は、けっして夢物語ではない。
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たとえば、橋下徹氏と泉氏の連携が実現したら……自民党執行部がいまいちばん恐れているのは、それかもしれない。話題の新刊『政治はケンカだ! 明石市長の12年』より抜粋してお届けする連載第9回。
連載『政治はケンカだ! 』第9回後編
前回記事【日本は「お上主義」が強すぎる…泉房穂前明石市長がぶち上げる「新・日本改造計画」の中身】
政権交代は次の次、と言う野党第一党はいらない
鮫島 今日は政権交代への道筋を考えましょう。野党が知事や市長として成果を上げた人を総理大臣候補に担いで総選挙を戦うことはできます。当選回数や大臣経験よりも、自治体のトップとして何を成し遂げたのか、たとえば人口を増やして税収を伸ばしたという実績を掲げて「この街の人々をこれだけ豊かに、幸せにしたこの政治家に、国の舵取りを任せてみましょう。これが私たち野党の提案です」と有権者に向かって訴えれば、実現できるかどうかよくわからない公約を並べるよりも、はるかに説得力が増すでしょう。
知事や市長の経験者を総理大臣候補に担ぐのは、そのリーダーの実績や能力を可視化してリアリズムを高めるという点で、今の選挙制度の中で野党が取りうる最も効果的な選挙戦略ではないでしょうか。
泉 大いにあり得る話じゃないでしょうか。
首長が国会議員と違う点は、有権者を向いていること。もちろん、国会議員も選挙で選ばれるわけですが、実際に彼らが見ているのは派閥の動向だったり、業界団体だったりして、国民のことを見ているようで見ていません。
でも、市長や知事は市民・県民を見るのが仕事ですし、自然と市民・県民を気にして仕事せざるを得ない。かつ、最終決定権を持っていますから、リスクも含めて自分が決断して権限を行使するしかない。それで実績を上げたのならば、一定のふるいにかけられているわけです。有能な首長経験者は、総理大臣の適性があると言えるでしょう。
大阪府知事だって所得制限の撤廃を主張し始めてるし、東京都知事も子育て支援の方向に舵を切っている。「えっ」とみんなが驚くような方針転換も、できてしまうのが首長です。そりゃあ、全員が賛成な政策などないから「ばら撒き」と批判されることもあるし、「財源どうするんだ?」と追及されることもあるけど、なんとかするんです。どこかに嫌われたり怒られたりしても、やりきる。それが政治です。
個人的な好き嫌いは置いておいて、権限を使って方針転換を示す首長が出てきたことは嬉しいし、少なくとも、ずっと永田町にいる国会議員よりは、国のリーダーとしてふさわしいでしょう。だって、リスクを伴う決断を下した経験があるわけですから。
そういう意味で、与党と野党が首長経験者を担いで選挙を戦うというのは、理にかなっていると言えます。
鮫島 この新しい選挙の提案は、与党である自民党からは絶対に出てきません。新しい政治文化をもたらすのは、いつだって挑戦者たる野党なんです。
政治が停滞しきっているいまこそ、実は野党にとってチャンス。水と油の野党が共闘するための唯一の方法は、誰にとっても説得力のある強力な総理候補を立てること。みんなを納得させられるその総理候補の条件は「実績」のみです。どこでもいいのですが、とにかくどこかの自治体で行政手腕を発揮して結果を残した人物。「私たち野党が目指すモデルがここにある。この人の行政手腕を国政の場で発揮させてみましょう」と、有権者を説得できる人物です。
これが可能になれば、色んな違いを乗り越えて野党が手を組むことができる。党首ではなく、その時に一番実績を上げている自治体の首長を担ぐ。「今回の選挙は、この人を総理大臣にするために手を結びます」と。そういう形の与野党一騎打ちこそ、二大政党政治が用意した、これからの闘争のあり方なのではないかと考えます。
だって、「政権交代を目指すのは次の次」とか言ってる野党第一党の党首なんか担いだって、絶対に勝てません。もともと「やって見せることができない」のが野党の弱みなんだから、自治体の首長経験者を担ぐことは、その弱みをカバーすることにもなる。
だからこそ、「明石市でやって見せた泉さんに国政の舵取りを任せてみたい」と、泉さんへの期待が高まっているんです。
泉 自分のことはちょっと喋りにくいのですが。
鮫島 やっぱり政治は結果だから。どんなに小さな自治体であっても、そこで責任を背負いながら首長として結果を出した人間は、それだけで評価に価する。なぜなら、実績や結果は嘘をつけませんから。やったことのない人がいくら「やります」と言ったところで、リアリティは薄い。
泉 それはそうですね。
政権交代のためにマスコミが果たすべき役割
鮫島 マスコミにも責任がある。日本のマスコミは印象報道ばかりで、きちんと政治家の実績を評価してこなかった。
泉 たしかに、政治家を実績で評価する文化が、日本ではほとんど見受けられません。選挙の際に政治家が掲げた公約がきちんと守られたか、チェックすらしませんからね。
長く付き合わせてもらってる元三重県知事の北川正恭さんは、マニフェスト(公約)を大事にされている方でして、「マニフェストは地方で生きている」と主張した上で、公約に掲げていない防衛増税や原発の運転期間の延長を決める首相を批判されています。
たとえば、ある政治家が初めて、市長に立候補して当選したとしますよね。彼には実績がないわけですので、掲げた公約がきちんと果たされたかどうかで、その手腕を評価するしかない。彼自身も、果たされなかったなら、なぜ果たされなかったのかをきちんと検証しないことには、引き続き公約実現に向けて動くべきか、それとも転換を図るのか、方針を決定することができない。
公約の中身と、公約実現に向けての実行力。この両輪が大事なんです。マスコミは選挙になったら公約ばかり報道しますが、マスコミ自身が「公約なんてどうせ実現しない」と思っているかのように、当選後に公約実現に向けてどう動いたのか、という点に関してはほとんど追及しない。ホンマ適当なんですわ。公約がどうせ実現しない、どうでもいい代物なら、そもそも選挙する意味がない。
公約は市民との約束なんですよ。当然、守らなくてはならない。少なくとも、守るためにベストを尽くさないといけません。
鮫島 これもやっぱり、2009年に誕生した民主党政権の罪が大きい。あの時、みんな民主党に期待しました。革新的なマニフェストもありました。でも、そこになかった消費増税が実施された。あれがもたらした政治不信がいまにつながっているわけですから、公約中心に政治を変えようと言ったところで、国民はもうついてこないでしょう。
民主党に絶望して自民党しか選べないんだけど、自民党も全然ダメで、嘘ばっかりつくし景気も悪いままだし、格差は広がる一方。どちらにも期待を抱けず「これどうするの?」と真っ暗闇な状況のなかで、明石市に代表されるような、実績を上げた自治体が唯一の光なんです。
「非自民の総理候補者」の実名を挙げるとすると
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鮫島 「実績」「結果」を評価軸にした場合、日本には数多の政治家がいますけど、国民の期待を引き寄せられる総理候補はそういない。何度も言っているように、泉さんがその一人であることは間違いないのですが、総理候補の有資格者は本当に限られています。思い当たる人います?
泉 難しい質問ですね。
鮫島 まだまだ粗削りですが、れいわ新選組の山本太郎さんなんかは、傑出したリーダーの一人だと思います。たった一人でゼロから立ち上げて国政政党にまで育て、思い切った政策を提案し、政治的影響力を行使できることを証明したわけですから。しかし、やっぱり実績がない。
泉 そこが弱いところですね。その点維新が強いのは、大阪で一定の勢力となり、実際に政治行政を担っていること。賛否両論はありますが、維新を支持している大阪府民は、生活のリアリティに基づいて支持しているわけだから、そこは強い。
鮫島 山本太郎さんが東京都知事を狙った戦略は正しかったと思います。つまり、れいわ新選組という弱小政党が、やって見せるには自治体の長を取るしかないと。負けちゃったけど、戦略としては正しかった。維新とは政策的立場は真逆ですが、政治的戦略は維新に倣ったといえるでしょう。
そう考えるとやって見せたことのある人って本当に少ない。小池百合子さんも東京で維新に倣って都民ファーストをつくりましたが、維新ほど地域政党として機能せず、今のところ「東京が変わった」という実績も示していません。今なお「期待」を引き寄せる政治手法から抜け出していない。希望の党があっけなく頓挫した一つの理由はそこにあると思います。
大阪維新の会の橋下徹さんや松井一郎さんは、やって見せた。政策転換の方向性について評価は割れていますが、「大阪は変わった」という実感を府民や市民が持ったからこそ、維新は10年以上にわたって強い支持を維持しているのだと思います。松井さんは政界引退を表明し、橋下さんはすでに引退してますけど、この二人はやって見せたという意味で、一種の政治的影響力を残している。
同じように、泉さんも政治家引退を表明されましたけど、やって見せたわけですから、政治的影響力を残しました。そういう影響力を残したと言える政治家は、ほとんど見当たらないんですよ。今後の泉さんの、国政に対する役割は非常に重要。むしろ、これからのほうが重要と言えるかもしれない。
泉 自分も市長になった後に、実績ある首長のやり方を勉強しながら参考にしました。市民の声を聞き、空気を感じながら、真似していった経緯がある。
泉房穂の「これからの闘い」
鮫島 他の自治体や首長を応援していきたいとおっしゃっていましたが、今後は具体的にどんな活動が中心になっていきますか?
泉 市長という公職の制約が無くなり、明石だけでなく、他のまちのこともできる立場になりますから、明石市の範囲を超えて、より広域での活動にシフトしていくつもりです。
実際に、冷たい社会は変えることができるんです。私は、明石のまちだけが良くなればいいなんて、思ったことはありません。だからツイッターでも、明石市ですでにできたことは「他の自治体でも、国でもできる」と、ずっと声を大にして言い続けています。これまでは控え目な発言しかできなかったけど、市長職を離れたら、ようやく遠慮することなくハッキリ物言うこともできる(笑)。明石から「始める」段階から、本格的に全国各地へ「広げる」活動へ、さらにギアを上げてガンガンいきますよ。
思えば私の市長時代は、総スカンの6年から、周囲の目が変わった3年、認識が広がった3年と続きました。次のステージへ向けた今の心意気は、かつて小中高の12年を終え、地元明石から上京した頃のように、やる気に満ち満ちています。さあ、やるぞ! って(笑)。
子どもの頃に強く誓った「冷たい社会を変える」という思いは、今もしっかり胸に刻まれています。心ある首長を応援しながら、一緒に優しいまちへ、次々と変えていきます。
鮫島 議会や役所と戦って孤立しながら、12年間、改革市長をやり続けた泉さんの経験が何よりのアドバイスになるでしょう。
泉 当面の見立てとしては、次の総選挙でがらりと変わると期待しています。2025年7月に衆参ダブル選挙になると睨んでいまして、兵庫県の場合は知事選も重なってトリプル選挙になる。ここが一つの山場でしょう。何度も言ってますが、変わる時は一気に変わるから。それこそ、ずずずっと地球の地盤が動くようなイメージかな。
いま、国民は苦しんでいます。私が増税批判のツイートをすると、共感が溢れかえる。それだけキツキツの生活をしてるわけです。その結果、人生が変わっちゃってる人もたくさんいます。「これ以上税金上がるなら、子どもは一人でやめておこう」とか。
にもかかわらず、国の政治家は「子どもが少ないのは、女性が早く結婚しないから」なんてズレたことをいう。
「何言うてるねん! あんたら、私らのこと全然わかってへんな!」
という国民の不満が、マグマのように溜まっているのが、今の状況です。国民の根っこのところにある不満に対して、どこの既成政党も新たな道を示せていない。そこが示せる政党なり政治家が出てくると、状況は一気に変わるでしょう。
私、こう見えて選挙が大好きでね。自分が出なくても選挙そのものが好き。だって、私みたいなモンでも出れますやん。
鮫島 2011年、「どうかしてる泉」が突然市長選に出馬したように。
泉 そうそう。出ると言ったら、誰も止められないわけよ。おまけに、全員に等しく一票が与えられている。どんな有名人も有力者も、全く名前の知られてない人も、みんな一人一票なの。等しい一票を、等しく行使できる。選挙というものは、やっぱり可能性の宝庫なんです。どんなに期待の持てない状況でも、そこを諦めてはいけません。
そのために、私にできることがある。市長という看板は下ろしますが、政治に携わることはやめません。「冷たい社会を優しくする」闘いは、これからも一生、続きます。
連載第1回から読む【「日本一の子育て政策」「暴言、毒舌」で知られた明石市長・泉房穂氏がいま「本音」で話すこと…「『人から嫌われたくない』なんて思ったことはない」】
【泉房穂のドキュメンタリーを見る】
『泉房穂を生んだ海の町~明石を心から憎しみ、そして愛した』誰一人見捨てない政治の原点に迫る~情熱的な暴言市長の闘いは全国へ~『政治はケンカだ! 』自民立憲の二大政党政治を地方から突き崩せ
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