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山陰新幹線、ついに現実路線へ? 中速鉄道の夜明け! 新大阪〜舞鶴1時間短縮、在来線活用と新線建設のハイブリッド、この鉄道でなぜ地域は活性化するのか?
2025/03/30 05:51Merkmal
山陰新幹線、ついに現実路線へ? 中速鉄道の夜明け! 新大阪〜舞鶴1時間短縮、在来線活用と新線建設のハイブリッド、この鉄道でなぜ地域は活性化するのか?
北陸新幹線(画像:写真AC)
(Merkmal)
新幹線整備遅延に中速鉄道
海外では中速鉄道(通常の在来線と新幹線の間の速度帯で運行される鉄道)が当たり前に存在しているが、日本でもようやく注目され始めた。2025年2月26日の衆議院予算委員会の集中審議で、石破茂総理が福島伸享衆議院議員(有志の会)の質問に答えた。質問は、中速鉄道に対する政府の姿勢に関するものだった。
石破総理は次のように答弁した。
「仮にフル規格の新幹線があと30年くらいで全国に張りめぐらせるのなら、それがベストに決まっている。しかし、北陸新幹線が新大阪まで行って、北海道新幹線が札幌まで延伸されて、(西)九州新幹線が全線開業してから次の新幹線に着手するとなれば、膨大な時間が必要。その間どうするのかという疑問が生じざるを得ない」
「地方人口は減る、(在来線)設備は老朽化する時代にあって、中速鉄道の可能性を真剣に考えなければならないのは、曽根先生(東京大学名誉教授・著書に「中速鉄道のすゝめ」がある)の指摘通りだ。ヨーロッパでは中速運転の鉄道が航空機やマイカーからのモーダルシフトにつながっており、政府も真剣に議論していかねばならないと考える」
日本には時速130kmまでの在来線と、時速260km以上の新幹線がある。その間の速度帯の鉄道はほとんどない。唯一、成田スカイアクセス線や京成スカイライナーの一部区間で160km運転が行われている。さらに、北陸新幹線金沢開業前に走っていた特急「はくたか」も、北越急行ほくほく線内で160km運転を行っていた。このように、時速160キロ程度の運行は限られている。
今後の新幹線整備にはコストがかかるため、在来線を部分的に活用し、ショートカットが必要な部分だけ新線を整備するという、低コストで速達性を向上させる案が議論され始めている。
当初、筆者(北村幸太郎、鉄道ジャーナリスト)はこの案に否定的だった。災害時の寸断の可能性が高く、また防災対策や貨物輸送、高速道路に対抗するためのアップグレードの必要性を考えると、基本計画の新幹線はすべて早急に整備すべきだと思っていた。
しかし、完全な新幹線にすると、途中駅の利用が少なくなり、特に都市圏を中心としたネットワークの根元にある自治体のメリットが薄くなる点が指摘されている。このため、新幹線の整備が進みにくい現実がある。これらを考慮すると、
「山陰新幹線」
では中速鉄道が有効かもしれないと思えるようになった。
山陰本線中速鉄道化案の例(画像:北村幸太郎)
大阪に出にくい山陰線沿線
山陰線には、短絡ルートを少し作るだけで新幹線に近い時間短縮が可能な区間がある。大阪を起点に、JR京都線の茨木から嵯峨野線(山陰線)の亀岡までの区間と、長らく複線化が求められている山陰線の綾部〜園部間だ。
山陰新幹線の代替案として、次の三つの提案がある。
・亀岡から東海道線の茨木駅までを結ぶ23.8kmの高速新線を整備する。途中駅も設けて、通勤新線としても活用できるようにし、大阪周辺の自治体にも恩恵をもたらす。
・綾部〜園部間に32.5kmの「新幹線規格新線」を整備する。これにより複線化し、既存の単線と合わせて3線化を実現する。
・茨木から貨物線分岐部までの2kmを線増する。
これらを実施すれば、福知山、舞鶴、綾部から大阪だけでなく、関空にも直通できるようになる。かつて、北陸新幹線小浜・舞鶴ルートを推進していた西田昌司参議院議員が持っていた構想も、これで実現可能となる。
茨木から貨物線につながれば、うめきた大阪駅と建設中の「なにわ筋線」を経由して関空に達することができる。さらに、快速列車が乗り入れれば、亀岡〜園部間は大阪の通勤圏にもなり得る。この区間は、新幹線では実現できない効果を生み出す可能性が大きい。
綾部〜園部間新線ルート図(画像:北村幸太郎)
わずか56kmの新線で1時間短縮
在来線車両でどこまで速度を上げられるか。『幹線鉄道ネットワーク等のあり方に関する調査』2020年度によると、新幹線のような新線なら、JRの狭軌の線路でも200km/hで走行可能だとされている。これに少し余裕を持たせ、秒速50mで計算しやすい180km/hの運転を目指す。
綾部〜園部間と亀岡〜茨木間の新線区間で、特急を180km/hで走らせれば、わずか56kmの新線整備で最大1時間の時間短縮ができる。整備前後の比較は次のとおりだ。
綾部〜園部間は、現行42kmで35分かかる。新線なら32.5kmで13分となり、22分の時間短縮が実現する。園部〜亀岡間は、速度向上により1分短縮し、所要時間は10分になる。亀岡〜新大阪間は、現行59.2kmで53分かかる。新線なら、亀岡〜茨木間23.8kmを180km/hで9分、茨木〜新大阪間10.8kmを130km/hで6分かかる。130km/h運転はJR京都線の新快速ルートを活用し、途中減速を合わせて計34.6kmで16分となる。これで37分の時間短縮が実現する。
これにより、綾部〜新大阪間は、途中停車時間を含めて最速41分となり、1時間短縮される。1時間もの短縮は新幹線でないと難しいが、山陰線の線形だからこその効果だ。その他の主な区間の特急の所要時間は次の通りになる見込みだ。
新大阪〜亀岡間は16分、新大阪〜園部間は27分、新大阪〜西舞鶴間は1時間ちょうどとなる。
山陰新線整備案。データイム編大阪方面(30分サイクル)想定時刻表(画像:北村幸太郎)
関空アクセスも大幅改善
西田氏が夢見た舞鶴から関空への直通が実現すれば、山陰線沿線からの海外旅行が便利になるだけでなく、関空から舞鶴へのインバウンド送客にも大きく貢献するだろう。そのため、増発を兼ねて、関空から京都行きの特急「はるか」に加えて、180km運転に対応した車両で東舞鶴行きの特急も設定できるだろう。
現在、JR阪和線では15分サイクルのダイヤが組まれ、関空特急「はるか」は30分おきに運行されている。特急「はるか」の間に特急「くろしお」が1時間おきに運行されている。これにより、1時間にもう1本特急を運行できるダイヤ枠が空いている。その枠を活用して、東舞鶴行きの特急を作ることができる。
これで関空〜東舞鶴間は最速2時間ちょうどとなる。このほか、関空から綾部は約1時間半、亀岡へは1時間8分だ。
山陰新線整備案。データイム編亀岡方面(30分サイクル)想定時刻表(画像:北村幸太郎)
通勤圏拡大にも貢献
180km特急による時間短縮効果は驚異的だが、快速列車による通勤圏拡大効果も大きい。快速列車は従来どおり、最高時速130kmで運行されるが、それでも大阪〜亀岡間は31分、大阪〜園部間は47分に短縮される。JR宝塚線の大阪〜新三田間が43分で、線形がよい新線に切り替わったことで実現したことを考えると、十分に通勤圏として成立するだろう。これにより、園部〜亀岡間は現在のように特急以外で1時間に1本か2本という本数ではなく、都市圏並みの毎時4本程度が走る路線になるだろう。
大阪行きと京都行きの快速を交互に運行し、京都行きは亀岡で関空快速に接続するようなダイヤも考えられる。京都行き快速を増発するために、普通列車の半数は嵯峨嵐山折り返しとし、代わりに快速は馬堀駅に停める形で増発を実現できるだろう。
また、建設中のなにわ筋線に線路が繋がるため、特急「はるか」だけでなく、関空快速の乗り入れも考えられる。大阪市都市計画局によると、なにわ筋線開業後、関空快速が毎時4本、南海の急行が毎時4本乗り入れる予定だ。阪急によれば、南海急行のうち毎時6本を阪急新大阪行きに変更したいと考えている。そのため、残りの2本の関空快速を亀岡まで延ばすことができる。これにより、一般列車による関空アクセスが向上し、大阪ミナミへも便利に出られる路線が実現する。亀岡〜JR難波間は42分、亀岡〜天王寺間は49分となる。
関空快速は天王寺で大和路線の普通列車に同一ホーム接続するダイヤとなっており、大和路線沿線から亀岡の京セラサンガスタジアムへの観戦利用にも便利になる。大阪発着の快速は茨木でJR京都線の快速と同一ホーム接続される予定で、亀岡から尼崎、芦屋、三ノ宮、神戸へも出やすくなる。亀岡〜三ノ宮間は1時間1分になる見通しだ。
亀岡〜茨木間新線ルート図(画像:北村幸太郎)
沿線街づくりにも貢献
整備新幹線における課題のひとつは、都市圏に近い区間の自治体がメリットを感じず、反対することだ。
北陸新幹線の滋賀県や京都府、西九州新幹線の佐賀県などがその例である。今回のケースでは、大阪府、特に茨木市と高槻市にもメリットがなければならない。そこで、茨木市と高槻市にそれぞれ新駅を設置する案を考慮した設計を検討するべきだ。また、できるだけ未開発地を通過させ、開発利益を還元できるようにしたい。
Googleマップで調べてみると、茨木駅から数百mの地点でJR京都線から分かれ、北に進むとサイゼリア茨木安威店の横に広大な未開発地が広がっている。この場所に安威駅(仮称)を設置し、その後、東北方向に進み、摂津峡大通りとの交点や妙力寺付近に摂津峡駅(仮称)を設ける。ここも広大な未開発地の中心となる新駅設置になる。さらに、この摂津峡駅には追い越し設備を設け、180km運転の特急が一般快速列車に邪魔されずに走行できるようにする。
亀岡市内は、高槻市との市境まで1kmの地点に住宅地「南つつじヶ丘」が広がっている。摂津峡駅から14kmほど進んだトンネルを抜け、ローソン亀岡つつじヶ丘店付近に南亀岡駅(仮称)を設置し、周辺住宅地の利便性向上に貢献する。その後、西にカーブしながら2.4km進むと亀岡駅がある。
山陰新線乗り入れ。園部駅・亀岡駅部配線図(画像:北村幸太郎)
新線部分56.3kmの事業費
中速鉄道は安価だと言われても、実際にはどれほどの費用がかかるのだろうか。新幹線と在来線では断面積に違いがあるが、工費に大きな差が出るかと言うと微妙だ。そこで、近年開業した新幹線のキロ単価を見てみよう。
北陸新幹線敦賀開業時はキロあたり146.4億円、北海道新幹線札幌延伸はキロあたり109.2億円、西九州新幹線はキロあたり92.5億円だった。
これらの例から、概ねキロあたり100億円として計算するのが妥当だ。新線区間が56.3kmなら、工費は約5630億円となる。もしフル規格で建設する場合、園部〜亀岡間の14km分で1400億円、茨木〜新大阪間の都市部10kmでは5000億円がかかると予想される。
新大阪〜綾部間の建設費は1.2兆円となる。つまり、在来線を活用しつつ新線を一部作る中速鉄道なら、約半分の費用で済む。しかも1時間の短縮が可能だ。
四方源太郎議員(画像:北村幸太郎)
地元の府議は
中速鉄道案は、明るい未来を描ける内容だ。以前から山陰線の強化、特に複線化を訴えていた綾部市の四方源太郎京都府議に、本案の概要と資料を見せたところ、以下のようなコメントをもらった。
「綾部市民にとってはよいプランです。山陰線の複線化にもつながる最高の案です。ただ大阪府が了解してくれるか? JR西日本が認めるか? という問題はありますが、京都府は乗れる案だと思います。また、綾部駅〜京都駅の現在、毎時1本ある特急がどうなるのか、というのは感じますが、懸念はそのくらいです」
懸念はあるものの、地元としてはフル規格新幹線による山陰新幹線よりも乗りやすそうなプランのようだ。
大阪府は、前述の新駅設置と沿線開発をセットにすればメリットを享受できる可能性がある。また、この新線の建設費を鉄道会社に丸々負担させることはないだろう。鉄道会社が納得できる新たな制度設計を、石破総理には期待したい。
茨木駅付近配線計画図・断面図(画像:北村幸太郎)
中速鉄道一辺倒ではない議論を
中速鉄道は新幹線と比べると速達性で劣るかもしれない。
しかし、大都市圏に近い区間では、通勤圏の拡大や空港アクセス向上など、新幹線では得られない効果が期待できる。北陸新幹線よりも沿線人口が多い四国新幹線には通常タイプの新幹線が適しているが、山陰新幹線沿線の都市規模なら中速鉄道がちょうどよいかもしれない。
整備区間沿線の都市規模に合わせて、フル規格新幹線と中速鉄道をうまく使い分けることができれば理想的だ。
山形県の羽越線には立派な複線トンネルが作られているが、複線化計画が頓挫し、未使用のまま放置されている場所がある。これはもったいない。中速鉄道化を検討して、ぜひ活用してほしい。
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(TSKさんいん中央テレビ) 03月16日 16:00