本澤二郎の「日本の風景」(4828)

<国際社会で通用しない日本政府の深刻すぎる歴史認識>

 日本政府と経済界(財閥・死の商人)は、戦前の恐ろしい植民地支配や侵略の史実について正直ではない。凡人ジャーナリストも学校で教えてもらわなかったものだから、大先輩の宇都宮徳馬さんから直接学んだ。彼は「機会があれば中国に行きなさい」とお尻を叩いてくれた。

 既に100回以上も往来し、ジャーナリストの訪中歴に花を添えた。当初は観光が中心だったので、南京やハルビンその他、足で歩きながら現地の住民や機内の乗客から、侵略被害事実についての生の声を聞いた。主に「中国の大警告」(データハウス)にまとめた。これは中国版にもなった。後半は主に北京大学や南開大学、武漢大学の学生に向けて日本事情を講義した。日本研究の学者との交流も心掛けた。外交部OBの肖向前さんの自宅にはよく訪問して、近くの食堂でビールで乾杯した。彼が大平正芳の知られざる一面を語ってくれた。大平こそ中国人の尊敬を集めていた。韓国の歴史記念館も歩いた。想定も出来なかった日本軍国主義の爪痕の巨大さを、いたるところで膚で感じてきた。

 

 同年齢の小泉純一郎が靖国参拝を繰り返すという驚愕すべき政治行動に際しては、彼の結婚式に参列した友人として、これを許すことが出来なかった。一人反撃の本を書いた。この当時、北京の清華大学で講演会を開いた。学生が会場を埋め尽くした。通路などに立見席までも。万雷の拍手を受けたには、後にも先にもこれっきりである。大感動した思い出は、生涯忘れることはないだろう。

 

 日本を代表する平和軍縮派に師事したおかげである。人は誰に出会えるかによって、人生観も生き方も大きく変わるものであるが、宇都宮が一番面倒を見た読売の渡辺恒雄と筆者は真逆の道を歩いた。筆者は「ボロは着てても心は錦」がお似合いの人生で終えることになる。ナベツネはいま遺産相続で頭を抱えているのか、それとも平成の妖怪(中曽根康弘)の手を使って、うまくごまかすのか。有り余る紙切れになる円の扱いに腐心しているに違いない。

 

 歴史認識・正しい歴史を認識する社会は、現在と未来に明るさを灯すが、過去に盲目だと現在も未来も盲目となって、同じ過ちを繰り返すことになる。少なくとも10年前から日本政府の歴史認識は、極端にぶれた。過去にとことん蓋をしたのである。

 100年前の1923年9月1日の関東大震災において、罪のない中国人・朝鮮人が多数、殺害されたことさえも日本政府はすっかり蓋をかけて、開けないようにしている事実を数日前にネット報道で知って、怒りと共に頷くほかなかった。

 

 凡人ジャーナリストの歴史認識がぶれることはない。たとえば南京を訪問したさいの大虐殺記念館では、現場の資料写真と生き証人の生々しい声を聞いた。それは1989年6月4日の不幸な天安門重大事件の直前だった。腰を抜かして宇都宮事務所に駆け込んだ。宇都宮さんは「それを軍縮問題資料に書きなさい」といわれ、それを発表した。戦後50年の1995年には50人の仲間と南京と盧溝橋を訪問した。ナベツネの読売新聞は、既に改憲論を公表し、日本国憲法の平和主義を破壊しようとしていた。いま大金を手にしたナベツネを、生前の宇都宮さんは「忘恩の徒」と断じて、A級戦犯の岸信介同様に許さなかった。 歴史を冒涜する輩が権力を握った自公内閣を支援するナベツネは、政府と共に盲目の航海をして恥じない。

 

<わずか100年前の中国人・朝鮮人虐殺に蓋をした日本政府=背後に不気味な神社神道・日本会議の影が>

 自民党神社本庁清和会と公明党創価学会が政権を担当するようになって、日本政治は極右片肺の政治路線へと大きく舵を切った。戦前の国家神道と、国家神道の被害教団が支えるという、信じがたい自公権力が誕生するようになって、盲目の日本は戦前へと舵を切った。

 

 神社本庁は日本会議を立ち上げ、自民党岸派を継承した福田・清和会が神道政治議員連盟を主導すると靖国参拝が公然化する。近隣国はこれに怯えて軍拡にいそしんだ。軍拡競争がアジアで始まって久しい。真っ当な歴史認識に蓋をかけることが、同時に進行してきた日本である。

 「政府が調査した限り、政府内に事実関係を把握する記録が見当たらない」と谷公一・防災担当大臣は、さる5月23日の参院内閣委員会で何度も繰り返した。谷は岸田が和歌山市漁港で爆発物を投げ込まれた当時、うな重で腹を膨らませていた国家公安委員長だ。世襲派の不勉強議員で知られる。

 

 谷だけではないだろう。中国のどこを歩いても日本侵略の深い傷跡は残っている。南京に限らない。学校で教えられない自民党議員ばかりだから、日本会議や統一教会の指示に容易に従うボンクラな閣僚なのであろう。中国を歩け、と言いたい。

 この歴史認識について、朝鮮半島の人たちはより厳しい見方をしている。国連でも以前から韓国や北朝鮮の代表が「正しい歴史認識を」と叫び続けてきたのだが、清和会の日本政府は歴史に逆行している。

 歴史に盲目な自民党政権が継続していくとなると、それこそ震え上がるような命の危機に日本人は襲われるだろう。

2023年6月8日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)

 

国際原子力機関IAEAで中国の代表が東電フクシマの海洋投棄に大反対!

 【新華社ウィーン67日】国際原子力機関(IAEA)の定例理事会が5日、ウィーンで開幕した。中国からは、中国国家原子力機構主任でIAEA理事会中国理事の張克倹(ちょう・こくけん)氏が発言で、日本の福島原発放射能汚染水の海洋放出計画を厳しく批判したほか、李松(り・しょう)IAEA常駐代表が日本側の詭弁に対し答弁権を行使し、強く反論した。

 張氏は次のように指摘した。放射能汚染水の海洋放出は世界の海洋環境と人々の健康に関わる重大問題で、日本一国のことではない。日本は自国民と世界各国の正当で合理的な懸念を無視し、これまで各国の懸念に対して科学的で信頼できる説明をしておらず、隣国を含む利害関係国と十分な協議もせず、独断専行して海洋放出計画を加速させており、極めて無責任だ。

 張氏は次のように強調した。福島の放射能汚染水は総量が多く、成分が複雑で、処理期間も長く、歴史的に前例がない。処理後の放射能汚染水は多くの種類の放射性核種の含有量が基準を超えており、処理の成熟性と有効性の検証が待たれる。日本は海洋放出の危害を隠し、関係の技術と浄化装置の長期的信頼性について検証していない状況の下で、計画を強行しようとしており、受け入れられない。