本澤二郎の「日本の風景」(4840)

<「親子三代足尾に生きて」(上岡健司著)が話題に>より、転載させて頂きました。

 足尾鉱毒事件は世界的にも知られる最悪の公害事件である。日本の日清日露に続く侵略戦争を支えた銅山開発事業の雄・古河財閥(1875年創業)は、戦後においても日本の公害の原点となって歴史に克明に刻まれている。しかし、戦後の足尾銅山の汚れた歴史を国民はほとんど知らない。足尾銅山大量解雇事件の弁護人が「親子三代足尾に生きて」(上岡健司著)が販売に一役買っている、と話題になっている。

 筆者はしばらく前に単行本が送られてきたので紹介したが、それは日本人労働者のみならず外国人までも奴隷のように虐げて、暴利を得てきた財閥ビジネスの恐ろしさゆえである。政治はいうまでもなく日本のすべての分野で、独占的な権力と権威でもって、主権者である民衆を虐げることにためらいを持たない財閥が、侵略史の反省に立って国民が手にした世界の宝・非戦の9条憲法さえも破壊しようとして、戦前の国家神道で現在も自民党本部に巣食う神道政治連盟(日本会議)が蛮行をふるっていることに反骨の言論人として許容できない。

 

 財閥こそが民主主義の敵である。著者の上岡健司はそこで生き、今も生きている。(栃木県日光市足尾町0288932259)いま90歳という。まだ先は長い。財閥古河の正体を足尾から足で稼いだ記録は、財閥研究に新たな材料を提供するだろう。そこから日韓・日朝・日中の真の和解が実現することになる。まだ敗戦後78年しか経っていないではないか。

 

<袴田事件の弁護団長・西嶋勝彦さんも販売に汗>

 西嶋さんは本物の弁護士であろう。以前こんなことがあった。元参院議員の渡辺一太郎秘書の石井正子さんから「中国人の(王さんの妻)祝智恵さん母子を帰化させてほしい」という珍しい要請を受けた。幸い、友人の田中派の前田勲男が法務大臣だった。彼はすぐに対応してくれた。

 ところが、彼女の最愛の息子が事件を起こした。「いい弁護士を探してほしい」と夫妻から依頼され、困ってしまった。そこで中央大学法学部時代に籍を置いた渥美東洋ゼミ(刑訴法)に声をかけると、西嶋さんが最適との連絡を受けて、初めて連絡した。要するに彼は刑事弁護の第一人者として知られていたのだ。

 

 最近になって西嶋さんが袴田冤罪事件の弁護団長をしていることを知って大いに頷いてしまった。しかも、上岡単行本で彼が足尾銅山大量解雇事件の弁護団だったことを知って、これまた頷いてしまった。年賀の交換は大分長く続いている。「東芝病院医療事故死事件を頼んだらよかった」と猛省したものの、気付くのが遅かった。

 今回自宅に郵送されてきた上岡本の販売促進依頼にも手を回す心配りに敬意を表したい。

 

<足尾鉱毒事件に本格取材した女性記者第一号・非戦の松本英子女史>

 二松学舎大学の教壇に立ったこともある筆者が、最近同大OBの府馬清(本名松本英一)の書いた「松本英子の生涯」(昭和図書出版)を読んで感動した。彼女はおそらく女性記者第一号に違いない。当時の毎日新聞記者として、徹底的に古河財閥による足尾銅山鉱毒事件を容赦なく暴いた。それが原因で天皇制国家主義の官憲にとことん弾圧を受けて、やむなく当時は「自由の天地」と言われたアメリカに渡った。

 漢籍と西洋キリスト教を体得して言葉に不自由しなかった女史は、アメリカの邦字新聞で大活躍した。当時は第一次世界大戦で子供を奪われて泣いている夫人を見て、何とか戦争をやめさせられないか、必死で思考を重ねて到達した結論が武器弾薬を放棄する非戦論だった。そのことを邦字新聞や講演、教会活動で訴え続けた勇敢な松本英子だった。 

 9条憲法が誕生する20年ほど前だった。彼女の足跡は、日本で公害の原点である財閥古河との対決、アメリカでは非戦論を首唱したことだった。これほど立派な日本人がほかにいるだろうか。上岡さんにも知ってもらいたい。無論、すべての日本人と国連でも。

 彼女の故郷は、上総の国望陀郡茅野村。わが故郷の偉人である。

 

<「本澤二郎の日本の風景」10巻5セット限定販売=メルカリに出品>

 思うに筆者は、言論人の究極の使命は「戦争抑止」「戦争させない」ことであると心に決めている。これは人類の悲願だ。そうした思いを抱いて、毎日「日本の風景」を書いて、世の中に小さな警鐘を鳴らして生きている。

 恩師・宇都宮徳馬に対する報恩でもある。財閥・東芝に命を奪われた次男正文への親としての責務と心得ている。

 日本の民主主義の危機とは、戦争国家へと傾斜させる財閥と背後の神道政治連盟の野望であり、それらを何としても食い止めることが日本人の使命であろう。これは広くはムラ社会との対決なのだ。

 

 思い切って「日本の風景」を10巻製本にし、5セット限定でメルカリに出品した。製本代1セットだけでも20万円。高すぎるがあえて挑戦している。上岡さんもメルカリを活用したらいい。

 

<「平成の妖怪 大勲位 中曾根康弘」(健友館)は50冊限定>

 ついでに出版すると間もなく出版社が倒産させられた「平成の妖怪」本もメルカリに50冊限定で出品した。中曽根・国家主義に対する痛撃本である。

 なぜか群馬県には戦前派の天皇制国家主義者が多い。山口県と肩を並べている。長州と上州に戦争屋・死の商人が目立つ。風土と関係があるのだろうか。上州にやくざが多いのも気になる。

 

 筆者はまだメルカリに出品した「日本の風景」と「大勲位」をパソコンやスマホで確認できていない。興味を持っている読者諸兄はぜひアクセスして見てもらえると幸いである。

 

<マイナンバーカードの首輪はNO。人は動物ではない。返納せよ!>

 マイナンバーカードと戦争傾斜と少子化対策は、太い糸でつながっている。首輪人間になると、財閥政府に命を奪われるかもしれない。次男のようになってほしくない。どうせなら鳥になって自由に空を飛んでもらいたい。

 不安な2万円は返す必要がない。

 奴隷がいやならマイナンバーカードという首輪をはめるな、である。

2023年6月20日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)