ぱんくず日記

日々の記録と自己分析。

せつない音楽

2013-11-13 05:45:53 | 音楽
今日は仕事が休みなのに朝の5:30から起きている。
あの寝起き悪い夜行性の自分は何処に行ったのだろう。
元々朝型体質であるが、どうも今の介護施設で働くようになってからは
朝型体質に極端な拍車がかかったらしい。


勤務があろうと無かろうと、朝は5:00に目が醒め、午前中に腹が減り、
日の入りの時刻と共に猛烈に眠くなる。
夕方道を歩いていると横断歩道を渡っている最中にも睡魔が襲ってきて危険だ。
夜は7:00過ぎると既に深夜まで夜更かししているような錯覚が起こって
眠くて起きていられない。
何とか入院中のじじの様子を見て帰宅し、20:00頃帰宅してPCの電源を入れると
脳みその方が先に電源落ちして結局ネットは何も見られず何も聴けない。
以前の生活から2時間くらい早くずれたらしい。


先日プーランクの15の即興曲、第15番 ハ短調「エディット・ピアフ讃」を
OTTAVAの昆布漁でたまたま聴いたら、情緒を刺激されて検索し、
結局CD取り寄せて買っちゃった。


何だかせつないメロディだなぁ。


私は普段から中世ポリフォニーとか一番新しくても
せいぜいパレストリーナの時代くらいまでのコラールばかり聴いており、
いわゆるバロックとか近代現代の「クラシック音楽」は食わず嫌いの苦手で聴かない。
しかしたまたまネットラジオで聴き流していたプーランクのこの曲は
普段忘れている過去の出来事のせつない感情や場面をたくさん思い起こさせられる。
感情的高揚の誘発剤みたいな曲だ。


Francis Poulenc - Improvisation 15 "Hommage �・ �・dith Piaf"



この曲を聴いて記憶に甦った幾つかの場面は、
いずれも自分が脳外科で介護職から臨床一年目の看護師に転じた頃に遭遇した人々の、
辛い日常の場面であった。


この曲を聴くと、どうして彼らは甦って来るのだろう。


風邪から髄膜炎を起こして搬送されて来た若い奥さんは、来た時まだ会話出来た。
夕食の用意をして冷蔵庫に入れてあるから食べてと夫に伝えて、とか
おかずの作り置きをしてあるとかそんな事を話した2時間後には植物状態になった。
ご主人が毎日面会に来て、意識の戻る見込みなく人工呼吸器をつけて寝ている奥さんの
耳にイヤホンの片耳をつけて、ご主人がもう片方のイヤホンをご自分の耳につけて、
元気だった時に二人で聴いた音楽を、片耳ずつ聴いているのを私は見ていた。
奥さんもご主人もまだ二十代の、新婚4ヶ月の若いご夫婦だった。


同じように人工呼吸器を着けた植物状態の17歳の女の子もいて、
彼氏が毎日会いに来て無言で手を握り、頭を撫で、生理的にただ流れてくる涙を
拭いてやっているのを私は見ていた。


悪性脳腫瘍で余命僅かな19歳の娘さんの前では決して涙を見せまいと頑張って
残された日々を毎日面会に来ていたお母さんの後ろ姿を私は見ていた。


先の見えない長い長い入院生活から家族に忘れられて誰も面会に来なくなった人が
頭から被った毛布を退けて、こちらに笑いかけてきた両目に涙が溜まっていた。
自分は家族から忘れられた存在であるとその人の目が語るのを私は見ていた。
病状が悪化して聴覚を失い視覚も失う頃に子供達がカーネーションを持って来た。
気管切開した人の傍に植物を持ち込む事は出来ないので看護師達が数人がかりで
窓ガラス越しに母の日のカーネーションを見せようとした。
聴覚と、声と、視覚をも失いつつあった人の最後の母の日だった。


他にもあの人も、この人も、おそらくはとうにこの世にいないであろう人々の、
もう20年以上も昔に遭遇しこの目で見た切ない日常の光景を、普段思い出す事もないのに、
この曲を聴いた途端彼らの姿が鮮明に甦ってきてやたら感情的になる。


凍結した感情が融かされて水が溢れ流れ出てくるような、切ない曲。


皆、時間と戦っていた。
臨床一年目の私は知識も経験も、まともに使える武器を何一つ持っていなかった。
ただ時間に追われ、緊張し、白衣を着た案山子のように立ち竦んで見ている以外に
彼らのために自分が出来た事は何一つ無かった。
しかし彼らは戦っていた。
残り少ない余命時間の中に、最大限詰め込んであげようとしていた。
この世の残り時間の中に、あらゆる幸福を、一緒に聴いた歌を、残り少ない時間の中に
どれだけ詰め込んでやれるか、の戦いだった。


その事をこの曲で不意に思い出して、泣きそうになった。
20年も経った今頃になって。

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2 コメント

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Unknown (tomo)
2013-11-18 16:01:30
私も20年前は脳外の病棟にいました。

ここに書かれている内容にうなずくばかりです。

若い人たちが、悪性腫瘍や、SHAでこの世から旅立っていく姿に何もしてあげれなかったと、若いころは健気に思う自分がいましたね。

病棟でDrが、サンタクロースに変装してささやかなクリスマスお祝いしたときの、家族や子供たちの笑顔忘れられません。

仕事で、クリスマス礼拝には参加できなくても、こういう形のクリスマスも、主の御心のように思えます。

もうすぐ、クリスマスですね。

来週から、準備に大忙しです。

今年はクリスマス礼拝の司会なので、緊張(^_^;)
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クリスマス (井上)
2013-11-19 10:18:27
>tomo様

 クリスマス礼拝の司会ですか。
 大変ですね。
 頑張って下さい。

 こちらは今年からは
 クリスマスのツリーもケーキも必要なくなりました。
 でも職場でクリスマスの行事があるみたいです。
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