私は酒飲みです。
酒なら何でもござれの口です。
世間体もあるので飲むのは夜と一応決めていますが
ごくたまには昼間から無性に飲みたいなあと思うことがあります。
そんな節操のない酒飲みにはまことに魅惑的な店でした。
お昼から、飲める店。
このフレーズを考えた店主は偉いなあと思います。
お天道産の高いうちから酒を飲むなんてバチが当たるぞ!
そんな罪の意識を打ち消してくれる響きがあります。
いいんですよ、昼間から酒を飲んで悪いという法律なんかないですから。
さあ、どうぞ、ググっと奥の席へ、さ、さ、どうぞ!
そんな店主の強引な誘いに負けました。
うーん、禁を破ってしまいました。
北陸・金沢の名高き銘酒「天狗舞」の山廃仕込みです。
なんとも美しい表面張力ですねえ。
いかにも日本酒らしいお米の香りに程よい酸味もあって
なかなかバランスのいいお酒です。
製造元の「車多酒造」さんは北陸の名峰・白山の麓にあって
一度、取材にも訪れたことがありますが
実に牧歌的な山紫水明の地でした。
定番のお刺身盛り合わせです。
ブリにマグロにサーモンにタコ、鯛の炙りも乗っています。
季節だけに寒ブリの身がとろけるようでした。
飲むうちに酔ううちに・・・
しだいに「昼酒」の罪の意識も和らいで来ました。
立ち飲み屋で朝っぱらから飲んでいるオヤジたちを見かけると
ああ、人間もああなっちゃおしまいだねえ・・・
などと心中軽蔑していましたが
ああなっちゃうと室に心地のいいものですねえ。
ものの一時間しない間にすっかり千鳥足になっていました。
いやあ、昼酒は実に愉しからずや!です。