GOVAP便り

プノンペンからモンドルキリに、その前はTAY NINH省--AN GING省--HCM市GO VAP

戦象20万頭

2012-02-16 18:39:07 | 地理・歴史

平凡社「真臘風土記」の附録に「諸蕃志 真臘国」が収録されていて、そこに「戦象は二十万[頭]にちかい」とあります。アンコール朝の絶頂期の数字なのでしょうか?1頭の象が排泄する糞が1日百キロとも言われてますが、すると二十万頭の象だと1日に2万トン、年間730万トンとう膨大な量になります。アンコール期のカンボジアは至る所象の糞だらけだったのでしょうか。

もっとも現在のカンボジアでは牛が約350万頭ほど飼われています。体重は象の13%ほどですから糞も比例するとして1日1頭が13kg×350万=4.55万トン/日で当時の象の糞の2倍以上を排泄していることになるわけだし。



2003年の農業統計にモンドルキリ州の家畜、象74頭とあったのを思い出し、改めて他の州の統計を探したところ象の記載はありませんでした。アンコール・ワット周辺でも観光客乗る象を見たことがありました。

ベトナムでも戦象は西暦40年ハイバチュンの時代にも描かれています。最近でも野生の象が密林から下りて来て電柱を倒したなどというニュースを見た記憶もあります。しかし、野生の象はこの間ベトナムでは激減し、2009年には80頭しか残っておらず、5年間に半減したとのこと。

http://tuoitre.vn/Chinh-tri-xa-hoi/Moi-truong/349893/Ca-nuoc-con-80-con-voi-rung.html



更にそれ以降は、野生象の死体が発見されるニュースばかりが続いています。

ベトナム戦争中には密林の兵士が象を目撃することも多かったようで、尻尾のない象の話を聞かされたことを思い出しました。

原田君がベトナム戦争の写真集(発刊されずに終わった)を編集している時で、今思えば再会した後で彼が一番昔の彼らしく、無邪気に語っていたように思えます。急流を渡る時に子象が母親象の尻尾を掴むため母親象の尻尾が切れてしまうわけですが、戦争のただ中でそれを観察して記した兵士の心境に彼は感動していたようでした。

「真臘風土記」には戦象については触れられていません。象牙については記されています。また、「馬には鞍がないが象にはかえって凳(腰掛け)があって座ることができる」とあります。馬や牛は乗らずに車を引かせるだけというのは今も変わらないようです。

「象牙はすなわち山間の僻地の人家がこれをもっている。・・・その牙は投げ槍で殺したものを上[等品]とし、みずから死んで、その時どきに人に取られたものはこれに次ぎ、山中に死んで多年たったものの場合はすなわち下[等品]とする」

象が戦争に使われた時代、或いはナパーム弾や枯葉剤で密林が破壊された時代、象にとっても不幸な時代だったと思うわけですが、もはや絶滅が危惧されるまでの状況となったインドシナの平和な今日、何れは観光客を乗せる象しか残らなくなってしまうのでしょうか?もっとも、餌代を考えると観光客用の象を維持するためにはそれなりのサービス料を支払う必要がありそうです。