常識について思うこと

考えていることを書き連ねたブログ

礼節を尽くすということ

2008年01月16日 | 人生

本日、年金に関する用件があり、地元の社会保険事務所に行ってきました。社会保険事務所と言えば、社会保険庁の年金記録の問題で大いに焦点が当たっていたところであり、実際に行ってみると、年金続きの窓口には、30人を超える人々の行列ができていました。さすがに大変な賑わいだと思いました。

私がベンチで待っていると、一人の男性が相談窓口までやって来ました。その男性は、受付の女性の説明を受けて、記入する書類を受け取り、記入台に向かいながら、簡単な会話をしました。

男性:「どれくらいかかる?」
受付の女性:「33人です。1時間半はかかります。」
男性:「え?そんなにかかるの?なら、いいや。やらない。」

こうして、その男性は書類を女性に返して、事務所を出て行ってしまいました。私は、男性の言葉遣いや語調から、サービスを受ける側の当然の権利を侵されているという男性の不快感や怒りを感じました。それはそれで、当然のことでもあります。しかし一方で、傍らで一連のやり取りを眺めていた私からは、サービスを受ける側の驕りを感じました。

年金記録の問題は、非常に大きな社会問題にも発展しており、関係者に対しては国民の怒りが向けられています。そうした問題があるなかで、実際に窓口に行ってみたら、長蛇の列ができているといったような状況では、カチンともくるでしょう。

しかし、実際に窓口で対応している方々に、その不平・不満をぶちまけたところで、何の改善にもなりません。いろいろな問題がありながらも、窓口で対応している方々は、一所懸命に自らの責務を全うしようとしているわけで、ひとまず、その場では不快感や怒りを抑えて、礼節をわきまえた接し方をするべきだと思います。

男性:「どれくらいかかりますか?」
受付の女性:「33人です。1時間半はかかります。」
男性:「え?そんなにかかるんですか?それならば、結構です。」

本来、こうしたやり取りができて、然るべきだと思います。

こうしたことは、社会保険事務所に限らず、一般の店舗やビジネスの場でも、多く見受けられることです。

「お金を払うんだから客が偉い。」
「客には心地よいサービスを受ける権利がある。」

これは、ひとつの側面としては正しいですが、このことに縛られると物事の本質を見失います。サービスを受ける自分も人間であれば、サービスを提供する相手も人間です。

いろいろな問題があって不平・不満はあっても、徹底的に礼節を持って相手に接してみることが肝要です。礼節に対しては礼節をもって、心に対しては心を持って、応えようとするのが人間です。問題だらけの環境にあっても、礼節を尽くしてくれた人間に対しては、最善を尽くして応えようとしてくれるのが人間です。一所懸命に礼節を尽くしてくれたあなたに対しては、サービスを提供する側の人々も、環境に限りがあるなか、彼らなりに最善のサービスを提供しようとするでしょう。そういう人々の姿を見て、あなたは感じるはずです。

「窓口(あるいは担当等)の人は、こんなに一所懸命にやってくれているのに、何故こんな問題が起こるのだ?」

礼節を尽くすことで、物事の本質が見えるようになってきます。そして最終的に、この問題はサービスを提供する側の責任者に問題があるという結論に辿り着くでしょう。

※ちなみに、窓口(あるいは担当)の人が横柄で、不親切な場合でも、徹底して礼節を持って接することで、「何故、この人はこんな態度を取るんだ?」という疑問から行き着く結論も、そういう人を働かせている、あるいは働かせている人にそういう態度をとらせている「サービスを提供する側の責任者に問題がある」ということになります。

ただし、徹底して礼節を尽くすということは、その責任者に物申す場面があったとしても、(伝えるべき内容は異なって然るべきですが)その責任者に対しても、窓口や担当者の方々とまったく同じように、不快感や怒りをぶちまけることなく、礼節を持って接していくということです(「感情の主人たれ」参照)。

そして、これは繰り返されます。その責任者ではどうにもならないのなら、またさらにその上の責任者・・・、またさらにその上、さらにその上・・・・と上がっていくと、その問題は限りなく、上位の責任者に問いただされることになります。

※究極的には、無限の上位は存在しえず、結局、それらの責任の一切が社会の一構成員である自分自身に帰結するという結論になります。そして、このことが自らの生きるべき道を指し示していくことになります。

少々、回りくどくなりましたが、簡単なことです。

レストランで注文をするとき、宅急便で物を届けてもらったとき、タクシーで目的地まで着いたとき、仕入れ業者との打ち合わせのとき、買う服を選んでいるとき・・・。いろんなケースがあるでしょうが、どんなときも「客」としての横柄な態度を取らず、礼節を尽くして相手に接していくことで、あなたの世界は大きく変わっていくし、実際に社会全体がポジティブに変化していくと思います。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小さな強がり | トップ | 「才能の無駄遣い」の克服 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

人生」カテゴリの最新記事