プリキュアの映画、「フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい!?」を見てきました。意外と良かったです。プリキュアシリーズは、個人的に「ふたりはプリキュアSplashStar」がピークではなかったかという思いもあり、最近のプリキュアには、少々、不信感があったりもするのですが、おもちゃをテーマとしていた今回の映画のメッセージは、なかなか良かったのではないかと思います。
以下、ネタバレ注意です。
テーマは、子供たちに捨てられた「おもちゃの復讐」です。子供たちの都合で、一方的に捨てられてしまったおもちゃたちの怨念を集めた、おもちゃの国の魔神・トイマジンが世界征服を企むというストーリーで、過去におもちゃを捨ててしまったことのある主人公・桃園ラブ(キュアピーチ)が、その過去と葛藤しながら戦うという展開です。
ポイントは、トイマジンが子供たちを単純に憎んでいるわけではないというところでしょう。トイマジンは、子供たちのことを大好きだったが故に、自分たちを捨てた子供たちに仕返しをしようとしているのであり、戦いの末、プリキュアに敗れたトイマジンは、本来のテディベアの姿に戻り、新たにテディベア好きな子供に引き取られていくというエンディングは、実に微笑ましいものだったと思います。
ところで、今回の映画からは、「おもちゃを大切にしよう」という子供たちに対するメッセージのみならず、別の視点から、おもちゃ会社に対するメッセージも読み取る必要があるのではないかと思いました。つまり、おもちゃが子供たちに捨てられてしまうのは、単純に「子供たちが飽きやすいから」、「子供たちが捨ててしまうから」では済まされない、別の原因があると思うのです。それは「子供たちに飽きさせてしまう」、「子供たちに捨てさせてしまう」おもちゃを作っている大人側の問題もあるのではないかということです。
おもちゃ会社が、商品を売り上げていく上で、子供たちの心を掴んでくれるテレビ番組のキャラクターたちは非常に重要です。そして、これはテレビの番組制作にも密接に関わってくる事項であるため、現在では、おもちゃ会社がテレビ番組のスポンサーとなって、それをテコにして、自社のキャラクター商品として売り上げていくというのが、ひとつの大きなビジネスモデルとして成立しています。そのモデルの中で、たくさんのおもちゃを売り上げていくためには、多くの新しいキャラクターやアイテムを登場させて、その回転率を上げていくことになります。今日のテレビ番組の制作というのは、多かれ少なかれ、そうしたスポンサーの影響を受けざるを得ないと言えるでしょう。そうした商業主義的色合いが強まっていくと、既に生み出された商品(キャラクターやアイテム)は、次々と捨てられていくことになり、このサイクルがますます加速されていくことで、捨てられていくおもちゃが増えていくわけです(「仮面ライダーと商業主義」参照)。
プリキュアシリーズで言えば、元祖の「ふたりはプリキュア」から始まって、現在、放送中のタイトルは6つ目になりますが、この間、キャラクターやアイテムは、毎年、変わってしまっています。当然のことながら、キャラクターやアイテムが変わってしまえば、それ以前のタイトル放送時に生み出されたおもちゃたちは、子供たちの遊びの中で、大きく出番を失うわけであり、捨てられる危険に晒されることになるのです。
当然、今回の映画にも、何らかのかたちで、おもちゃに関係するいくつかの会社が関わっているでしょう。私としては、「おもちゃを大切にしよう」という、この映画のメッセージは、何も映画を見に来た子供たちだけに伝えられるべきものではなく、今日において、おもちゃの開発、生産、流通、販売等に関わっている多くの大人(関係者)たちにも通ずるものではないかと思うのです。
けっして、今回の映画制作に関わったおもちゃ関係者の方々に対して、「あなたたちのおもちゃは間違っている」等と自己否定を強要するものではありません。ただ、せっかく良い作品を作っていただいたのですから、そこに込められている「おもちゃを大切にしよう」というメッセージを自分たちのものとしても捉えることができたら、おもちゃの世界(あるいは業界?)は、もっと発展的で、楽しめるものになっていくのではないかと思うのです。
《おまけ》
来春、またまた歴代プリキュアが大集合する映画があるそうです。はっきり言って、去年のプリキュアオールスターズは、非常に良かった(「オールスターズですっ!」参照)ので、次回の映画もかなり期待してしまいます。個人的には、キュアイーグレット・舞の活躍やキュアホワイト・ほのか役のゆかなさんの演技に注目です。あるいは、キュアドリーム・のぞみのボケっぷりも見られたら、もう最高でしょう。いずれにせよ、こうした過去のプリキュアを出してくれるというのは、子供たちの「過去のおもちゃ」の出番を増やしてくれる可能性もあるわけですし、こうした動きをもっとテレビ等でもやってくれたら、また違った効果も出てくるのではないかと思います。