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仮面ライダーと商業主義

2008年01月20日 | 産業

昨年から、毎週日曜日の朝に放送されていた「仮面ライダー電王」が、ついに終わりました。仮面ライダー1号、2号に始まった仮面ライダーシリーズは、平成に入って以降、「電王」が8つ目の作品で、この間、仮面ライダーも随分様変わりしたものだと思わされます。とくに平成に入ってからの「平成仮面ライダー」シリーズは、ひとつの作品に複数の仮面ライダーが登場し、各々が信じる正義のために戦うといったストーリー展開が、ひとつの特徴であり、これには子供のみならず大人をも惹きつける魅力があると思います。

ただ、複数のライダーが登場するという意味では、「仮面ライダーシリーズ」そのものがそうでした。仮面ライダー1号・2号、仮面ライダーⅤ3、ライダーマン、仮面ライダーⅩ、仮面ライダーアマゾン、仮面ライダーストロンガー・・・。それぞれが主役級のヒーローとして登場し、その世界は同一のなかで描かれており、時として複数のライダーが共存して戦ったりもしました。具体的には、約2年間放送された、仮面ライダー1・2号のシリーズが終わると、新シリーズ仮面ライダーⅤ3の放送が始まるわけですが、仮面ライダーⅤ3の第一話には、仮面ライダー1・2号が出てくる、といった具合です。以下は、初期の仮面ライダーのタイトルと、それに登場してくる仮面ライダーの一覧表です。

■オリジナル仮面ライダーシリーズ

放送開始年 タイトル 登場ライダー
1971 仮面ライダー 仮面ライダー1号
仮面ライダー2号
1973 仮面ライダーⅤ3 仮面ライダーⅤ3
ライダーマン
1974 仮面ライダーⅩ 仮面ライダーⅩ
1974 仮面ライダーアマゾン 仮面ライダーアマゾン
1975 仮面ライダーストロンガー 仮面ライダーストロンガー

これらの仮面ライダーは、5年を超える年月をかけ、シリーズを通じてひとつの同一世界観で描かれています。こうして、地道に長い時間をかけて、複数のライダーをひとつの世界に登場させていったのです。

これに対して、「平成仮面ライダーシリーズ」では、1年間で放送されるひとつの仮面ライダーの物語に、複数の仮面ライダーが登場しますが、1年間の放送が終了すると、それまでのストーリーは完全にクローズされ、それとはまったく別の世界設定で、新しい仮面ライダーのタイトルが組まれます。以下は、平成仮面ライダーの放送期間と登場する仮面ライダーの一覧表です。

■平成仮面ライダーシリーズ

放送開始年 タイトル 登場ライダー
2000 仮面ライダークウガ 仮面ライダークウガ
2001 仮面ライダーアギト 仮面ライダーアギト
仮面ライダーG3
仮面ライダーギルス
アナザーアギト
2002 仮面ライダー龍騎 仮面ライダー龍騎
仮面ライダーナイト
仮面ライダーゾルダ
仮面ライダー王蛇
仮面ライダーライア
仮面ライダータイガ等
2003 仮面ライダー555 仮面ライダー555
仮面ライダーカイザ
仮面ライダーデルタ
2004 仮面ライダーブレイド 仮面ライダーブレイド
仮面ライダーギャレン
仮面ライダーカリス
仮面ライダーレンゲル
2005 仮面ライダー響鬼 仮面ライダー響鬼
仮面ライダー威吹鬼
仮面ライダー轟鬼等
2006 仮面ライダーカブト 仮面ライダーカブト
仮面ライダーガタック
仮面ライダーザビー
仮面ライダードレイク
仮面ライダーサソード
仮面ライダーキックホッパー等
2007 仮面ライダー電王 仮面ライダー電王
仮面ライダーゼロノス

実にたくさんの仮面ライダーが登場していますが、これらは1年ごとに独立した世界観が設定されており、ひとつのタイトルが終わると、まったく別の世界観で描かれた仮面ライダーが始まっています。そのため、1年毎に入れ替わるライダー同士が、共存することはありません。1年間、一所懸命応援してきた仮面ライダーが、1年限りでいなくなり、その後、二度と出てこなくなってしまうというのは、見る側からすると非常に残念なことです。

以前は、5年もの歳月をかけて、7人の仮面ライダーのキャラクターが育てられてきたのに対し、現在では、複数の仮面ライダーが1年間で育て上げられ、1年を過ぎると、それらはまるで使い捨てられるようにお役御免となり、新たな仮面ライダーキャラクターの育成が始まるといった具合なのです。こうしたサイクルの短期化、展開速度の加速化というのは、時代の流れともいうことができます。そして一方で、ここに番組制作における商業偏重主義への流れを感じます。

テレビ番組は、スポンサーの資金によって制作されていくものです。したがって、番組を制作するにあたっては、いかにスポンサーをつけるかという点が、テレビ業界にとって非常に重要なポイントです。しかし、少子化が進み、子供が減り続けるなかにあって、昔のようにキャラクターの絵が入った文房具やお菓子の販売等では、とてもペイしないという状況にあり、番組制作に協力してくれるようなスポンサーが限られてきているということは事実でしょう。こうした状況にあって、テレビ番組の制作サイドでは、番組制作を支えてくれるスポンサーをいかに儲けさせるかということに配慮せざるを得ないのが実情なのだと思います。

そこで生まれてくるのが、キャラクターと結びつけた玩具販売の促進を狙った番組制作です。本日終わった「仮面ライダー電王」の場合、仮面ライダーの数で言えば、「仮面ライダー電王」と「仮面ライダーゼロノス」の二人ですが、いろいろなフォームがあり、キャラクターデザインや玩具の元となるネタは実に豊富です。主人公である「仮面ライダー電王」は、一人のライダーでありながら、いろいろなフォームに入れ替わり、変身していきます。そのフォームだけでも「プラットフォーム」、「ソードフォーム」、「ロッドフォーム」、「アックスフォーム」、「ガンフォーム」、「ウィングフォーム」、「クライマックスフォーム」、「ライナーフォーム」と8つあり、それぞれキャラクターデザインが違い、それに合わせた玩具が出ています。さらに、これに纏わる「イマジン」と呼ばれるキャラクターが4人(「ジーク」まで入れると5人)おり、「デンライナー」と言われる電車も4種類あります。もちろん、それぞれのフォームに合わせた必殺技や、それに関する武器があり、これらもすべて玩具化しています。そして、これらはすべて主人公である「仮面ライダー電王」に関するものだけであり、これと同じようなことが、もう一人のライダーである「仮面ライダーゼロノス」にもあるわけです。こうしてみると、「仮面ライダー電王」というひとつのタイトルに関わるキャラクター商品は、膨大な数に上っているのが分かりますし、しかも、それらがすべて1年間の放送が終わると、二度とテレビに出てこなくなるというのでは、それを追っていく子供たちも疲れ果ててしまいます。

問題はそれだけではありません。最近の仮面ライダーのなかには、スポンサーの売上げ増に貢献するためにキャラクターやアイテムを乱発してしまい、逆にストーリー展開を歪めてしまっているような現象も目立ち始めました。これは、仮面ライダーに限らず、最近の子供向け番組全体において、多分に見受けられる傾向です。

番組制作が、お金なしには難しいということは確かです。より良い番組制作のためには、スポンサーのバックアップが必要であり、そのための商業主義的な考え方が必要であることも分かります。しかし、そればかりに気を取られて、本来の番組制作を歪めてはなりません。キャラクターグッズは、そのキャラクターが愛されるから売れていくという本質を見失ってはならないし、愛されるキャラクターは、商業主義に歪められたストーリーのなかには生まれてきません。これからのコンテンツ制作を担っていく方々には、商業偏重主義の問題点を十分理解し、真に愛される番組、キャラクター作りに励んでいただきたいと切に願います。

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