満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

ナスノミツル「life」ライブ終了。

2023-03-13 | 新規投稿
ナスノミツル「life」ライブ終了。
◎豊永亮+マツシタカズオ+津田謙司
昨年、初のアルバムをリリースした瑕疵のリーダーであるマツシタカズオ(alto sax,laptop)とそのメンバーでもある屈指のアヴァンギタリスト豊永亮、及びvjを担当する津田謙司によるトリオである。その演奏に脱構築と構築の忙しい作業場に遭遇したかのような感覚を覚える。マツシタ氏の緻密な楽曲はライブという現場で、自由を得て拡散する。I padに収納した鍵盤を全て計算されたセオリーで演奏しながらもナチュラルな歪み、反響が楽曲を変化させ、恐らくはマツシタ氏の当初のイメージからも離れて音が生まれてくるのではないか。長く発信される女性ボイスのナレーションのSEにシンセサイザーとノイズが絡み、豊永亮の超個性的に軋むギターがアクセントを刻む。豊永氏のギターワークは場面によって抑制的になり、的確な射撃のようにピンポイントな音の礫を投じるようだ。いや、と言うより、楽曲の内側で演奏する力量はいわゆる対応ではなく豊永氏にとっての対峙であろう。その意味で彼本来の奔放なギターノイズをマツシタ氏がコンセプトを示しながら交互に反応する内的実験のような作業が反復されているように感じ、結果、流動する生き物のような音楽の生成を観た気がする。vJ津田謙司氏のモノクロームな点滅光の映像が音と融合されたマツシタ氏のコンセプトに沿った表現世界であった事は言うまでもない
◎Juri Suzue + 宮本隆
ここ何年かソロでの圧倒的なライブが徐々に認知されるJuri Suzueですが私は彼女のサウンドとベースとの相性が合うと思い、秘かに共演を望んていました。ただ、初めてのduoに際し私はJuriさんに「ソロみたいにやってね」と注文した。と言うのも普段、ソロで圧倒的なパフォーマンスをみせるJuriさんが、ことセッションや誰かしらとのduoになると、謙虚な性格が出てしまうのか、演奏もやや控えめな印象を与えるものになるのを何度か見てきたからであった。結果、リハーサルでも良い感触が得られ、本番のフルボリューム感とJuriさんのミッドハイに体位するローを担う事が出来たかなと自負した次第。
◍ ナスノミツル+豊田奈千甫
ナスノ氏の作るリフ、メロディのさり気ない雄弁さが光る。僅か1小節に込められる耀くような美。アレンジと作曲の隅々に行き渡る世界観の妥協無きビジョンの音楽。今まで幾度も目撃してきたナスノ氏の一貫したポリシーとも言える"内面の具現化”がここに来て、より顕著になる現場に立ち会った気がする。
ここまでストイックになれるものなのか。少なくとも卓越した演奏技術を持つ者がこのような静的、抑制的なアプローチを行う事実に感銘する。私は演奏後のナスノ氏にはっきりその事を伝えた。
本来、技術と感性は対立するものではなく、相互補完の関係、あるいは相乗の不可分と思えるが、ナスノ氏にあっては、かような意識の区分けさえ最初から無きの如く自然体そのまま音楽に向かっている。恐らくは内面に映る映像のサウンドトラックを奏でるのに何をすれば良いか。彼の演奏アプローチはその一点に絞られているのだろう。
アンコールに応え「Blue」を演奏したナスノミツル。この幾度となく演奏してきた彼のテーマソングとも言えるナンバーを「京都時代に作った曲で未だにあの頃の自分を引きずってます」とMCした彼はここに自らの原点であるダークランド、ニューウェーブの感性の内側に棲む永遠の住人である事を図らずも証したのだった。
最後にナスノミツル+豊田奈千甫、及び、Juri Suzue + 宮本隆で即興的に映写VJを行ったheureuxの反応の素早さ、音への嗅覚アプローチが音楽の現場力とも言える高揚を倍加させるに至った事も付け加えておく
◍ 3.12(sun)◍ ナスノミツル
◍ guest : 豊田奈千甫 (laptop,etc)◍Juri Suzue + 宮本隆◍豊永亮+マツシタカズオ+津田謙司◍VJ:heureux@environment0g

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 明日のナスノミツル、ソロア... | トップ | Juri Suzue+宮本隆 @ environ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

新規投稿」カテゴリの最新記事