満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

スタティックで淡々とした内容のイベントも想定していた12.17【sonic counterpoint音響対位法】でしたが

2023-12-20 | 新規投稿

スタティックで淡々とした内容のイベントも想定していた12.17【sonic counterpoint音響対位法】でしたが良い意味で予想を裏切られる濃厚で高揚感溢れるイベントになりました。川崎義博氏はリハーサルの時、機材のチェックに悩まされておられ、音は断片的にしか発しません。大丈夫かなと少し心配にもなりましたが、そのまま、サウンドチェックを終わられ、本番に望みます。逆にまるで当イベントのコンセプトに合わせてもらったかのような実験的なリハーサルに集中していたのが磯端伸一氏(g)。江崎將史(tp) とのDUOは当然、お二人の微音を駆使した間の応酬による空間表現になると思いきや、全く想定外の実験音響になる事が判明。即ち磯端氏はトレードマークであるフルアコースティックではなく借り物のチープエレキギターに様々なアナログハンドメイド装置を連結し、ハーシュノイズを発し、江崎氏は「今日は爆音でいきます」と宣言。これはどうなることやら〜と怖さ半分、期待半分の余談を許さないパフォーマンスになる事、必至です。

 

出番トップはS-NOIこと古川正平くんと私のユニットであるZero Prizm。この日はいつものテクノビートを封印し、即興で室内楽的アプローチを試みました。これは成功。そしてラストのみ、いつも演奏する変則テクノトラック(a-3という曲)をハードに演奏。メリハリも作れたかなと納得しました。

2番手は石上加寿也live electronics、 北村 千絵   voice、Keruko dance/performanceの即席トリオ。即席でしかも簡単なサウンドチェックを済ませただけにも関わらず、その音の出し入れ、発声のタイミング、ダンス/パフォーマンスが全て図ったような一体感で進み、即興のストーリーテラーを演じます。石上氏のノイズ音響に時折、女性Voiceが混じり、北村さんのVoiceと重なりどっちがどっちの声か判明できなくなる瞬間があります。それもそのはず、実は石上氏は北村さんの声をリアルタイムでサンプリングし、変形させながらアウトプットしていたのです。この人工的なものとリアルな肉声にKerukoの身体動性が縦横に行き交い時折、Kerukoは北村さんの声に反応し、自らも発声パフォーマンスを繰り出しながら、完全な3者一体を実現していました。聴視覚的な完成度です。

 

お客様多数ご来場の中、見覚えある男性が来店。時を経ず江崎氏が「山㟁さんの飛び入り参加良いですか?」と。見覚えある男性はパーカッション奏者、山㟁直人氏でした。

急遽、山㟁氏を加え、磯端 伸一 、江崎 將史のトリオで演奏。最初、磯端氏が彼らしい微音ハーモニクスでイントロを奏で、江崎氏得意のトランペット解体新書とでも言うべきその物体対処奏法を繰り出します。即ち、床に転がすように音を出し、ポンプをホールに注入し、床に垂直にトランペットを置き吹いたり、ブロウせずにバルブを指で激しくカチャカチャ鳴らします。山㟁氏はスネアを座ってスネアを掲げ、擦れる音、擦る音、勿論、叩く音を様々なモノで演奏していきます。磯端氏はリハでチェックしたハンドメイド機器でエレクトリックの打音やハーシュノイズをタイミング良く繰り出します。この3人のオーケストレーションは日常音や生活の喧騒の描写に溢れたものになり、3人のパフォーマンス性も含め見事でした。

 

そしてラストに登場した川崎義博氏。石上氏にMCをお願いし川崎氏の紹介をして頂きました。そして川崎氏自らもフィールドレコーディングの体験その他を話し、演奏が始まります。サウンドチェック時のトラブルとは打って変わったリアルサウンドのめくるめく連続でした。明らかに普段聴く、ドローン、エレクトロ、ミニマルとも違います。

つまりフィールドレコーディングの自然音が

1つの旋律的な動性を伴い、聴覚を刺激します。エレクトロサウンドと自然音が混雑せず、重層的に連なるように進行し、耳の端々にそれらの音の欠片が触れていく感触は初めての聴体験。しかも音が頭の中を回るような感覚があり、3Dや複数のスピーカーを部屋の四方に設置してるかのような音像がありました。しかも私がポイントと感じたのはサウンドの根底に流れる通奏低音の存在だったと思います。川崎氏は演奏を始める時、「先に出た3組が自分のやりたい事を結構、やっていた」と語り、具体的には磯端氏の水を注ぎサンプリングする音等を指してると思いましたが、公演後、私に対し「ベースで重低音をしっかり出す人、なかなか居ない」と褒めていただき、その重要性を認めて頂いたのかなと思った次第。そして私は川崎氏の音響にベース音がしっかり存在していた事、告げました。

それが川崎サウンドの肝であったと思っています。

 

12.17 (sun)sonic counterpoint 音響対位法 

@ environment 0g [ zero-gauge ]

●川崎義博sound art / live electronics

●磯端 伸一 guitar 江崎 將史 trumpet

●石上加寿也live electronics 

北村 千絵voice Keruko  dance performance

●Zero Prizm(S-NOI / Takashi Miyamoto




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