食わず嫌いとはよくある事で、アンドレ・ブルトンが嫌っていたという理由だけでジャン・コクトーを遠ざけていたのは嘗ての私がシュルレアリスム教の信徒であった証左です。曰く"芸術至上主義的”"ブルジョワ的”と言う事でしょうが、二十歳代半ばまではROCK-PUNKの左翼的メンタリティも充分、持ち合わせていたので、そのセクト感覚は尚更であったかもしれません。しかしポストモダン全盛の80年代の終わりかけに私の中で価値観の転換が徐々に起こる中、「コクトー全集」の詩篇にそれなりの感銘を受け、決定的だったのはやはり映画作品でした。ユーロ的耽美とアバンギャルドの共存する「美女と野獣」「オルフェ」の明快さと味わい深さに感動。今回の映画祭では初めて「詩人の血」を観ました。これはブニュエルの「アンダルシアの犬」と同時代の実験映画ですが、コクトーは物語の骨格を残しており、前衛の難解さを超えてました。やはりという感じです。
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