満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

DRAW SPACE FOLDS(辰巳小五郎×藤掛正隆) レコ発ライブ終了。

2019-11-11 | 新規投稿
DRAW SPACE FOLDS(辰巳小五郎×藤掛正隆) レコ発ライブ終了。出番トップはKAZUYA ISHIGAMI ×Sunao Inami。10年以上ぶりに共演したのが先日のspace eauuuでのライブだった二人の言わば、復活第二弾のライブ。静かなホワイトノイズから立ち上がり、徐々にボリュームを増していく。石上氏は砂の嵐のような重低音を敷き詰め、Inami氏がその上にリード的に音響を重ねる様はソリストのようなスタンスでもあり、ドローンに対するアンチとも捉えるべきロック、ニューウェーブ的な骨格感を感じさせる。その対比はある意味、絶妙であり、ユニットに相応しいと感じられた。伊達に長く共演を重ねてきた二人ではない。DUOをやる意味、意義をしっかりと見せつけてくれた演奏だったと言えよう。惜しむらくは演奏時間が意外に短かった事。次回は一時間くらいのロングバージョンでも聴きたいユニットだった。
そして宇都宮泰氏が2番目に登場。アーティスト名はYasushi Utsunomiaと表記。平野氏(zero-gaugeオーナー)によるキャッチは<大阪が世界に誇るマッドサイエンティスト>いや、そのままズバリのパフォーマンスだった。‘テレパスボイス’という仕掛けは宇都宮氏が話す声が実際は壁面のスピーカーから出ているのだが、オーディエンス一人ひとりの耳元で聞こえる。そして壁面に映し出される波形を操作しながら、単音による超音波を奏でる。その音はエレクトロでもシンセ音でもない。なるほど、これが宇都宮氏の提唱する‘超純音’なのだ。電子音楽の発祥の時期の音にも近いのだろう。何ものにもエフェクトされず、シンプリファイズされた純音がそこにあった。しかも緩やかな上下と音の振幅があり、心地よい。細く強烈な音が聴覚に突き刺すような超音波をイメージしたが、むしろ更に音楽的に響くのはやはり、ライブという場での生成の成せる業であったか。いずれにしてもすこぶる興味深く、あまり他では体験できない音楽だったと言えよう。
トリは2ndアルバム「NEURON VOYAGE」をリリースしたばかりのDRAW SPACE FOLDS(辰巳小五郎×藤掛正隆) 。アルバムの内容に沿った裡に沈むようなダークな音響をしばらく続けるのかと思いきや、SE的音響は短めに、藤掛氏のパワフルなオンビートに乗るジャズロック的展開が幕を開ける。辰巳氏はテルミンやガジェットを多用しディレイ、リバーブによる浮遊感系の音響を次から次へと繰り出していく。その音の全てが、とてもいい。バリエーションに富みながら全てがクリアであり、歪みがなく、楽器と機器に対するコントロールが完璧だと思った。つまり、音響を持て余してしまう事無く、全て意思に拠ってコントロールされている。ノイズを遮断する事にも長けていると感じ、このあたり、ライブの後、尋ねると、やはり、そういったノイズレスに関するこだわりを語ってくれた。それはエレキトランペットにも言え、電子音過多にならず、暖か味と深みのある快楽的サウンドであった。
さて二人の演奏に私が加わった後半戦。私はまず藤掛氏のドラムにシンクロさせグルーヴを作る事を心掛け、無理な冒険(ソロ的に前に出たり、リズムを外していったり)を避けた。何せ、藤掛氏との演奏は実を言えば長年の念願であり、それが叶ったのだから大事にいこうとやや、保守的になったのだが、ファットなドラムが気持ちよく、スケベ根性出して目立つより、ビートの快楽に身を任せ、シンプルに徹して正解だった。これまで何回か演奏を見て来て感じたビッグビートを真近で体感しながら、こんなドラムだといつまでも演奏したいと思った程。スネアの強さを微妙に変えたりする繊細さも感じながら、もっと自分はレベルを上げなきゃなと実感もした。秘かにずっと感じていたチコ・ヒゲ(フリクション)に通じる骨格感、土台の大きさを藤掛氏にイメージし、そのリズムの底辺に合致できるようなベースを弾かなきゃだめだと瞬時に思い、音色も含め、もっとジャストなベースを弾きたかったが、それはまたの宿題とする。いずれにしても藤掛、辰巳、両氏との演奏はこの上なく刺激的であった事を記しておく。
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