満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

OXYD (from France) in OSAKA終了

2019-11-05 | 新規投稿
11.4 OXYD (from France) in OSAKA終了。出番トップ時弦旅団。メンバーの並び位置を変えた事(荻野やすよしTRIOのドラマーGORIさんのドラムの位置を動かさず)が功を奏し、平野さん(zero-gauge)曰く、「いつもより音がいい」との事でこういった生音主体のハコではドラムの位置や演奏者の立ち位置も大事だなと実感。
続く荻野やすよしTRIOは3人の演奏技術、表現力が拮抗しながら荻野氏の独特のセンスに満ちた楽曲を作り上げていく。各人が譜面に忠実なスタイルを取りながらも固有のアレンジ、キメを加えているのがわかる。このあたり、いずれも毎日、違う人と、違う場所で演奏をするいわゆる職業プレイヤーの楽曲への瞬時の理解力の為せる業と解すればよいか。いや、そんな単純な理由ではないだろう。荻野氏が絶対の信頼を寄せるドラマー、松田“GORI”広士のまるで編曲者のような演奏を私はこれまでも色んなユニットでの氏の演奏で目の当たりにしているが、ビートのグルーブを当然のようにキープしながら、尚且つ歌い上げるような演奏の中に、センスとしか言いようがない創意への意思を感じることができる。それはコントラバスの斎藤氏にも同様の事が言え、後で話すと「とにかく譜面、見てます」とだけ言っていたが、音抜けの良さ、音の重さからロック的と言うか、単なる「演奏の仕事してます」的な職業プレイヤーの音色ではないものを感じていた。弾き方からは豪快さよりは繊細さの方がイメージされたが、時にギターより前に出るような独特のうねりがあり、音抜けと粒立ちの良さがGORI氏との相性の良さにつながっている。このTRIOのバンドカラーは荻野氏の大編成のリーダーグループ、音・人・旅のミニマム版と言えなくもないが、音・人・旅に見られるエスノ色は無く、純粋にギターミュージックによるアンサンブルという性格が強く、共通するのは荻野氏の美意識というか内側から出る静謐なセンスと暖かさであろうか。荻野氏特有の和らぎの精神がこのミニマムなTRIOでも発揮された。スタンダードではなくオリジナルを演奏する事も個人的には好感度、大。
トリのOXYD。事前の音源チェックでジャズ的と判断し、当人によるprogressive jazzというキャッチからイベントタイトルにもジャズを反映させていたのだが、実際は全く違った。文字通り、全くである。実態はprogressive jazzならぬprogressive rockであり、しかもUnivers Zero , Magmaに通じる暗黒チェンバーロックであった。リハでは分からなかったが、本番の出だしの怪しげなエレピとベースのハウリング気味の音響でおやっと思い、重い直角的なリズムに変則的なアンサンブル、マイナー調のメロを聴くに及びその実像を悟る。暗く、重い。これは予想外の音。ただ、私の好みの世界である。Univers Zeroとの相似は顕著だがそれは失点ではない。専属のPAオペレーターを同行させての今回の日本ツアーでOXYDはプログレ色をベースしながら全体のアンビエント的音響への関心が強い事も感じられ、そこに新世代的アプローチの巧妙を垣間見た。エレピ奏者でグループリーダーのAlexandre Hererの演奏はECM的なジャズに通じる浮遊性と即興性を感じさせ、プログレの構築感に対するジャズ的自由度を許容するものだった。しかも絶妙にいい音で演奏され、演奏と音響の両立という観点からも私はprogressive jazz rockと新たに命名したくなった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする