満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

my morning jacket    live at 心斎橋クアトロ 2009.2.6

2009-02-09 | 新規投稿

本国、アメリカではマディソンスクエアで公演するビッグネームをライブハウスで観る事ができる喜び。「でも多分、超満員かな。身動きできへんやろうな」と思いきや、会場に入るとガラガラで肩すかしを食う。余裕です。意気込んで整理券ナンバー14の前売りを買ってくれた廣川君と合流。座席すらも確保。予想外。こんな程度の入りなのか。

事前に告知された写真撮影と録音の許可はマイモーニングジャケットの音楽愛とシェアの思想の表れか。そこにあるのはシステムや管理に対する反抗ではなく、自由を体現する為の自然体を貫く‘素の思想’だ。グレイトフルデッドの精神は今もアメリカに息づき、ビジネスが表出する音楽情報や流通の形式とは‘別の流れ’を今尚、形成する。と言うことは音楽の享受の仕方も、これまたその多様性を誇るというわけだ。一方的な情報を追いかけたり、操作された価値に左右されたりしているとマイモーニングジャケットみたいなバンドをスルーしてしまう。日米での極端な人気の差はその表れじゃないのか。

今時珍しい位、良い曲を書き、骨太な演奏で聴かせるバンド。ギターの轟音リフに堅固なまでにヘヴィタイトなドラム。隠し味的な仕掛けを加味するキーボード。ツボにはまる典型のベース。アコースティックナンバーはクリストファークロス並の女声でしっとり聴かせます。適度なインプロ。ギターも取っ替え引っ替えで、それは曲の最中にもステージ袖から違うギターを大慌てで持ってくる。本当に必要?と感じるが、色んな音色を曲毎に変え、仕掛けを作り出しているのは判る。大らかなようで、実は細かいこだわりがある。伸びやかな歌声は極上。「コンニチワー」と「ドモアリガトー」だけのMC。演奏に強弱があり、うねりが充満します。ダイナミクスの付け方が最高。二時間半に及ぶ重厚なステージ。ひたすら演奏。ただただ、演奏。やってる方が楽しんでるね。バンド内の渦巻くグルーブ。オールドウェーブを熟知した‘ノリ’を出す演奏力を存分に見せつける。最高だったと言わせてもらいます。演奏の無限大の拡がり。音楽が狭いライブハウスを突き抜けて夜空へすっ飛んでいくようだ。こんなライブを体験したら、5年ほど前のニールヤング&クレイジーホース公演も大阪城ホールなんかじゃなく、狭いハコだったらな、と思ってしまった。

マイモーニングジャケット、全く素のままの本来的な‘ミュージシャン’。体の中から生まれくるような歌。今時の‘リスナー体質’と演奏の職人気質が融合する。歌う喜び、演奏する楽しさが伝わり、下から来るグルーブは幸福な昂揚感につながる。心は無だ。無心だよ。コマーシャルに揺れるのも自然体、思索的になるのも必然。どちらもこのバンドのカラーかな。曲の良さはちょっと格別。録音した音源、何回も聴き直しても飽きない。スタジオテイクよりライブの方がいいのは、本物のミュージシャンの証明。大抵は逆だからね。

久しぶりに‘典型的な’ロックを聴いた。
だからってロックに夢は託せない。ロックの未来?そんなものはない。大文字の‘ロック’は‘革命’と同義で、それはとうに夢果てたのだ。最早、ロックが個人とのパーソナルなつながりを強固にしてゆく志向性が何年も前からできているじゃないか。横の連帯じゃなく、音楽と個人の直線的結びつきの強化がロックと人間の第二次発展的なムーブメントなのだと思う。だから余計、ロックの質が問われる時代になっているのだ。ポイントは曲と演奏になると思う。アイデアじゃないよ。演奏だ。そしてリスナーの‘聴く耳’の強化だろう。ロックと人間の良い関係。次代のムーブメント。マイモーニングジャケットは一つの指針だろう。間違いなく。

2009.2.9
コメント
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