晴耕雨読 in 神鍋高原

~ものづくり・工場改善の本の紹介を中心に~

経営の本棚(25) 「ドラッカーの教えどおり、経営してきました」 酒巻 久

2016年08月21日 | 経営の本棚(2)

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第301回記事(2016年8月22日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
 経営の本棚(25) 「ドラッカーの教えどおり、経営してきました」 酒巻 久
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今回はドラッカー思想関係の本の紹介になります。
ドラッカー先生は「マネジメントの発明者」「マネジメントの神様」などと言われていますが、
私がドラッガー思想にどっぷりと浸かるのは初めてで、
調べながら、勉強しながら、解説本を比較しながら紹介文を書いています。

とっても参考になりますので、みなさんも一読ください。

◆この本の一番の価値は、
多くのドラッガー思想の紹介本がある中で、著者が「はじめに」の3pでも述べているように(※)、ドラッカー思想を実際に実践した記録である点です。しかも、素晴らしい結果を残されています。
(※) 数多あるドラッガー解説本に本書を加える意味があるとしたならば、それは、ドラッガーの思想を実際の仕事、経営の中で実践してきた記録であるという、その一点だと思う。

◆著者の酒巻久先生は、
キャノン入社の初任給で、ドラッガーの「経営の適格者」を購入されて、それ以降ドラッカリアンになられ、特に経営の面からはキャノン電子の社長になられてからドラッカー思想を活用されて、就任当時は約1%ほどの経常利益率のキャノン電子を、約6年で経常利益率約13%に向上されました。これからもドラッガー思想と酒巻先生の手腕のすごさがわかります。

◆本の目次は、
 第一章 利益の出し方
 第二章 自ら動く社員をつくるマネジメント
 第三章 変化を捉える企業戦略
となっています。本を読んでみると、ドラッカー思想とキャノン電子での実践事例が交互に出てくるかたちになっています。実践事例はわかりやすいのですが、ドラッカー思想は正直わかりにくい(というよりも、たいへん深淵である)というのが本音です。ドラッカー思想と実践事例をつなぎながら、各章のポイントを個人的にまとめてみました。

◆第一章 「利益の出し方」のポイント
サブタイトルは「経営者が、赤字を黒字に転換するためにすべきこと」となっています。では、経営者がまず最初に何をするべきか?
ドラッカー先生は、
 「体系的廃棄を行いなさい」
と言っておられます。
ある程度歴史のある会社ならば、沢山のムダがたまっているのではないでしょうか。いや必ずあるはずです。ムダな仕事やムダな時間を削減することで赤字を黒字にすることが可能です。
酒巻先生は、
 まず必要としなくなった子会社を整理し(21p)、
 TSS1/2(タイムアンドスペースセービングという時間と空間等を1/2にする改善活動)
を行うことで、6年で経常利益率を約13%まで延ばされました。徹底的にムダをあぶり出し、そのムダを改善することを酒巻先生は「会社のアカスリ」と呼ばれています。

次に経営者は何をするべきか?43pに次のような参考になる記載があります。
 「ムダの根本は、利益に貢献できない、働きのよくない従業員ともいえる。」
つまり、社員の働き方を変えるようにすればよいことになります。そのためには、事業の目的を具体的な目標に置き換える必要があります。
ドラッカー先生は、
「事業の定義は、目標に具体化しなければならない。そのままでは、いかによくできた定義であっても、優れた洞察、よき意図、よき警告に過ぎない」(44p。マネジメント エッセンシャル版より)と言われています。
酒巻先生は、
TSS1/2ですべてのものを半分にしなさいという、具体的な目標を提示して、改善をすすめられました。また、繊維メーカの経営改善では、A4用紙3枚にわたって書かれていた目標を、「3行」に書き直してもらいました。(A4用紙3枚にもわたる目標では、従業員が読まないし、何を優先すべきかわからないですよね。)

◆第二章 「自ら動く社員をつくるマネジメント」のポイント
サブタイトルは、「マネージャーが社員の自主性を引き出すためにすべきこと」となっています。つまり、マネジャーがすべきことが書かれています。
まず、タイトル中の「マネジメント」について確認しましょう。マネジャーといえば「管理」する人というイメージが日本では強いので、マネジメントとは管理することとの誤解がありますが、
ドラッガー先生の
 マネジメントの定義は、「組織に成果をあげさせるもの」
となっています。つまり、「管理」よりも
 マネジメントの目的は、「個々人の能力を引き出すこと」
と考えた方がよいということになります。
この点では、酒巻先生は
「部下をお客様と思わないといけない」(115p)と書かれています。

そのお客様と思うべき部下が自主的に動くためには、
 ①社員の強みを知り(、強みが発揮しやすい仕事を与え)(118p)
 ②仕事の目的・目標を明示し(126p)
 ③達成可能な適切な目標を設定して、仕事の達成感を味わってもらい(132p)
 ④必要により、質問による自主性を養生する(136p)
などが必要と記載されています。

マネジャーの役割は、部下の仕事の進み具合を適宜チェックして、結果がでるまでフォローすることであり、その役割を正しく遂行するためには、「部下の観察」が極めて大切であると書かれています。朝イチ、午後イチ、帰り際の部下の観察がが大切である。特に、帰り際の部下の背中には本音が現れることが多いとのことです。参考にしたいですね。

◆第三章 「変化を捉える企業戦略」のポイント
この章のサブタイトルは、「ドラッカーが教えるイノベーションの意味」となっています。
イノベーションについては、シュンぺータ先生のイノベーションのイメージが強く、ドラッカー先生のイノベーションは誤解されている部分が多いようで、その誤解を解くところから説明を始めないといけないので、この章のポイントの説明は省略させていただきます。

                                       井上 直久(記)

データ
〇著者 : 酒巻久
〇出版社 : 朝日新聞出版
〇出版年 : 2011年
〇ページ数 : 226p
〇価格 : 1300円+税(当時)
〇表紙 :

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