晴耕雨読 in 神鍋高原

~ものづくり・工場改善の本の紹介を中心に~

ものづくり・工場改善 会社編 ⑤ 「はばたけ」 玄さんがんこサブレ 

2014年03月30日 | ものづくり・工場改善 会社編

第188回記事(2014年3月31日(月)発行)(毎週月曜日発行予定)

(独り言:今、もの造り企業の環境はたいへん厳しいですね。3K職場ですし、海外から安価なものが入ってくるし。
また、但馬は”谷間”から来ているのではと言われるくらい平地が少ないところです。
そんな但馬地方のもの造り企業の応援の気持ちでこの記事を書いています。
                                       井上三郎右衛門@晴耕雨読)

今回は、企業とは違い、福祉作業所さんの紹介です。福祉作業所をご存知ない方も多いかもしれませんが、障害を持った方が働いておられる処です。色々な問題を克服されて、玄さんそっくりの形をしたサブレ(クッキーとほぼ同じです)を作り上げ、スイーツの大会で準グランプリをとられました。そのサブレに関するこだわりをご紹介します。

<玄さんが準グランプリ>
●ある日「玄さんが準グランプリ」という記事タイトルを見て、私はたいへんがっかりしました。理由は、玄さんには他のゆるキャラにはない独特の特徴があり、多くの人でなくても一部の人に深く愛されてほしい、くまモンやふなっしーのように人気ものになる必要は全く無い、玄さんは玄さん独自のキャラクターがあり(渋キャラというようですが)、その点を伸ばしていってほしい、そんな風に強く思っているからです。

●記事をよく読むと、ゆるキャラのコンテストと思ったのは私の先走りでした。しかし、準グランプリをとったのは「スイーツ甲子園」というコンテストで、玄さんとスイーツは全く似合わないとまた思いました。が、記事の内容を読み、詳細を調べていくうちに、そのスイーツは本物の玄さん以上に玄武岩に似せたスイーツをつくることにこだわりを持たれ、約1年間もの開発期間を経てできあがったものだということが分かりました。

●準グランプリを受賞されたのは、豊岡市手をつなぐ育成会の障害者多機能施設「はばたけ」さんの「玄さんがんこサブレ」で、第5回スイーツ甲子園(NPO法人兵庫セルプセンター主催。2013年11月10日開催)での受賞です。コンテストには兵庫県・関西地区以外からも複数のエントリーがなされ、さながら全国大会の様相のコンテストです。
では、「玄さんがんこサブレ」の形、色・食感、味に関する「がんこ」なこだわりについて以下に紹介します。

<まず、形にこだわる>
●玄武岩の特徴は独特の6角形ですが、これが形へのこだわりに繋がります。まず下記の写真の玄さんがんこサブレの形状をよく見てください。ほぼ6角形をしていますが、本物の玄さんに似せるため鉢巻や口のところが飛び出しています。この部分はサブレの生地を金型(金属で出来た原型)で抜く場合にちぎれ易く、特に鉢巻の先端は形が崩れやすい部分です。
Photo

●また、表面の凸凹は玄さんの顔をリアルに表現するには大きくするのが良いのですが、大きくしすぎるとサブレが割れやすくなってしまいます。ある程度の凸凹で玄さんの顔をリアルに表現する必要があります。鉢巻のねじり具合がとってもリアルですね。実際の金型作りでは、今までお菓子の金型を作製したことも無く、インターネットで金型メーカをやっと探しだされたそうです。また、金型メーカとの打ち合わせや、試作によりわかった問題点の改善に苦労されたそうです。
Photo_8(金型はしわまで再現されています)

●サブレの生地を実際に抜く製造現場を見せていただきました。作業者の方が丁寧に金型でサブレの生地を6角形に抜かれていました。しかし、一番驚いたのはその後、余分な生地を外すために竹串を使って、丁寧にそして起用にサブレの生地をまるで玄さんの顔を掘り出すように作業をされていました。機械化された製造工程とは異なり、一つ一つが手仕事で行われています。
Photo

<そして、色と固さにこだわる>
●形へのこだわりの次に、色と固さにもこだわられました。サブレの商品開発にあたり、玄武岩は当然石ですからそれらしい色のものにしたいし、また石であるだけに少し固めの食感も実現したい。そう思われたそうです。とくに、キャラクターの玄さんが白っぽい色になっているだけに、本物の玄武岩の色により似せたいと思われたそうです。

●そのため、まず材料として黒ゴマと黒糖を使うことを先に決めて、その後配合を工夫されました。その時、黒ゴマはペーストを使用すると色は近いものになるのですが、固さ・食感に問題が出て、わざわざ黒ゴマをミキサーでスライスして練りこむことで固さ・食感を出しているそうです。さらに、ゴマに脂分があり、バターとの量の調整を何回か試作することで食感がよくなるよう決められたそうです。
Photo_4(左:いり黒ゴマ 右:ねり黒ゴマ)

●商品の集合包装には、「黒糖&黒ゴマ」が特徴と記載されています。
Photo_2

<もちろん、味にもこだわる>
●もちろん味にも大変こだわられています。そのこだわりは、材料にこだわることとも繋がってきます。個装袋の裏の原材料表示を見てください。
Photo_6

●小麦粉は安全・安心を追求するため国産を使用されています。
バターには「四つ葉バター」を使用されています。マーガリンや普通のバターよりかなり高価です。私のいわゆる作業所のスイーツに関する経験では、技術力が高くノウハウの蓄積がありおいしいスイーツを作られる作業所さんほど、ただの「バター」ではなく「発酵バター」や「四つ葉バター」を原材料欄に記載されています。
鶏卵は地元で有名な「おかちゃんたまご」を使用されています。但馬地方限定の出荷で、卵黄の色が鮮やかで盛り上がりがあり、味が濃厚で、評判が大変良いそうです。
塩は普通の塩ではなく、岩塩を使用されています。

黒砂糖で最後にほんのり独特の味が出てきます。
黒ゴマは香ばしさとしっかりした歯ごたえを狙っています。

●原材料表示の上のシールにあるように「壊れやすさは美味しさの証」だと思います。

最後に玄さんから一言

「がっせぇうめーしけー 食うてくれーやー」
 
(とってもおいしいから 食べてねー)
 

<販売について>
この「玄さんがんこサブレ」は、
 〇「はばたく」さん(豊岡市九日市中町75。Tel0796-23-3350)
以外では、以下のところで売っているそうです。
 〇道の駅 神鍋高原(豊岡市日高町栗栖野。国道482号沿線)
 〇玄武洞ミュージアム(豊岡市赤石。玄武洞の道を隔てた向かい)
 〇コウノトリの里公園の売店(豊岡市祥雲寺。コウノトリ公園内)
 〇北前館(豊岡市竹野町竹野。竹野浜海水浴場近く)
 〇いたや商店(豊岡市城崎町湯島。城崎温泉一の湯前)
 Photo_7(道の駅 神鍋高原にて)

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最徐行!の玄さん

2014年03月23日 | 玄さん

第187回記事(2014年3月24日(月)発行)(毎週月曜日発行予定)

まずは「交通安全」ですね。

Photo

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ものづくり・工場改善 見える化 ③ 見える化 遠藤功

2014年03月16日 | ものづくり・工場改善 見える化

第186回記事(2014年3月17日(月)配信)(毎週月配信予定)

今回の記事は「見える化」の3回目で、本の紹介になります。
実は大変(気持ちが)「滅入る化」しています。
理由は簡単で、5Sと比較して見える化は、言葉の定義などが無く、「見える化」の対象範囲が不明確で、読む本ごとに独自の考え・世界があり、まとめ方が困難なためです。
その中で、今回の本は「見える化」のブームの火付け役となった本で、「見える化」の対象範囲(本の中ではカテゴリーという言葉が使われています)や「見える化」のバリエーションの説明が記載されており、他の本を読む前にぜひ一読しておきたい本です。

データ
 著者:遠藤功(株式会社ローランドベルガー会長。早稲田大学ビジネススクール教授)
         (2013年3月に講演を聞かせていただく機会がありました)
 出版社:東洋経済新報社
 ページ数:200p
 出版年:2005年
 定価:本体1600円+税
 表紙写真:
 Photo

目次
 序章  「見えない現場」と「見える現場」
 第1章 「見える化」とは何か
 第2章 「見える化」の体系と事例紹介
 第3章 「よい見える化」を実現するために

<ポイント>
個人的に強く認識したポイントを書き出してみますと、
●まえがきのⅰxページに「私の知る限り、「見える化」に関する経営的な観点からの研究や体系化はこれまでの前例がない。」と記載されており、「見える化」に関する初めての体系的研究の本と思われます。
●まえがきの中の項目別タイトルに
 「見える化」の本質がわかっていない
という言葉が出てきます。この言葉から著者は少し危機感的な思いを持たれているように思われます。よくよく今自分達がやっていることを振り返ってみて、表面的な活動になっていないか、経営的な成果が出せるものなのか、確認する必要があります。
●第2章では34例もの豊富な事例が紹介されており、今後の自社での「見える化」の活動の参考になると思われます。
●「見える化」の定義(75p)、「見える化」のカテゴリー(61p)、「見える化」のバリエーション(48p)など、「見える化」に関する整理をするためには大変有効と思います。
●また、182pからは効果的な「見える化」のための10のポイントが記載されており、今後の自社での「見える化」の活動の役に立つのではと思います。

<独り言>
●「見える化」は言葉は平易だが、実に奥の深いコンセプトだ(この言葉は本の中のどこかに記載されていましたが)と思います。「見える化」の活動を具体的に分解してみると、
 ①「見える化」したい(すべき)情報を明確にし、
 ②その情報を見つけた人が、情報が必要な人に「見える化」し、
 ③見える化した情報により、みんなで改善活動などを行う。
ということになりますが、それぞれのステップでいくつか問題点があることに気づかれると思います。
●終わりから遡って行きます。
まず、③のみんなで改善活動などを行う点では、ただ情報を掲示しただけで行動が起こされていない。具体的には、市場からの不具合件数は目標値をかなり上回っているがちっとも具体的な改善活動が始まらない。
さらに②の情報を発信する人と情報を受ける人と情報の発信方法では、不具合の情報を品質保証部門と事業部門でメールでやり取りをしていたが、掲示板での開示にしたがほとんど見られていなかった。これと同様の記載が本の中にありますが、個人的にも同じ経験をしています。また、先ほどの③の問題点で書いたように、改善が開始されないなら開示をする対象者は適切かどうかという疑問があります。
さらに①の見える化すべき情報が、「見える化」という言葉の基に何でもかんでもになってしまっている。たとえば掲示板に多くの指標の推移グラフが掲示されているが、これらは吟味されたものか。たな卸しした結果のものか。
●いくつも問題点が今の現場に、今の「見える化」にあるのは確かですが、問題を絞り込むと、
 「現場での問題解決が出来てこその見える化」
であると考えます。解決行動無き「見える化」は無意味です。目標値と実績値の乖離の度合いで行動をおこさないという判断もありますが。

三郎衛門(記)

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勝手に神鍋遺産 ④ 【山宮区】ソーラパネル

2014年03月09日 | 勝手に神鍋遺産

第185回記事(2014年3月10日(月)発行)(毎週月曜日発行予定)

●最近、時間が経つのが早いなと感じています。
特に年を取るほどその傾向が強いようです。
遺産は古いもの、時間が経過したものというイメージがありますが、今回はとっても新しいものです。
しかし、今後も残っていって欲しい、残していって欲しいものです。

●山宮区のかつてスキー場があった敷地にソーラーパネル(太陽の光を半導体で電気に変換する板)が多数設置されています。
広い敷地に、はるか彼方まで、20~30列のソーラパネルばかり並んだ景観は、実に実に壮観です。
何家分もの消費電力をまかなえるのでしょうね。
Photo 
ソーラパネルの裏側から撮った写真です。

こちらは、ソーラーパネルの表側からの写真です。
整然とパネルが並んでいます。また、南に向いて、太陽が多く当たるように傾斜がつけてあります。
Photo_3

●冬は雪が降り太陽光が当たりにくい場所になぜソーラパネルが設置させたの?と疑問をもちました。
そして、もしかしたらと思い当たる点がありました。
豊岡の神美の工業団地にカネカさん(昔は鐘淵化学さんと言っていたと思います)の工場があるのですが、
そのカネカさんがソーラパネルをつくられているからでは。
実は、仕事の関係でカネカさんとは多少関係がありました。
ソーラパネルの設置場所は広い敷地が必要ですし、
その敷地は南方向が開けていて太陽光を効率的に受けられる必要があります。
この土地はそれらの条件は満たしています。

●エネルギー問題を多少でも緩和し、CO2を排出しないようにするために、
今後いっぱい発電をして欲しいものです。

三郎衛門(記)

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経営の本棚 ⑥ 絶対にゆるまないネジ 若林克彦

2014年03月02日 | 経営の本棚

第184回記事(2014年3月2日(月)配信)(毎週月曜配信予定)

<はじめに>
●今回は、大阪府東大阪市にある「ハードロック工業」株式会社の代表取締役社長をされている「若林克彦」さんの書かれた「絶対にゆるまないネジ」という本をご紹介します。

<内容>
●若林社長は、「東大阪のエジソン」とも言われており、ネジに関する特許・実用新案を取得されて、差別化できそうもない「ネジ」で世界一の商品を生み出し、事業を行っておられます。しかし、アイデアがいくら良くっても、それを実用化するレベルまで高めることも大切ですし、コスト低減も大切ですし、売れるようにすることも大切です。それらの困難をひとつひとつ克服されて現在のハードロック工業があります。2012年6月期の売り上げは約12億5千万円とのことです。

●この本のポイントは、サブタイトルである~小さな会社が「世界一」になる方法~
からもわかるように、中小企業の生き残りを考えた場合の一つの方法として、技術的アイデアをベースに、どのように成長し、オンリーワンとなって生き残っていくべきなのかを指し示してくれる本です。下請けからの脱出を考えておられる方などに有効な本ではと思います。

<データ>
 表紙:Photo
 著者:若林克彦
 出版社:中経出版
 ページ数:223p
 出版年:2011年

<独り言>
▲「日刊工業新聞」(インターネット版)の「元気印中小企業」コーナに、2014年2月21日付けで「ハードロック工業」さんの紹介記事が掲載されています。本のあらすじはこちらの記事とほぼ同じです。参考にしてください。
▼私もかつては技術者で、特許・実用新案を60~70件くらい書いた覚えがあります。しかし、事業に繋がらなかった。事業に繋がらなかった・事業にならなかった理由を当時は他責で考えていましたが、この本を読むと自責にしないといけないと思います。
◆自社の売り上げが上がらない理由を、景気が悪いといった他責には簡単に出来ますが、自責で考えることで、突破口が見えてくるはずです。嘆いてみても何も始まらない。

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