晴耕雨読 in 神鍋高原

~ものづくり・工場改善の本の紹介を中心に~

あなたの会社をお救いします ~事業再生総合病院~ 洲山 / 経営の本棚

2022年07月17日 | 経営の本棚

〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇


これが、今回の記事で紹介する本です。

〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇〇△◇

4月だったでしょうか。家に帰るために駅前のバス停でバス待ちをしている時に、タクシー乗り場のある異変に気が付きました。
「今まではタクシー会社2社の車が客待ちをしているのに、1社の車が全くいない。」
時間によってはありえることですが、どうもおかしい。もしかしたら。そう思い、後日、駅近くのタクシー会社さんの本社を訪れてみました。玄関には以下の張り紙が。

             告示書

その張り紙には「事実上倒産」「自己破産」の文字が。コロナ禍でどの会社も経営的に厳しい中で、悪戦苦闘されていますが、最悪の事態が発生してしまいました。このタクシー会社さんとは一時支援金・月次支援金の申請のお手伝いをさせていただき、経営状態は何となく感じていましたが・・・。

そんなことがあったものですから、今回は以下でご紹介する、「事業再生」に関する本をピックアップしました。著者の方は「事業再生」に関する経験が豊富で、本の中では事業再生についての手順・ステップが大変わかりやすく書かれていると思います。ご一読をお勧めします。

******************************************
 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」 
   第455回(2022年7月18日(月)配信)・・・・・毎月第1第3月曜日配信予定
 「あなたの会社をお救いします ~事業再生総合病院~」 洲山 / 経営の本棚
******************************************
はじめに
事業再生はどんな手順・ステップで進めるかについて、目次を見ていただくとわかりやすいので、まず目次を記載します。
第1章 「洲山再生総合病院」があなたのお命をお救いします!
第2章 ようこそ、洲山再生総合病院へ
    ~受付問診・初回診断
第3章 緊急止血で、「一命とりとめ」
    ~応急処置室で「とにかく止血」
第4章 社長さん、即、「入院」してください!
    ~あなたの会社を徹底ドック
第5章 内科での「総合治療」で完全治癒を目指す!
    ~効果絶大の輸血・点滴、投薬、食事療法
第6章 ヤバイ会社の手術開始
    ~外科・ICU治療室での復活劇
第7章 「おめでとうございます!」リハビリも順調に、いよいよ退院
第8章 銀行に、笑ってお金を返そう!
    ~事業再生「成功へのゴールデン・ルール」
病める会社を病人に例えて書かれていますので、ポイントとなる点を太字にして、会社の場合はどんなことをするのか説明します。
緊急止血⇨会社から社外に流出する現金(主に銀行への利子や借入金元本)の返済をやめる
徹底ドック⇨会社の状況を精査する、財務・事業DDなどを実施する
輸血・点滴⇨特に輸血は残されている資金調達方法で、資金を調達する
手術⇨不採算部門撤退やM&Aや人員削減等に相当します。

書かれている4つのポイント
書かれている内容を4つのポイントにまとめてみました。
一つ目のポイントは、緊急止血に関係することですが、倒産するのは「返せない金」「払えない金」を払おうとして、手持ちのお金が無くなるからです。返せない金を返そうとして倒産されてしまうと、銀行も迷惑なのです。その点から、銀行も相談にのってくれる(いわゆるリスケの相談にのってくれる)可能性があります(61p~64p)。(ただし、利益を出していない場合などは、危ない会社と思われるので、自分で自分の首を絞めることになることもあります。)止血方法としては、主に以下の4つがあります。①銀行への返済を止める、②リースの支払いを止める、③家賃の支払いをストップする、④社会保険・税金の納付を待ってもらう。
二つ目のポイントは、緊急止血に関係することですが、リスケをやるならバッサリです(71p)。中途半端なリスケなら、しないほうがよいということです。出血量を少なくするだけの処置では、遅かれ早かれ出血多量に至るのですから、中途半端なリスケでは、ほとんど意味がありません。棚上げする元金の額を大きくすれば、「返済を減額する」ことが、「新規融資」を受けるのと同じ効果を生みます。これがリスケの奥義になります。
三つめのポイントは、病気やけがを治すのは、実はドクターではなく、患者さん本人なのです(42p)。患者さん本人に治る気、治す気がなければ、治る病気やけがも治りません。実際、経営改善計画が作成されても、実行できなければ、治癒(健全な会社への復帰)はありませんので(238P)。必ず救われる患者さんのタイプは以下になるそうです。①踏まれても蹴られても「あきらめない」タイプ、②専門家であるドクターの意見を「素直」に聞き入れるタイプ、③「隠し事をしない」タイプ、④「実行力」のあるタイプ、⑤「判断力・決断力」のあるタイプ。これらの5つを全てかねそなえた社長さんなら、病院に来た時にはかなりの重症でも、とんとん拍子に治療が進み、完治するケースがほとんどだそうです。
四つめのポイントは、リハビリ時(経営改善計画実行時)、資金繰表を作成し、常にお金の出入りをチェックすることです。(202p)資金繰りについては、4つのポイントが202pに書かれていますので、記載します。①「利益がある=お金がある、という考えを捨てる」、②「資金繰表を作成し、常にお金の出入りをチェックする」、③月ごとの入金期日を、支払い期日より前に設定する」、④「現金決済に徹する」。ここまでやれば、まず「資金ショートはあり得ない。」そうです。

データ
著者  :洲山(希望大地会長)
出版社 :幻冬舎
出版年 :2011年
定価  :本体1100円+税
ページ数:254p
外観  :記事の先頭に写真があります。

井上 直久・・・大変参考になる本でした

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ドラッガーの時間管理術」 吉松隆 / 経営の本棚

2022年02月20日 | 経営の本棚


ご近所の家の庭から道にはみ出している木の実。

******************************************
 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」 
   第451回(2022年2月21日(月)配信)・・・・・毎月第1第3月曜日配信予定
 「ドラッガーの時間管理術」 吉松隆 / 経営の本棚
******************************************

先日、表題の本を読んでいて、時間どろぼう対策に関連して、CIAの前身の組織が作成した、相手組織に送り込まれたスパイがその組織を崩壊させるためのマニュアルが書いてあり、大変面白いなと見ていました。127p。そしてその翌日の新聞でも「秘密文書が教えるダメ会議」というタイトルで同じ内容のことが載っていました。もの凄い偶然ですので、ぜひ皆さんにも知ってもらいたいと思い、その「サボタージュ・マニュアル」の一部を記載します。

書いてある内容とは逆のことをしたら、またはこれらのことをしなければ、生産性が必ず上がるということになります。思い当たる点があれば直ぐに改善しましょう。

・何事をするにも「決められた手順」を踏んでいなければならないと主張せよ。迅速な決断をするための簡略した手続きを認めるな。
・重要な仕事をするときには会議を開け。
・可能なところでは「さらなる調査と検討」のためにすべての事柄を委員会委ねろ。委員会はできるだけ大人数とせよ(けっして5人以下にしてはならない)。
・もっともらしい方法で、ペーパーワークを増大せよ。ファイルを複製することから着手せよ。
・以前の会議で決議されたことを再び持ち出し、その妥当性をめぐる議論を再開せよ。
・あらゆる決断に対する妥当性について懸念を示せ。計画された行動はそのグループの権限内にあるのか、それが上層部の方針と矛盾していないか懸念を投げかけろ。
・指示、小切手などの発行に必要な手続きと認可を増やせ。一人でも十分なことに、3人が認可をしなければならないように取計らえ。
『サボタージュ・マニュアル』

井上 直久

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経営の本棚(23) 「技術のある会社」がなぜか儲からない本当の理由 片山和也

2016年05月22日 | 経営の本棚

****************************************
 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第289回記事(2016年5月23日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
 経営の本棚(23) 「技術のある会社」がなぜか儲からない本当の理由 片山和也 
****************************************

本のタイトルは、
「技術のある」会社が儲からない本当の理由
となっていますが、むしろ
「そこそこ技術のある会社」が今後生き残っていく方法
を書いた本と考えてください。

この本を御紹介したいと思ったのは、
厳しい状況が続く国内製造業の各社は、
どういう方法で生き残っていくのか?
正解というものはないと考えますが、
しかし、この本にはいくつかの方法が書かれています。
その点でたいへん参考になります。
一読ください。

PS
ただ、読むだけではだめですよ。
読んだ内容を、自分で腹落ちさせ、実行する。
実行したら、結果が出るまで続ける。



データ
著者:片山和也(船井総合研究所でコンサルタントをされています。)
出版社:中経出版
価格:1400円+税
出版年:2011年
ページ数:254p

                                                 井上 三右衛門

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経営の本棚(22) 「IEという名の魔法の虫めがね」 井上眞

2016年04月03日 | 経営の本棚

****************************************
 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第283回記事(2016年4月4日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
 経営の本棚(22) 「IEという名の魔法の虫めがね」 井上眞
****************************************

本のタイトルの中にある「IE」とは、
「インダストリアル エンジニアリング(Industrial Engineering)」のことであり(頭文字を取ったものであり)、
「生産工学」とも言われます。

著者の井上さんは、日産自動車から、関係の販売店に出向され、自動車の法定検査等を行うサービス工場の生産性向上に努力されました。
この本はその時の、IEを用いた生産性向上・体質改善を活動をまとめられたものです。
最初は、IEという知らないものが出てきてとっつきにくい面がありますが、そこを過ぎると大変面白くておもしろくてたまらないものになります。
その理由は、IEにより「仕事を科学する」ことに共感するからだと思います。

この本をお薦めするにあたり、私が特に強調したい点は、
①IEを知らない方でも、この本を読めば、経営改善が出来そうと思って頂ける点と、
②何か「手を打たなければ何も変わらない!!」(本の表紙より)という点
です。 

IEは会社・現場の問題点を拡大して見せてくれる「魔法の虫めがね」です。
私も、会社での改善に生かしてみたいと思います。



                                                  井上三右衛門

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経営の本棚(21) 「マックアース」 一ノ本達己 (カンブリア宮殿)

2016年03月13日 | 経営の本棚

****************************************
 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第280回記事(2016年3月14日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
 経営の本棚(21) 「マックアース」 一ノ本達己 (カンブリア宮殿)
****************************************

今回は、タイトルに「本棚」という言葉が入っていますが、「テレビ番組」からの企業・経営者の紹介です。

紹介するのは、TV東京をキー局として放送されている経済番組の日経スペシャル「カンブリア宮殿」(司会は作家の村上龍さんと女優の小池栄子さん)に2016年2月25日(木)に出演された

 株式会社マックアース 代表取締役CEO 一ノ本達己さん

です。番組のタイトルは

 「斜陽産業にチャンスあり!異色のスキー場再生請負人」

です。このカンブリア宮殿は2006年からの放送ですから今年で約10年、約500社の企業の経営者の方が出演されていますが、

 初めての生粋の「但馬人」・「但馬企業」の登場

です。一ノ本さんの育たれたのは兵庫県の北部の但馬地方にある鉢伏高原スキー場です。私の生まれはその近くにある奥神鍋スキー場です。大変近くのスキー場の出身者ということで、TVの予告編を見たときから放送までの1週間、私は一ノ本さんの番組登場を心待ちにしていました。

◆プロソーグ(出会い)◆
株式会社マックアース。

私がその会社名を聞いたのは、数年前のお盆の前の墓掃除の時だったと確かに記憶しています。神鍋高原でスキーの民宿を営み、スキー指導員の資格を持っていた叔父さんから、「鉢伏高原スキー場で大変業績を伸ばしている会社がある。」とのことでした。長い間、スキー関連産業の栄枯盛衰を見てきて、現在の斜陽産業化したスキー関連産業でそんな会社があるのかとびっくりした記憶があります。

私の2回目のマックアースさんとの出会いは、2015年10月3日の但馬産業フェアの会場でした。展示会のブースで見せていただいた会社案内から、日本全国に散らばった事業所の数にびっくりしました。その数96箇所。また、奥神鍋スキー場(山田区)の周辺にもマックアースさんの事業所が多数できており(神鍋高原カントリークラブ(東河内区、北隣りの区)ブルーリッジホテル(栗栖野区、東隣りの区)、万場スキー場(万場区、南隣りの区))、私の実家は既に包囲されているように思ってしまいました。
会場でその時にいただいた会社案内の一部です。
会社案内表紙    
代表挨拶・企業理念
(一ノ本さんの顔写真も小さいですが載っています)
会社概要・会社沿革
スキーリゾート展開 
(北は北海道から南は四国まで、多くの事業所があります。)

「カンブリア宮殿」でのマックアースさんの紹介は、私にとっての3回目の出会いです。中小企業診断士の資格を持ち、会社経営に関心のある私としては、どのようにして斜陽産業であるスキー関連産業で業績を伸ばしておられるのか知りたいと思っていた中での、願ってもない放送となりました。

◆メインローグ(番組の中身の紹介)◆
株式会社マックアースさんは、スノーリゾート事業や旅館業等を行う会社で、
会社設立は2008年、(ただし、それ以前から旅館業等をされていた)
この8年間で急成長されて売り上げは約160億円になります。

マックアースさんの一ノ本さんの実践されている(スキー場)再生術は2点あり、
 そこにしかない役割を与える
 変化を恐れず新たな景色をつくる
です。
「そこにしかない役割を与える」の事例は、北海道小樽市のスノークルーズオーンズスキー場が挙げられました。近隣に多数有名・有力なスキー場がある中で、フィットネスクラブ的役割を与える事で(具体的にはシーズン券の価格を3分の1にした)、需要を掘り起こされています。
「変化を恐れず新たな景色をつくる」の事例としては、岐阜県郡上市のダイナランドスキー場が挙げられました。スキー場の景色はこの20年間変わっていないとのことですが、夜間のLEDのイルミネーションがなされ、とっても幻想的なスキー場にかわりました。若い人がとっても来やすい雰囲気になっています。

素晴らしいですね。

これらの再生術の原点にあるものはと考えると、番組の冒頭近くに出てきた、次の言葉に集約される思います。

 スキー関連産業はサービス産業である

◆エピローグ(番組を終わって)◆
私が番組を見て感じた点をまとめると、2点に集約されます。それは、スキー関連産業をサービス産業ととらえるなら、サービス産業としての(それは経営では共通のことでもあるのですが)基本に忠実ということです。具体的には、
 1点目が、「ドラッガーの顧客の創造そのもの」、
 2点目が「近江商人の三方よしの世界の実践」 
です。
まず、「ドラッガーの顧客の創造そのもの」ですが、スキー人口が減少して斜陽化したスキー関連産業を嘆いてみても仕方がない。むしろ、どんな需要が掘り起こせたり、新たに創造できるか考えて、そのターゲット市場に向かった企画・宣伝をされています。その点で、基本に大変充実です。
また、「近江商人の三方よしの世界の実践」ですが、自社と顧客(スキー客)とスキー場のある地元の3者が上手くいくようにされています。スキー場が無くなれば、地元は打撃を受け、ますます寂れますから。企業は利益を追求するものですが、むしろより企業経営の基本となる部分をしっかり認識されて経営をされています。

これらの基本に忠実な経営術をどこで身につけられたのだろうと想像していた時、経歴の中に思い当たるものがありました。(私の想像ですが。)
 「経営学部出身」

◆モノローグ(私の独り言)◆(想像して書いている部分があります)
スキー関連産業は斜陽産業ですかと問われれば、「YES」と答えるしかないだろう。
私も、同じ兵庫県の神鍋高原で、約55年間スキー関連産業を見てきたから。
確かにスキーブームは過去のものになっている。
株式会社マックアースの本社のある兵庫県養父市丹戸(鉢伏高原スキー場)は中山間地域ですかと問われれば、「YES」と答えるしかないだろう。
私の生まれた神鍋高原も、同じ中山間地域だから。
むしろ、中山間地域というより、「ド田舎」(大変な田舎)と言う方が正しいだろう。
しかし、ド田舎のスキー関連産業から出発して、株式会社マックアースは約160億円もの売り上げを挙げている。

ド田舎と言われるような土地で生まれた会社が、約160億の売り上げとなるまでには、多くの壁があったと想像される。
たとえば、
 冬の1シーズン営業から、夏を含む多シーズン営業へ、
 家族とアルバイトで運営する家業から、社員を雇う必要のある企業へ、
 経営者の目が届くワンロケーション企業から、目が届きにくいマルチロケーション企業
一ノ本さんは色々な壁を破ってこられたからこそ、今のマックアースがあり、世界をめざすマックアースがあるのだと思う。

顧客の創造 × 三方よし = マックアース

これからの更なるマックアースさんの発展を祈念したい。

                                                   井上三右衛門

PS
長年赤字だった長崎のハウステンボスを見事に再生されたHISの沢田会長の言葉に次のような趣旨の発言があります。

 売り上げを2割アップし、経費を2割下げれば、再生できない案件は無い。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする