晴耕雨読 in 神鍋高原

~ものづくり・工場改善の本の紹介を中心に~

ものづくり・工場改善 人材採用・人材教育 / 遊ぶ鉄工所 山本昌作

2019年10月20日 | ものづくり・工場改善 人材採用・人材教育

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
   
第399回(2019年10月21日(月)配信)・・・・・毎月第1第3月曜日配信予定      
 ものづくり・工場改善 人材採用・人材教育 / 遊ぶ鉄工所 山本昌作
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はじめに
 この本も、金属加工業関係です。しかし、人材採用・人材教育を主題に書かれた本ではありません。
 この本を読むにあたって3つのキーワードがあると思います。①ヒルトップ、②ロングテール戦略、③ヒルトップシステム。まず、それぞれの言葉について、本文からの抜き出して説明をします。
①ヒルトップ:(金属加工業を仕事にしている)自分たちにしか登れない(技術的な)「丘の上」のことで、「余裕を持って、楽しみながら登れる場所」。「高く険しい山頂」ではない。
(25p)
ロングテール戦略:ニッチであまり販売されていない商品を多様に揃えることによって、全体の売上を上げる戦略。(84p)
ヒルトップシステム:HILLTOP社(旧社名山本精工株式会社)で開発された、多品種単品加工向けの24時間加工システム。(96p)本文でヒルトップ式教育カリキュラムについて説明します。
 尚、本の正確なタイトルは「ディズ二・NASAが認めた遊ぶ鉄工所」です。また、タイトルの中で大切なのは「遊ぶ」だと思います。「遊ぶ」の意味は、「楽しく仕事をする」というふうに考えていただけたらと思います。

著者の紹介
 著者の山本昌作先生の講演を約10年前に聴講したことがあります。とにかく、すごいこと(24時間無人加工)をされているとの強い印象を受けた記憶があります。今回、本をお出しになったので読ませていただきました。改めてすごいことをされているなとの印象を深くしました。企業経営の原点になっている、独特の考え方と死生観はご参考になると思います。
 一読をお勧めします。

目次
プロローグ:有頂天の私を襲った大惨事
チャプター1: 脱下請!楽しいことしか仕事にしない「夢工場」
チャプター2:業界初!24時間無人加工にした「ヒルトップシステム」の秘密
チャプター3:社員みずからが動き出す!モチベーションが自動的に上がる方法
チャプター4:初公開!どんな社員でも入社半年で一人前になる育て方
チャプター5:この新卒採用で会社が変わり始めた!

ポイント
 
本の構成を読み解くと、(敢えて書かせていただくと)チャプター1が経営方針、チャプター2はコアコンピタンスとなるヒルトップシステム、チャプター3が能力開発、チャプター4が人材育成、チャプター5が人材採用について書かれていると思われます。
 それぞれのチャプターから人材採用や人材育成等に関係する部分を拾ってみます。
・人材採用
 就活生には本社に来てもらうことで、会社自体を包み隠さず見てもらう。(当然、本社のすごさを見てもらい、他社との違いを見てもらうことになります。)
 社長が長時間に渡りプレゼン就活生に行う。(会社の経営者から会社の考え方や方針を説明し理解してもらう。)
 就活生の対応の中心は入社数年目以内の社員。(就活生の考えや気持ちを理解しやすいですよね。)
 結局、「
オープン」という言葉がわー」キーワードになります。216pにはこんな記述があります。「(3~4時間の面接をして)集中力が途切れてからが勝負。なぜなら、その人の本性や本質は緊張や集中が途切れたときにあらわれるから」
・人材教育
 方針は
アメ8割ムチ2割ということです。アメは褒めること、とにかく褒めることになります。ムチは異動でしょうか。このことは能力開発の項目で書きます。
 そして、一番のポイントは独自の「
ヒルトップ式教育カリキュラム」(177p)になります。入社前はプログラムさえ知らなかった就活生が入社半年でプログラムをつくれるようになるカリキュラムです。特徴は、①職人のノウハウを「歴史」と「理論」と「技術」の3つにわける②「リアル」と「バーチャル」の両方を通じて、ものづくりを学ぶ③「振り返りシート」を使って、PDCAを回すです。①については、昔気質のノウハウは歴史(記録)として知っておくだけでよいので、職人のノウハウの1/3は覚える必要がないそうです。(確かにそう思います。)
・能力開発
 人材教育と能力開発を敢えて別々に私は書いています。人材教育は、入社3年目までの教育で能力開発は入社4年目以降の自分で行う能力の開発と思っていただけたら良いと思います。
 
ジョブローテーション(異動)がムチかと思います。業務に習熟したでは(少し)テングになってきていますが、この時にジョブローテーションを行いテングの鼻をへし折る。
 「
5%理論」というものがあり、社員のモチベーションを維持するためにも、時間の5%だけでもいいから楽しいことをやる。その結果、能力開発(人材育成)と技術蓄積がなされます。(146p)

最後に
 私の勤めている会社の創業者の言葉として、「機械ににできることは機械に任せ、人間はより創造的な仕事をしよう」というものがあります。山本先生の考え方も全く同じですね。
 また、私自身は「ものづくりを、もっともっと、おもしろく」したいと考えて日々工夫をしていますが、その点とも通じるものがあります。
 共感する部分の多い本でした。

 モチベーションが先、生産性は後(140p)

データ
タイトル :ディズニー、NASAが認めた遊ぶ鉄工所
著 者  :山本昌作
出 版 社:ダイヤモンド社
出 版 年:2018年
ページ数 :227p
外観:

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ものづくり・工場改善 会社編⑩ 石匠六代 但馬石材

2019年10月06日 | ものづくり・工場改善 会社編

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
   
第398回(2019年 10月 7日(月)配信)・・・・毎月第1第3月曜日配信予定
 ものづくり・工場改善 会社編⑩ 石匠六代 但馬石材
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はじめに

昨年の9月に父が亡くなり、今年のお盆が初盆でした。
初盆までには墓をつくりたいということで、但馬石材さんにお願いをしました。
今回は、ものづくりの視点から、
 ・墓地がきれいになっていく様子 と、
 ・石材やさんで一番難しいと聞いた墓石への文字の彫り込み を、
ご紹介したいと思います。

但馬石材さんの紹介



但馬石材さんは、写真の看板にあるように、なんと、
墓石専門に200年6代に渡り石匠をされています。
また、出身中学校の日高西中学校の前に石の加工工場があることから、
わりかし身近な感じがしていました。
今回、父のお墓をお願いすることにしました。

墓等に関しては全く経験・知識が無く、いろいろと困りごとも出ましたが、
いろいろと相談に乗ってもらいながら進めました。

墓地をきれいにしました

①荒れ放題の墓地

我が家の墓地は、約140年前に現在の位置に移転してきたようで、
また、その後あまり不幸が無かった為、3基のお墓を追加で作っただけで、
写真のように荒れ放題になっていました。

・お盆の花が飾ってあるせいでしょうか、遠目に見ると悪くはなさそうですが・・・


・近づいてみると、墓地の後ろ側は草ぼうぼうですし、


・右側の墓石の列は、苔が付き、傾いたり、壊れたりしていますし、


・左側の墓石の列では、墓石がつくられずに放置されています。


②まず、後方の石垣をつくり墓地の区域が明確になりました
・墓地の工事が始まると、この蜘蛛のような機械が据え付けられ


・墓石自体が後側と左側にどかされ、(写真は後ろ側にどかされた墓石)


・中央部分はきれいさっぱり何も無くなりました。


・そして、まず後ろ側に石垣がきれいに積まれました。
(え、まず石垣をつくるのですかとびっくりしました。)
左右の石垣とも違和感なくマッチしています。
(とてもきれいに積まれているので、素晴らしいですねと社長さんに言うと、
いつもやっていることですからとのことでした。)


③左右の墓石の列つくり(左側を例に取り上げています)
・土を掘り、墓石が傾かないように、地盤をコンクリートで固め、


・一直線に伸びた縁石が設置され


・墓石のレイアウトを確認して、


・墓石が整然と設置されました


④全体の出来上がり
・出来上がった全体の状態はこんな感じです。


・父の墓もできました。


墓石で一番難しい墓石への文字の彫り込み

技能が・技術が必要なポイント
 墓石に刻まれている戒名の文字は、よくよく見てみると、
 太い部分は深く彫られています。
 (「大」の右下のはねる太い部分は深く彫られています。)
 
 
 かつ、周囲が掘られた島のようになった部分は欠けたり取れてしまわないように
 しないといけません。
 (「姉」の「女」の中央に残った島が取れてしまわないようにしないといけません。)
 
 
この2点が一番技能・技術が必要なポイントだそうです。
(失敗が許されないので、難しそうですね。)

墓石に戒名を刻むには、
①まず戒名を普通はパソコンソフトでプリントアウト
ただ、今回は母が習字の心得があり、自分で書きたいということなので
戒名の文字は人が書きました。
(母は上手に書かれていると褒められ、ご満悦のようでした。)


②戒名を書いた紙を墓石に貼り付け
温めた墓石に厚さ約4mmのゴムシートをまず貼り、
ゴムシートをゴムハンマーでたたいて密着性を高めます。
さらに、その上から戒名を書いた紙を貼り付けます。
紙の周囲を養生テープで剥がれないように貼っておきます。
下の写真の左側が習字で書いた文字です。
右側が墓石に紙を貼り付けたものです。グレーの文字が転写された状態です。


③ゴムシートの文字の部分を彫刻刀で切り、剥がす
写真のような彫刻刀を使い、ゴムシートの文字の部分に切れ込みを入れてゴムを剥がします(カッティング)。

丁寧にきれいに剥がさないと文字がゆがんだり変形するなどの問題が出る可能性があります。 
作業終了後、再度ゴムシートをゴムハンマーでたたき、密着性を向上させ、
後工程のサンドブラスト工程で問題が発生しないようにします。


④文字の部分を機械で荒彫りする
荒彫り機械で文字の部分をざっと荒彫りします。
荒彫り機械は、ドリルのようなものが回転して、石を削るイメージです。
(素人目には既に出来上がっているように見えますが。)


⑤サンドブラスト機械で文字をさらに深く彫る
サンドブラスト機械は、文字の部分にサンド(砂という意味ですが、社長さんによると鉄を使うそうです)
を一方向から吹き付けて(ブラストは風という意味です)、
ゴムシートをとった部分の石を削り彫る機械です。
ゴムシートがマスクの役割をすることで、きれいに文字が深く彫れます。
むかしはこれをいちいち人が手でやっていたのですから大変な手間ですね。
また、出た石の粉を肺に吸い込み病気になられる職人さんが多かったそうです。


以上の工程をまとめると以下のようになります。


⑥必要により、文字に色を付ける
墓石自体が白っぽいので、文字(の彫った部分)は黒色に、
まだ生存している母の戒名の一部分は赤字にします。

⑦ゴムラバーを剥がす
ゴムラバーを剥がして出来上がりです。


良い石匠さんは掘られた文字が「きれい」とのことなのですが、
素人の私にはなかなかその「きれい」の違いが分かりませんが、
但馬石材さんには父の立派なお墓をこしらえて頂きました。
ありがとうございます。

井上 直久

◆但馬石材さん連絡先等
  本社
   所在地:豊岡市日高町十戸滝ノ前
   TEL:0796-44-0777
  工場
   所在地:豊岡市日高町十戸西中学校前
   TEL:0796-44-0227

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