思惟石

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『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』 400ページ一気読み!

2024-01-10 11:44:31 | 日記
『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』
ジュノ・ディアス
訳:都甲幸治/久保尚美

作者はドミニカ出身アメリカ育ち。

この本は、トルヒーヨによる独裁政権下のドミニカ共和国を
描こうとしたのが始まりらしい。
それはそれは難しいテーマから始まっている本なのだ。
(執筆に11年もかかっている!)

が。
メインストーリーは、ドミニカ生まれのオタク青年オスカーの
「モテない」「モテたい」物語。
なんというシンプルな願望!

それがね、もうおもしろい。
400ページ超えの分厚さもものともしない疾走感。
ただただ、オスカーが「モテない」お話しなのに。

まあ、オスカーの話しだけではないんですけど。

ドミニカのトルヒーヨによる30年(長い!)もの
独裁恐怖政治と、独特な国情。
そしてオスカーの姉、オスカーの母、オスカーの祖父へと遡る、
一族の物語が壮大に絡んでくる。
マジックリアリズム〜!
ラテンアメリカ文学〜!!

でも、最終的には、モテないオスカーの、
オスカーによる、オスカーのための、
短く凄まじい人生のお話し。
なんだこれ。
何か凄い人生を読んでしまった、という感じです笑

とことんオタクで、でも現実の女の子にモテたいオスカー。
二次元に恋したらいいのでは?
と安易に思ってしまいましたが
「童貞で死んだドミニカ人の男はいまだかつてひとりもいない」
というアイデンティティを持つお国柄。
そりゃ悩ましいですね。

オタク要素では日本アニメも頻出しますが、
マニアックで全くわからないものも多い。
たまに知っているものが出るとうれしいけど。
(オスカーと姉が『ウォーターシップダウンのうさぎたち
を読んでいたのは地味にうれしかった。私も読んだよ!)

が、ほとんどは「これ、わかる?」と言わんばかりの
マニアックネタだし、もちろん「わからん」ですよ。
というわけで邦訳にはオタク語訳者としてSF評論家の岡和田晃氏が
加わっているそうです。
めっちゃ大量の訳注が、本筋と関係ない熱量で解説されています。
それはそれで、読んでいて楽しい笑

訳者の都甲氏があとがきでも触れていましたが、
原文も英語といいつつ、ドミニカ系のスペイン語やスラングが
多用されているそうです。
オタク要素以前の翻訳難易度が高そう〜。
というわけでスペイン語に堪能な久保尚美氏が共訳者として
参戦したとのこと。
おかげで邦訳版はとてもわかりやすく親切設計になっているらしい。
ありがてえ。
(原文で全てを理解して読める人はいるのだろうか。)

2008年のピュリツァー賞と全米批評家協会賞の二冠。
疾走感という意味では『スローターハウス5』を思い出した。
とはいえ、独特で特異な小説。
めちゃおもしろかったです!
コメント
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