思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『首無の如き祟るもの』2020年の読書メモより

2021-06-18 09:53:28 | 日記
三津田信三『首無の如き祟るもの』
2020年9月に読んでいたものの、
感想をブログで更新するの忘れてたやつ。

以下、当時のメモ。

<刀城言耶(とうじょうげんや)>シリーズの第3長編だそうで。
シリーズの特色としては民俗学とホラーとミステリらしい。

今回は、
奥多摩の山村、媛首(ひめかみ)村の名家
秘守(ひがみ)家を惨劇が襲う。というもの。

この作品も、代々伝わる怨霊や儀式、
その合間に起こる奇怪な殺人。
横溝正史っぽい!!

なかなかおもしろく読めた。

後半の「おや、誰か来たようだ」には笑ったけど。
と思ったら、良い演出でした。

メタネタ的に、単行本の最後に
作中雑誌『書斎の屍体』の目次が掲載されている。
或る登場人物のペンネームが載っている仕掛けなんだけど、
掲載作家に梶龍雄と藤本泉(せん)がいるじゃないですか!
渋いな笑。

超余談ですが、
妙子さんが冒頭で「あと数年で昭和50年」と言っている。
で、2年くらいかけて連載して終章へという設定。
さて、梶龍雄の実質デビューは1977年の乱歩賞(昭和52年)。
藤本泉と同時受賞なので、この二人を並べている以上は
昭和52年以降の特集ではないでしょうか。
ちょうど良い感じですかね。
ちょっと早いか?
なんの考察だ。

ちなみに事件そのものは昭和18年と昭和28年だそうです。

ところで蘭子さんの変化は、
いくら厭人癖がある設定でも不自然ではないかな。
文体も作風も変わるだろうし。
それなりの財産があるなら、なおさら。

あと、登場人物に文才のある人が多過ぎるね笑
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宇佐美まこと『愚者の毒』久しぶりにミステリ読んだ

2021-06-16 11:35:27 | 日記
最近、重量級(物理的)の純文学が続いたので
久しぶりにミステリを読むことにしました。
「次が気になる!」「犯人はお前だ!」
とか言って、サクサク読みたかった笑

というわけで
宇佐美まこと『愚者の毒』

第70回日本推理作家協会賞
〈長編および連作短編集部門〉受賞作(2017)。

1985年基点の過去と、2015年の現在が、
女性の一人称で語られる物語。

一章『武蔵野陰影』
二章『筑豊挽歌』
三章『伊豆溟海』

第一章を読んだときは、
これ『白夜行』だね…と思って、
このままで終わったらつまらないけどどうしよう、
と若干不安になりました。

が、大丈夫!

筑豊、伊豆での転換!
そしてお前がっ!!!
(片方はすぐに分かったけど、もう片方は面白かった)
とても良かった。
いや、暗い話しなんだけどね。
ちゃんと「次はどうなるのっ!?」となって
サクサク読めました。
たまにはこういう読書もいいな。
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『コンスタンティノープルの陥落』楽しんだ!!

2021-06-15 16:31:19 | 日記
さて、予習をしたところで
(前回の地図オンチ表現を図にしてみた。
 アナトリアが右側、バルカンが左側!ほら!)


塩野七生『コンスタンティノープルの陥落』を読了。
はい、おもしろかったです!

小説の体裁なので、人物描写等の脚色はあります。
とはいえ、登場人物(現場証人たち)は
実際の記録が残っている人たち。

ヴェネツィアの船医ニコロは学のある貴族だし
攻防記を残していそうだな(そして実在したのだろうな)
と思いながら読んだけど、
メフメト2世の小姓トルサンや
キリスト教側でありながら属国化により
オスマン側で参戦する羽目になったセルビアの若将軍が
実在し、且つ、手記を残していたとは、びっくり。
様々な視点からの資料が残っている
歴史的事件だったのだな、と、改めて思う。

大砲をつくったウルバンが、
最初はビザンツ側に行って追い払われたので
メフメト2世のところに行った(そして採用された)というのも
歴史って不思議だなあと思う。

で、塩野七生作品としては、
メフメト2世の3代後、
スレイマン1世(10代目スルタン)による
ロードス島攻略を西欧側視点で描いた
『ロードス島攻防記』『レパントの海戦』に続くわけです。

ちなみに私が読んだオスマン側視点の新書は
中公新書『オスマン帝国 繁栄と衰亡の600年史』小笠原弘幸 著

この後は、
『興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和』林佳世子 著
を読む予定である。
西側視点と東側視点を交互に読み、
たまに「コテンラジオ」を交えている日々。
世界史、楽しいな笑
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プロローグ『コンスタンティノープルの陥落』世界史たのしい!

2021-06-14 14:10:41 | 日記
1453年、
ビザンツ帝国(東ローマ帝国)最後の砦
コンスタンティノープル(現イスタンブール)が
オスマン帝国によって陥落します。

これにて紀元前から続く古代ローマ帝国
(395年に東西へ分裂。西ローマ帝国は486年に滅亡済み)は
完全に滅亡しました。

塩野七生『コンスタンティノープルの陥落』は
そのお話しです。

ちなみに
9世紀頃に成立するゲルマン系“神聖ローマ帝国”は
古代ローマ帝国とは別物。諸説あるけど。


さてと。
塩野先生の本を読む前に、脳みそを整理しますよ!
歴史オンチと地理オンチだからね!つらい!!楽しんでるけど!!

まずは
<オスマン界隈の名詞>
なにかと表記揺れする上に
塩野史観が、結構、独自路線な表記なんですよ。
近年、学術界隈では固定されているっぽいですが、
塩野先生の執筆時はそうでもなかったのかもしれません。

以下、ざっくり。

          ー塩野七生作品内ー      ーオスマン帝国視点ー
国名:        トルコ帝国(通称トルコ)    オスマン帝国
6代目スルタン:    ムラード            ムラト2世
7代目スルタン:   マホメット2世        メフメト2世
(※数字はオスマン王家内の即位順)

ぶっちゃけ、メフメトよりはマホメッドの方が耳馴染みあるけど
令和ではメフメトなのです。覚えておこう。

そしてしつこいけど、今回の主題である
”コンスタンティノープル陥落”は1453年!
(どうでもいいけど日本では足利義政が将軍の時代)
それに先立っての

<前史をざっくり>

1300年代:
【進撃のムラト1世(3代目スルタン)時代到来】
アナトリア(地図の右側ね、って、地理が苦手な人間ならでは
の表現で申し訳ない。もちろん地図はぐるぐる回して見るタイプ)
とバルカン(地図の左側ね!)双方に領土拡大、スタート!

1394年:
【コンスタンティノープル包囲】
バヤズィト1世(4代目スルタン)による包囲開始。
ビザンツ帝国大ピンチ!
ところが…

1396年:
閑話休題【ニコポリス十字軍】
塩野先生的には1291年のアッコン陥落にて
十字軍は終わっていますが、
その後の西ヨーロッパから東方への小規模遠征に
「十字軍」の名が冠されることがしばしばあります。
とくにオスマン視点ではよく出るので
『十字軍物語』大好き人間としては
「それは十字軍じゃない!!」と言いたくなる。
今回の十字軍の実態は、西ヨーロッパからビザンツ帝国への援軍。
ドナウ川のほとりニコポリスで回戦、
オスマン圧勝で終了である。

1402年:
【アンカラの戦い】
中央アジア(アナトリア、地図の右側ね!)のティムール(超強い)が
オスマン帝国に遠征。
バヤズィト1世、帝国の西コンスタンティノープルから
慌てて東端に駆けつけたものの総崩れ。
バヤズィト1世はティムールに囚われ、死亡。
ビザンツ帝国、ギリギリ危機一髪!

〜オスマン帝国後継者争いの為、ビザンツ帝国しばし休憩〜

1421年:
【ムラト2世即位】
後継者争い収拾

1428年:
【オスマン帝国、セルビアを属国化】
続いてアルバニアにも、順次支配圏がひろがります。
そろそろヤバい。

1443年:
【ムラト2世退位】
セルビア・ハンガリーと10年間の和平条約を結び、
ムラト2世はご隠居に。
今回の主人公の一人メフメト2世が若干12歳で即位。

1446年:
【と思ったら、ムラト2世復位】
ムラト2世の翻意とも、
大宰相ハリル・パシャの判断とも言われているが、
メフメト2世、いずれにせよ鬱屈をためる。

1451年:
ムラト2世逝去により
【メフメト2世19歳で再即位】
さて、俺はコンスタンティノープル陥落させるよ!
がんばるよ!!!
となります。
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『オーバーストーリー』うーむ

2021-06-14 10:59:16 | 日記
リチャード・パワーズの『オーバーストーリー』
単行本で670ページ。
なかなかの量ですまたもや。

2019年ピュリッツァー賞受賞作。

「オーバーストーリー」は「樹冠」をあらわす英語で、
多数の登場人物の重なりあいも示唆しているらしい。

そのタイトル通り、前半は様々な人物の人生と、
それにまつわる「木」の話しが積み重なり、
中盤から登場人物の人生が交わり始めます。

前半は良い。すごく良い。

一本の栗の木と、そこに住む一族の歴史、最後のひとり。
裏庭の桑の木(マルベリー)とともに育った
中国系の少女は長じて、父親の自死と時の流れを考える。
バースデーツリーとしてカエデの木を植えられた
ちょっと変わった男の子アダムが
心理学にたどり着くまでの幼少時代。
いろんな人生と、大小あるけれど人生に関わる植物(自然)。
おもしろい。

とはいえ中盤以降がいただけない。
登場人物が出会って、
アメリカの環境保護活動につながるのだけど、
ちょっと強引というか、行動や思想が通俗的というか、
共感しにくい。

いや、自然は大事ですよ。
それは否定しようがないのだけど。
その周辺が、なんかね。残念だね。
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