思惟石

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宮内悠介『彼女がエスパーだったころ』

2020-11-13 09:58:12 | 日記
吉川英治文学新人賞受賞作。
作者が<疑似科学シリーズ>と銘打っている、
近未来科学(?)をテーマにした連作短編集。

『盤上の夜』と同様にそれぞれのテーマを取材した
記者(=語り部)がいるんですが、
前作に比べて人格が物語に参加しています。

個人的には、語り部氏がもっとストーリーに参加した方が
おもしろくなると思うんだけど。
中盤は理屈と理論をこねくりまわしている印象があったので、
もうちょい物語やキャラクターが見えてもいいのかな、と。

とはいえ各篇のテーマがおもしろいです。

『百匹目の火神』は火を覚えた猿、
共時性(シンクロニシティ)、
”百匹目の猿”現象。

『彼女がエスパーだったころ』は懐かしいスプーン曲げ。

『ムイシュキンの脳髄』は「オーギトミー」という
怒りを抑制する脳手術。
ロボトミーとの比較やらなんやら。

『水神計画』は”ミーム”と
言葉で水を浄化するというトンデモ理論。

『薄ければ薄いほど』はホスピス問題とその周辺論争。

『佛点』はティッピング・ポイントと信仰。
というか他者に委ねられる可能性?かな。
タイトルが沸点ではなく「佛(ほとけ)」になってる辺りに
そういう意図がありそう。

というか、この短編集全体に、信仰的な気分が漂っています。
科学的なワードや概念をこねくりまわしているのに、
なんとなく「祈り」や「信じる」ことを大切にしてる感じ。

おもしろかったけど、もうちょい軽いトーンでも良かった気がする。

あと、
ぜんぜん関係ないけど、タイトルが
『妻が椎茸だったころ』を思い出しますね。
ぜんぜん関係ないけど。

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