思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『茶の世界史』 『砂糖の世界史』の先生!

2024-05-13 11:01:04 | 日記
『茶の世界史』
角山栄

なんだか見たことあるタイトルですが、
こちらの角山栄先生は、
私が万人にオススメしている『砂糖の世界史』
川北稔先生の先生なのである。

というわけで読む順番が前後してしまいましたが、
この『茶の世界史』(1980年初版)があってからの
『砂糖の世界史』(1996年初版)なのだった。

というわけで「茶」の世界史です。
ヨーロッパ人が「茶」の存在を意識したのは
実は16世紀の大航海時代。

え、そうなの?
遅くない?

シルクロード時代から存在は知っていたものの、
飲もうと思わなかったみたいです。
マルコ・ポーロの『東方見聞録』(13世紀)にも
お茶の話しは出ない。マジか。

16世紀から17世紀にかけては、世界が一気に繋がった時代。
いや、ヨーロッパが強引にやって来ただけか。
とにかく当時のヨーロッパは欲しいものだらけ。
香料、絹、銅、茶が欲しくてたまらないのに、
一方のアジア(主に中国)は
ヨーロッパから欲しいものなんかない。
佐藤先生の「豊かな国は外へ出ない説」を思い出すね。

というわけで物々交換は成立せず。銀貨払いするしかない。
スペインはメキシコ・ペルーから銀を運び、
ポルトガルは日本から銀を輸入したと見られています。
(当時の日本は石見や生野から銀が算出していた)

ちなみに16世紀ヨーロッパ、
まだ食事も手づかみ、グラスも回し飲みの時代。
「最後の晩餐(15世紀)」もよく見るとフォークやスプーンがない(!)。
中国料理に接して、箸や磁器の存在に驚いたそうです。
そもそも料理が美味しいことに驚いたという記録もあるので、
そりゃ香辛料が必要だな、持って帰りな(銀貨払って)、と思う。

そんなこんなで大航海時代にヨーロッパへ
三大舶来物のチョコレート・コーヒー・紅茶がやってきた。

後の紅茶大国イギリスにお茶をもたらしたのは、
チャールズ2世妃、ポルトガル出身のキャサリン(1662年)。
持参金として貴重な砂糖も持ち込んだことで
お茶にはお砂糖という文化も完成。
つまり、エリザベス1世の時代(1600年前後)のイギリスに
紅茶はない、ということ。
ええ〜。朝から飲んでそうだけど、飲んでないの〜。
(エリザベス時代の朝食は肉だったらしい。肉!)

ここらへんから砂糖の需要が増え、
植民地の大規模プランテーション化&奴隷貿易という
『砂糖の世界史』の主題へとつながっていく。

18世紀から19世紀にかけては
中国の(望まぬ)貿易自由化から、茶葉の大量輸出。
4月の新茶の季節には、どの船がイギリスに一番乗りするか
ティ・レースが盛んだったそうです。
江戸時代の初物みたいですね。
イギリスが満を辞してつくった最新型快速船カティ・サーク号は
浸水の6日後にスエズ運河開通により
一度もティ・レースに勝利できなかったと。
どんまい。

そんなこんなで、『砂糖の世界史』同様に
帝国主義的ムーヴも関わってきて悲劇的な面も見える
お茶の世界史ではありますが、
総じて学びになるしおもしろいですよね。
砂糖同様に、小ネタもおもしろかった。
角山先生、川北先生、良い師弟である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする